パナソニックホールディングスは2月2日、2022年度第3四半期累計(4月~12月期)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比14.8%増の6兆2245億円、調整後営業利益は同19.3%減の2318億円、営業利益は同14.6%減の2343億円、純利益は同16.7%減の1628億円と増収、大幅な減益となった。
この業績を受け、調整後営業利益、営業利益、当期純利益の見通しを10月公表値から下方修正した。下方修正をするのは今期2度目となる。(経済ジャーナリスト・山田清志)
赤字だったオートモーティブが黒字転換
「上期に赤字だったオートモーティブやコネクトが、第3四半期(10月~12月期)には販売増と為替の効果により増収となり、大幅な黒字転換を果たした。調整後営業利益は、第3四半期にエナジーの減益幅が大きく、全体としてもわずかに減益となった」とグループCFOである梅田博和副社長執行役員は第3四半期決算のポイントを説明した。
その第3四半期の業績は、売上高が前年同期比14.3%増の2兆1606億円、調整後営業利益が同1.8%減の859億円、営業利益が同15.6%増の844億円、純利益が同30.5%増の556億円だった。
セグメント別の業績は、くらし事業の売上高が前年同期比10%増の9040億円、調整後営業利益が46億円減の311億円だった。家電事業が減販となったものの、成長事業である欧州のA2W(エア・トゥ・ウォーター)や海外電材の販売が増加し、全体では増収となった。
一方、調整後営業利益は原材料高騰などの悪化要因を、成長事業を中心とした増販益や価格改定でカバーしたが、中国における一時費用の影響で減益になってしまった。
オートモーティブは売上高が前年同期比27%増の3463億円、調整後営業利益が100億円増の115億円となった。「顧客の自動車生産が回復したことを受けて増収となった。また、半導体などの部材高騰の影響はあったものの、価格改定やコストダウンなどによって増益になった」と梅田副社長。
コネクトは売上高が前年同期比30%増の2886億円、調整後営業利益が206億円増の140億円。PCやスマートフォン分野での投資減速の影響を受けたプロセスオートメーションが販売減となったが、海外向けの堅牢モバイル端末や、航空市場の回復によるアビオニクスの伸長、ブルーヨンダーの売り上げ増もあり、収益が大きく改善した。
インダストリーは売上高が前年同期比3%増の2906億円、調整後営業利益が22億円減の167億円だった。「中国を中心とするICT端末やFA市場、グローバルにおける環境車を除く車載分野などの市況が低迷したことに加え、半導体事業の終息影響によって、実質減収になった」と梅田副社長は話す。為替の影響を除くと、減収減益だったわけだ。
エナジーは売上高が前年同期比26%増の2474億円、調整後営業利益が187億円減の6億円だった。市況悪化によって、民生向けのリチウムイオン電池やデータセンター向け蓄電システムなどが販売減となったが、車載電池の生産と販売は拡大。価格改定の効果もあって増収となった。一方、利益面については「原材料高騰に加え、産業・民生分野での減販損、将来に向けた開発費の増加により減益だった」と梅田副社長。
車載電池への投資は25年以降も続け160GWh以上に
2022年度の通期業績見通しは、売上高が前期比11.0%増の8兆200億円と10月公表値を据え置いたが、調整後営業利益が400億円減で前期比16.0%減の3000億円、営業利益も400億円減で同21.7%減の2800億円、当期純利益が250億円減で同17.8%減の2100億円を見込む。
「売上高は据え置いたが、為替影響を除く実質ベースでは800億円の減少となり、脚物と事業環境の変化を踏まえて利益を下方修正した。セグメント別では、オートモーティブとコネクトの調整後営業利益を上方修正、くらし事業、インダストリー、エナジーを下方修正した」と梅田副社長は説明する。
くらし事業は売上高が据え置きの3兆4000億円だが、調整後営業利益が10月公表値から100億円減の1250億円。オートモーティブは売上高が据え置きの1兆2900億円、調整後営業利益が10億円増の110億円。コネクトは売上高が120億円増の1兆1100億円、調整後営業利益が50億円増の210億円。
インダストリーは売上高が据え置きの1兆1400億円、調整後営業利益が200億円減の690億円。エナジーは売上高が10億円増の9540億円、調整後営業利益が150億円減の420億円。
特に修正額の大きいインダストリーについて、梅田副社長は「市況の急速な悪化に伴う減販損が大きな要因となっている。調整後営業利益の修正額200億円を3つの領域に分解すると、ノートPCなどのICT端末の分野で110億円、車載の分野で40億円、中国のFA分野で50億円となる」と説明する。
ICT端末では、22年度のノートPCの生産台数見通しが大幅に下振れ、来年度も厳しい状況が続くと想定。車載では、中国のコロナ影響などにより、グローバルの生産台数が想定よりも鈍化し、今後の生産回復はOEMごとに差が出てくると見ている。また、中国のFAでが、半導体分野などでの投資意欲が想定よりも弱く、前年割れの状態が続いているそうだ。
質疑応答では、10月の決算会見と同様に、米カンザス州で車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場に関する質問が相次いだ。投資額は現時点で2022年度から24年度までの3年間で5000億円~6000億円を予定している。
この資金は事業会社のパナソニック エナジーで対応することが基本になるが、事業会社の資金力を超える部分についてはグループで対応するという。ただ、その規模は4000億円以下になる見込みだ。
「カンザスの工場の30GWhを足しても、合計で80GWhであり、将来的にはその倍以上に伸ばすことになる。つまり、カンザス工場の24年度までの投資で終わりではない。25年以降の投資も睨んでいくことになる。
だが、25年度以降の場所などについては、さまざまな可能性を検討している段階であり、決まったものではない」と梅田副社長は話し、まずはカンザス州の2170電池の量産を立ち上げることに集中していくそうだ。