米オンセミのハッサーン・エルコーリー社長兼CEO(最高経営責任者)は11月7日、東京都内で記者会見を開き、日本で自動車OEM各社と直接エンゲージメントを行うケースが拡大していることを明らかにした。電動化への移行が本格化してきたのを踏まえ、デザインオポチュニティは過去1年間で70%増加したという。
エルコーリー氏の日本での記者会見は2020年12月の社長兼CEO就任後、初めて。会見にはマイケル・パウロ・セールス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントなどが同席した。(佃モビリティ総研・松下次男)
エルコーリー社長によると、同社にとってこの1年は「大きく成功した年」と強調。2022年82億米ドルの売上高を達成したのに続き、2023年も堅調に推移。とくに自動車関連の売上高は第3四半期、前年比33%上昇した。
同社は自動車分野とインダストリーに資源を集中させているが、自動車分野では電動化とADAS(先進運転支援システム)の安全性技術の進化が寄与した。
製品分野ではイメージセンサーやSiC(シリコンカーバイド)およびSi(シリコン)のパワー半導体が主力だ。
イメージセンサーは自動車・産業用市場でナンバー1であり、自動車市場では46%(2022年)、ADAS市場で68%(同)のシェア。パワー半導体では世界2位に位置し、シェア9%だ。
こうした中でエルコーリー社長が強調した同社の強みが「持続可能なエコシステムとインテリジェント」の取り組みだ。
具体的には、電動化でいえばエネルギーから車両まで脱炭素化を推進していること。エネルギーインフラでは風力などの再生可能エネルギーによる発電、そしてEV(電気自動車)用充電器、EVへと同社の製品群が生かされている。
インテリジェントでは、単に製品を供給するだけでなく、例えば車載カメラでは最適な映像が得られるようイメージセンサーをコントロールするインテリジェントが重要とした。
このような観点から、製品をティア1の自動車部品メーカーに供給するだけでなく、自動車OEMと直接、長期契約を結ぶケースが増えているという。
独VW(フォルクスワーゲン)グループとは次世代EV向けSiC技術に関する戦略的契約で合意し、独BMWグループの次世代EVにもオンセミのSiC技術が搭載される。
こうした動きは日系の自動車OEMとも拡大しており、エルコーリー社長は世界に比べて遅れが指摘されている日本のEVについてもここへきて「積極的な姿勢がみられる」と期待感を示した。
実際に、日本でのデザインオポチュニティが過去1年間で70%増加していることは「非常に高い数字」と述べ、林孝浩社長をはじめとした日本法人チームの取り組みを称えた。
また、エルコーリー社長は日本事業について競合社も多いが「競争することで技術が進化する。競合社は尊重したい」と述べたうえで、ワンストップの強みを活かすなど差別化を図ることで競争力を高めていく考えを示した。