パナソニックの梅田博和専務執行役員兼CFO
2022年4月から持株会社制に移行するパナソニック。昨年10月からは新たな体制でスタートし、今回2月2日が新セグメントとしての初めての決算となったが、幸先の良いスタートとなったと言っていいかもしれない。2021年度第3四半期累計(4~12月)の連結決算は、売上高が前年同期比11.3%増の5兆4233億円、営業利益が同20.9%増の2741億円、当期純利益が同50.3%増の1956億円だった。(経済ジャーナリスト・山田清志)
オートモーティブは自動車の減産で減収
「第3四半期(10~12月)は、前年の需要増の反動などにより、くらし事業の国内家電やオートモーティブの車載機器が減収となったが、インダストリーの情報通信向け事業やエナジーの車載電池などの販売が増加したことに加え、ブルーヨンダーの新規連結もあって増収となった。しかし、家電や空調などのくらし事業を中心に、原材料高騰が大きく影響したことに加え、ブルーヨンダー買収時の資産・負債の再評価に伴う影響など一時的なマイナス要因もあって減益となった」と梅田博和取締役専務執行役員兼グループCFOは第3四半期を総括した。
セグメントの変更
セグメント別に詳しく見ると、くらし事業は売上高が前年同期に比べて231億円(2%)減の9594億円、営業利益が366億円減の378億円と減収減益だった。洗濯機などの中国家電、北米の食品流通、欧州の空調は堅調だったが、国内で供給課題があった洗濯機や前年の巣ごもり需要の反動を受けた調理機器などに加え、テレビなどの他のセグメント商材の販売減を大きく、全体として減収となった。
オートモーティブは売上高が前年同期に比べて266億円(9%)減の2752億円、営業利益が96億円増の19億円と黒字転換を果たした。ただ、第3四半期累計(4~12月)では、27億円の営業損失で赤字のままだ。「第3四半期は、第2四半期から売り上げが増加したが、前年の自動車生産回復の反動があったことに加え、半導体や部材逼迫などによる自動車減産の影響が継続して減収となった」と梅田CFOは説明する。
コネクトは売上高が前年同期に比べて228億円(11%)増の2226億円、営業損益が122億円減で96億円の赤字に転落した。「実装機やプロジェクターの増販益があったが、部材調達課題によるノートPCの減販損やブルーヨンダー買収時の資産・負債の再評価に伴う一時的な影響があり、減益となった」と梅田CFO。しかし、第3四半期累計では前年同期の146億円の営業赤字から426億円の黒字になっている。
2021年度3Qセグメント別実績
インダストリーは売上高が前年同期に比べて243億円(9%)増の2930億円、営業利益が59億円増の193億円だった。産業用モーター、情報通信インフラや車載用のコンデンサー、EV用リレーなどの販売が好調だったうえ、合理化などにより増収増益となった。
エナジーは売上高が前年同期に比べて284億円(17%)増の1943億円、営業利益が43億円増の1630億円だった。欧州乾電池事業の譲渡影響があったが、EV向け車載電池やデータセンター向け蓄電システムを中心に販売好調で増収増益となった。
2021年度連結業績見通し
和歌山工場でEV向け新型電池の量産へ
梅田CFOによれば、21年度第3四半期は経営環境的にも大きな変化が見られたという。「コロナによる工場ロックダウンの影響は解消傾向だが、原材料高騰、半導体などの部材不足の影響が継続している」と述べ、価格高騰の影響について、当初は年間1000億円規模になると想定していたが、「銅や鉄が高止まりしており、1300億円の影響がありそうだ」と付け加えた。
原材料高騰は主にくらし事業とオートモーティブ事業で影響が顕著で、半導体などの部品不足に関しては、エナジーを除くセグメントで影響が出ているそうだ。そこで、価格改定に取り組んでおり、全体の3分の1程度の価格転嫁ができているとのことだ。
2021年度通期の業績見通しは、売上高が前期比9.0%増の7兆3000億円、営業利益が同43.1%増の3700億円、当期純利益が同45.5%増の2400億円と10月28日に公表した数値を据え置いた。ただ、調整後営業利益は、自動車生産の減少や原材料高騰など、足元の経営環境やブルーヨンダー買収時の会計処理の影響など、一時的なマイナス要因を踏まえ、350億円減少の3650億円に下方修正した。
2021年度セグメント別見通し
セグメント別の通期業績見通しは次の通りだ。くらし事業は売上高が前期比3%増の3兆6400億円、営業利益が130億円減の1270億円。オートモーティブは売上高が6%増の1兆800億円、営業利益が148億円増の30億円。コネクトは売上高が12%増の9200億円、営業利益が710億円増の510億円。インダストリーは売上高が13%増の1兆1100億円、営業利益が333億円増の740億円。エナジーは売上高が28%増の7680億円、営業利益が275億円増の610億円となっている。
また、質疑応答ではテスラ向けに開発している新型電池「4680」についての質問がいくつか飛んだ。それに対して梅田CFOは「すでに性能面を満たした試作品はできている。これから量産に向けた試作ラインを新設するために、和歌山工場(和歌山県紀の川市)の改修を始めている。2022年度の早いタイミングで試作ラインでの検証に入っていく」と話し、強い要請が来ているテスラを第一優先に考えていくそうだ。
長い間、経営の足を引っ張ってきた車載電池だったが、現在は5%を超える収益性を確保できるまでになっており、4680の量産でパナソニックの存在感が再び高まり、収益性もさらに上がって行きそうだ。