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2023年6月21日【事業資源】

オンセミ日本、自動車分野は年率19%の成長を見込む

松下次男

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林孝浩社長オンセミ日本法人代表取締役社長兼本社バイスプレジデント(日本地区セールス担当)インタビュー

 

オンセミ日本法人の林孝浩社長は6月下旬、当メディアなどと個別インタビューし、2022―27年の5か年の中期目標で車載用製品の急拡大を目指すと表明した。電気自動車(EV)本格普及の兆しが出てきたのを踏まえ、高効率デバイスのSiC(シリコンカーバイト)パワー半導体などが伸びをけん引すると予想しているためだ。( 佃モビリティ総研・松下次男 )

 

本体の米オンセミ(本社・アリゾナ州スコッツデール)を中心にしたグローバルでみると、自動車分野の売上比率は50%(2023年第1四半期)に達し、すでに市場セグメント別でオートモーティブ領域が最も高い。

 

さらに2022―27年の5か年の中期目標でも自動車分野の成長が最も著しいと予想。売上全体では年率10~12%の成長を予測しているが、オートモーティブ向けは19%の伸びを見込む。

 

このほか、EV用急速充電器などを含むインダストリー向けも10%の成長を予測。一方で、その他の分野はマイナス成長の見通し。

 

林社長は日本法人の事業展望でもほぼ同様の推移になるだろうと言及した。ただ、わが国は自動車産業の比率が高いことからオートモーティブ向けの比重がグローバルより大きくなるとの判断も示す。

 

自動車向けが急成長すると予想する背景が電動化の進展だ。EV市場が普及期に入る兆しが出てきたことで、EVに不可欠なコンパクトで高効率の電子デバイスのSiCの採用が急速に進むと判断。オンセミの特色を生かし、シェア拡大を目指す。

 

実際、オンセミはSiCを素材から最終製品まで一貫生産しており、多様なニーズに応えられるという。

あわせて、自動車分野ではカメラ用のイメージセンサーも有望製品。同社は自動車用イメージセンサーでは世界トップであり、ADAS(先進運転支援システム)用では68%(2022年)のシェアを持つ。

 

同分野も今後、ADAS・自動運転の進化に合わせて採用が広がるとみている。

林孝浩オンセミ日本法人代表取締役社長兼本社バイスプレジデント(日本地区セールス担当)の発言要旨は次のとおり。

 

――日本法人社長に就任して1年になりますが。

 

「オンセミはインテリジェントパワー、インテリジェントセンシングというサステナブル・エコシステムのテクノロジーを使い、ユーザーが必要としている課題解決に貢献し、社会課題に応えるという取り組みに変わりはありません。トピックでは、今年3月に本社が移転し、モダンなオフィスとなりました」

 

――事業活動はどのように推移しているのでしょうか。

 

「事業規模でいえば、2022年は83億ドルの売上げを達成しました。前年実績に比べ約24%の伸びです。従業員の44%が女性で、マイノリティの社員を採用するなど多様化にも力を入れています。

 

2023年第1四半期(1~3月)も19億6千万ドルの売上げとなり、前年同期比38%の伸びとなりました。とくに自動車分野が好調で、全体の売上の50%をオートモーティブが占めています。次に、インダストリー向けが29%を占め、この2つのセグメントで79%占めています」

 

――自動車分野ではどのような製品が伸びているのでしょう。

 

「EVや環境関連製品向けですね。我々は大きな流れとして6つのセグメント領域にフォーカスしていくことを考えております。自動車領域ではEV、ADAS、それから5Gクラウドパワーのインフラフレーム、インダストリーでいえばEV用充電器、ファクトリーオートメーション、エネルギー関連のインフラ領域などです」

 

――これらが成長領域ということでしょうか。

 

「2022年から2027年の5年間でいいますと、非常に大きな伸びを期待しています。例えば、EVでいいますと、我々の強みであるパワー半導体のほか、EV社会を実現するためにチャージング、エネルギーインフラなども不可欠で、エコシステムの観点からEVの領域にフォーカスしたいと考えております」

 

――特にパワー半導体が成長の柱に。

 

「パワーSiC、Si(シリコン)の現状でいいますと、我々のグローバルのポジションはナンバー2であり、マーケットシェアは9%を占めています。これらの領域はこれまでパソコンやスマートフォン、それにデーターセンター向けなどを契機に急速に発展してきましたが、これからは我々が狙っているエリアが拡大し、これからの5年間で年率38%の伸びを見込んでいます。EVや周辺分野の急速充電器、インフラ向けなどです」

 

――EVでは、どのような部分にSiCが使われるのでしょうか。

 

「EVを見ますと、航続距離を伸ばすことが課題となっており、航続距離を伸ばすためには効率を高めなければなりません。そこで効率を高めるのにSiCが有効となります。

 

SiCを使えば、スイッチングのスピードを速められ、製品を小型化し、信頼性も高くなります。この結果、EVシステムの最適化が可能になるほか、ADAS分野にも有効です。我々の製品は競合製品と比べて30%以上、効率性などが優れていると判断しています」

 

――EVの動きをみますと、eアクスルなどのように多くの部品を一つにパッケージングする取り組みが進んでいます。このため単に製品を供給するだけでなく、設計段階から他企業との協業、連携も求められるのでは。

 

「確かに、EVになりますと、これまでエンジンで差別化できていたものができなくなる可能性があります。そのため、差別化要素として様々な取り組みが行われることになるでしょう。この中で、我々は供給面で長期契約を結ぶとともに、OEMのほか、ティア1企業、ティア2企業とも接点をもっています」

 

――車載カメラ用のイメージセンサーについての取り組みは。

 

「我々にとって事業の両輪となるイメージセンサー領域をみますと、オートモーティブ及びインダストリー分野ではナンバーワンのシェアです。オート分野では46%(2022年)のシェアで、ADAS用のカメラに限ればさらに68%の高いシェアを確保しています。

 

なぜ、これだけ高い実績を残しているかと言えば、45年間積み重ね来た実績と時代時代で常に最先端のテクノロジーを開発してきたからです。代表的なテクノロジーでいえば、ダイナミックレンジに我々は注力しており、人が見えない暗いところでもカメラで捉えられるような技術です。サイバーセキュリティの技術も同様ですが、近い将来の自動運転技術では重要な要素となります」

 

――日本事業の規模はどのような比率になっているのでしょうか。

 

「2023年第1四半期でみると、地域別の売上比率はアジアが51%、ヨーロッパ21%、北米20%、日本8%です。アジアが売上の半分を超えていますが、これはあくまでも出荷ベースの比率です。

 

例えば、日本で成約しても、アジアの工場で生産し、日本企業の海外拠点含む、現地で供給するものはアジアに含まれます。そういう意味で、商談ベースを含めた日本事業の比率はもう少し大きくなるでしょう」

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。