梅田博和副社長執行役員
パナソニックホールディングス(HD)が5月10日に発表した2022年度連結決算は、売上高が前期比13.4%増の8兆3789億円、調整後営業利益が同12.1%減の3141億円、営業利益が同19.3%減の2886億円、当期純利益が同4.0%増の2655億円だった。従来予想の純利益は同18%減の2100億円だったが、米国のインフレ抑制法(IRA)関連の税優遇効果により一転して増益となった。今期もIRA関連の補助金があり、純利益は3500億円と5年ぶりに最高益を更新する見通しだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
オートモーティブが大幅な増収増益に
「2022年度実績について、売上高はくらし事業、オートモーティブ、コネクトなどの販売増に加え、為替換算により増収となった。
2022年度連結業績
調整後営業利益はオートモーティブ、コネクトが増益となったが、インダストリー、エナジーの減益幅が大きく、減益となった」とグループCFOである梅田博和副社長執行役員は2022年度を振り返った。
ただ調整後営業利益については、上期が539億円の減益であったのに対し、下期は103億円の増益だった。第4四半期も増益で、売上高、利益、EPS、ROE、EBITDAについても2月2日の公表値を上回る着地になったという。
営業利益の増減要因は次の通りだ。まず売上成長による増販益が402億円、固定費はくらし事業やエナジーにおける成長に向けた投資などにより848億円の増加。
原材料・物流費高騰のマイナス影響が2243億円、これに対して価格改定や合理化等の効果が2246億円と相殺する格好になっている。為替については、インダストリーやエナジーではプラスの影響だったが、くらし事業などでマイナスの影響となり、合計での為替影響はゼロとなった。
2022年度セグメント別業績
それではセグメント別の業績を見てみよう。くらし事業は売上高が前期比10%増の3兆4833億円、調整後営業利益が91億円減の1224億円、営業利益が51億円減の1031億円だった。
国内家電事業における上海ロックダウン影響や下期以降の需要減に伴う減販影響があったが、重点事業の欧州空調、国内・海外電材、北米ショーケースが堅調に推移して増収。しかし、国内家電が価格改定などの効果があったものの、減販影響をカバーしきれずに減益となってしまった。
オートモーティブは売上高が前期比22%増の1兆2975億円、調整後営業利益が118億円増の142億円、営業利益が148億円増の162億円だった。
顧客である自動車生産が回復して増収、半導体などの部材高騰影響や増産対応などの固定費増加があったが、コストダウンや第2四半期からの増販益に加え、下期に部材高騰や為替影響に対する価格改定が進んで増益となった。
コネクトは売上高が前期比22%増の1兆1257億円、調整後営業利益が125億円増の282億円、営業利益が319億円減の209億円だった。PCやスマートフォン投資の減速でプロセスオートメーションの販売減があったが、航空市場の回復でアビオニクスが上向き、海外向け堅牢モバイル端末の伸長や、ブルーヨンダーの連結化・販売成長により増収となった。
インダストリーは売上高が2%増の1兆1499億円、調整後営業利益が234億円減の633億円、営業利益が164億円減の668億円だった。
EVリレーや産業用リレー、環境車用コンデンサーなどの増販があったが、半導体事業譲渡に伴う商流変更による減販や、下期からの市況悪化により減収、さらに原材料の高騰もあり減益となった。
エナジーは売上高が26%増の9718億円、調整後営業利益が312億円減の396億円、営業利益が336億円減の332億円だった。
産業・民生は市況悪化によりICT・民生機器向けリチウムイオン電池、BtoB向けリチウム一次電池を中心に減販したが、車載はEV需要拡大により北米中心に生産・販売が拡大、そのうえ価格改定も寄与して増収。しかし、将来に向けた開発費など固定費増により減益となった。
2023年度連結業績見通し
車載電池はEV需要拡大で好調に推移
2023年度の連結業績見通しは、売上高が前期比1.4%増の8兆5000億円、調整後営業利益が同36.8%増の4300億円、営業利益が同49.0%増の4300億円、当期純利益が同31.8%増の3500億円を見込む。
「インダストリー以外の4セグメントは、おおむね市況の改善を前提としており、いずれも増収増益の見通しである。減収減益の見通しであるインダストリーは、特にICT端末向けの需要が前年を下回る想定で、下期から回復基調に転じると見ている。
また、過去2年、大きな影響を受けていた原材料価格の高騰や半導体・部材不足によるマイナス影響は、今年度におおむね解消すると見ている」と梅田副社長は説明する。
2023年度セグメント別業績見通し
セグメント別の業績見通しについて、くらし事業は売上高が前期比3%増の3兆5800億円、調整後営業利益が376億円増の1600億円、営業利益が479億円増の1510億円を見込む。欧州の空調、国内外の電材事業の伸長に加え、国内家電のマーケティング強化や価格改定、中国家電の需要回復などにより増収増益を計画する。
オートモーティブは売上高が前期比6%増の1兆3700億円、調整後営業利益が38億円増の180億円、営業利益が18億円増の180億円を見込む。
自動車生産の回復や、環境車向けインダストリーセグメント商材の販売増で増収。固定費の増加に加え、車載向け半導体逼迫の継続による部材高騰影響は残るが、増販益やコストダウン、価格改定などで増益を計画する。
コネクトは売上高が前期比1%増の1兆1400億円、調整後営業利益が118億円増の400億円、営業利益が151億円増の360億円を見込む。アビオニクスやブルーヨンダーの伸長により増収。利益ではブルーヨンダーが成長に向けた戦略投資の影響で減益となるが、アビオニクスなどの増販益、調達課題解消に伴う原価改善で増益となる。
インダストリーは売上高が前期比5%減の1兆900億円、調整後営業利益が33億円減の600億円、営業利益が83億円減の585億円とした。リレー、コンデンサーなどの増販益に加え、原材料高騰を合理化や価格改定でカバーするが、為替影響により減収減益を見込む。
エナジーは売上高が前期比5%増の1兆300億円、調整後営業利益が954億円増の1350億円、営業利益が998億円増の1330億円を計画する。車載向けは、EV需要の拡大継続や生産性改善により好調に推移し、産業・民生向けは足元では市況悪化による減販が続くが、第2四半期後半から販売が回復すると見ており、年間では増販となる。
「将来の成長に向けた固定費の増加はあるが、原材料価格と売価反映の期ズレによる影響改善や、車載向け、産業・民生向けともに増産・増販益が寄与し、IRA補助金による業績影響800億円を除いても増益を見込んでいる」と梅田副社長は話す。
いずれにしても、パナソニックHDの2023年度の営業利益率は5.1%で、ソニーグループの10.2%、日立製作所の7.7%と比べて低く、稼ぐ力をどのようにつけていくのかが課題となっている。5月18日に楠見雄規社長がグループ戦略説明会を行うが、そのあたりについて具体的な方針が示されることを期待したい。