梅田博和CFO
パナソニックが7月29日に発表した2021年度第1四半期(4~6月)連結決算は、売上高が前年同期比28.8%増の1兆7924億円、営業利益が37億円から大幅増の1044億円、当期純利益が98億円の赤字から765億円の黒字となった。四半期営業利益が1000億円を超えたのは、リーマンショック直前の2008年度第1四半期以来、13年ぶりだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
前年度の赤字から大幅な増益に
「売上高はオートモーティブやアプライアンスにおけるコロナ影響の回復、インダストリアルソリューションズの伸長によって増収となった。調整後営業利益は、増販益に加え、事業の状況に応じたコストコントロールにより、前年度の赤字から大幅な増益となった。営業利益と純利益は、その他損益における前年度一時益の反動があったが増益だった」と取締役専務執行役員の梅田博和CFOは2021年度第1四半期決算を総括し、一安心といったところだろう。
2021年度1Q連結業績
セグメント別の業績を見ると、アプライアンスは売上高が前年同期に比べ1202億円増の6743億円、営業利益が269億円増の421億円と増収増益。コロナ影響からの回復に加え、ホームアプライアンスや空調の販売が堅調に推移し、拡売費の抑制など、経営体質強化の取り組みにより、原材料高騰影響をカバーできたことが大きかった。懸案のテレビ事業についても黒字化しているそうだ。
ライフソリューションズは売上高が289億円増の3552億円、営業利益が70億円増の126億円だった。「市況の回復を受けて、国内外の配線器具等の販売が好調に推移、原料高騰の影響はあったが、増収増益となった」と梅田CFO。
2021年度1Qセグメント別
コネクティッドソリューションズは売上高が233億円増の2085億円、営業利益は162億円増え、前年同期の160億円の赤字から2億円の黒字となった。ICT端末や5G関連機器の需要増で実装機の販売が好調だったプロセスオートメーションが牽引して増収。営業利益では、増販益に加え、アビオニクスの固定費削減効果もあって増益になった。
インダストリアルソリューションズは、売上高が690億円増の3576億円、営業利益が261億円増の353億円だった。「売上高は車載、工場省人化、情報通信インフラ向けにコンデンサー、産業用モーター、蓄電システムの販売が好調に推移し、半導体事業譲渡の影響をカバーして増収。利益は、増販益に加え、生産性改善等により増益となった」と梅田CFOは説明する。
車載電池は利益刈り取りのフェーズに
そして、中期戦略で収益改善の重点事業として位置づけられているオートモーティブは、売上高が前年同期に比べ1629億円と大幅に増えて3737億円、営業利益も95億円の赤字から98億円の黒字に転換した。「自動車市場の回復により、車載機器はIVI(In Vehicle Infotainment)を中心に伸長。車載電池は需要増加が寄与した。車載機器および車載電池ともに増販による収益貢献が大きかった」と梅田CFO。
2021年度1Qオートモーティブ
車載機器では、一部で半導体逼迫の影響があったが、注力領域であるIVIが伸長したことが増収の大きな要因となった。また、新型コロナウイルスの影響によって一時的な工場停止の反動で固定費が増加したものの、増販による収益貢献が大きかったため増益を達成した。
「車載電池については、北米工場で新たなラインが2021年8月に稼働するメドが立った。すでに増収フェーズにあるとともに、利益の刈り取りができるフェーズに入ってきている。今後、赤字になるといった話はない」と梅田CFOは力強く話す。
また、新型リチウム電池である「4680」については、順調に開発が進んでいるそうで、現在、個別のバーツや機能ごとの設備を導入し、性能のテストを行っている段階とのことだ。オートモーティブはようやく暗いトンネルを抜けたといった感じだ。
2021年度と2019年度対比
想定以上の業績でも通期見通しを据え置き
このように2021年度第1半期は、全てのセグメントで増収増益を達成。梅田CFOも「売上高はコロナ前の2019年度とほぼ同じ水準まで回復。調整後営業利益はさらに大きく改善している。中期戦略において、事業ポートフォリオ改革や経営体質強化の取り組みを着実に進めてきたことが数字として現れた」と手応えを感じている。
ただ、2021年度通期の業績見通しは、売上高が前期比4.5%増の7兆円、営業利益が27.6%増の3300億円、当期純利益が27.2%増の2100億円と、第1四半期終了した時点で3分の1近く達成したにもかかわらず、期初の予想まま据え置いた。
「社内で業績見通し上方修正の議論があったのは事実。しかし日替わりで新型コロナウイルスの状況も変わっている。工場のロックダウンの影響も考えられる。もう少し見てみたいということで据え置いた」と梅田CFO。
また、資材価格の高騰や調達難なども心配しており、「銅をはじめとする原材料高騰による影響は年間で500億円強見込んでいるが、もう少し増やさなくてはならないと見ている。リスクの状況に応じ、コストコントロールを強化していく」(梅田CFO)そうだ。
ようやく明るい兆しが出てきたパナソニックだが、ライバルのソニーははるか先を行っている。「第1四半期の全社業績は、期初想定よりも堅調に推移している。今後の事業環境の不透明要因やリスクに対する対策を進め、年間公表値を上回る水準を目指す」と梅田CFOは引き締めていた。