日産自動車と本田技研工業は3月15日、自動車の電動化・知能化に向け、戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結した。( 坂上 賢治 )
両社によると、カーボンニュートラルおよび交通事故ゼロ社会に向けた取り組みをさらに加速するためには、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域に関する強化が不可欠となる。
そこで両社の強みを持ち合い、将来的な協業を見据えた検討が必要と考え、今回の合意に至ったとしている。
より具体的には、自動車車載ソフトウェアプラットフォーム、バッテリーEVに関するコアコンポーネント、商品の相互補完など、幅広いスコープで検討を進めていくとしているが、現段階では、まだどのような協業関係に落ち着くか、どのような技術で連携を図っていくかは、まだ何も決まっていないと、都内で開かれた緊急記者会見に登壇した両社長は述べている。
考えられる可能性は先の通り、EV事業に於けるキーコンポーネンツなどが想定できるが、双方企業に於いて既に部分的に成功の果実を共有するアライアンス相手もおり、この分野に関して、どのような形で落ち着いていくかは不透明だ。
更にトヨタ連合と対抗する国内第2極の形勢を示す見方もあるが、仮に23年度のEV販売台数で日産13万8,500台(前年比5.3%減)、ホンダ1万9,115台(前年比14.1%減)と、世界規模の1196万2,000台をキャッチアップするには、まだ時間が掛かる。従って、ここのところ国際市場で上向きつつあるHV戦略も包括して、両社でどれだけのスケールメリットが見込めるかに掛かっている。
他の見方として直近の事業状況を踏まえると、個々技術について日産が目下取り組んでいる高効率内燃エンジン技術などは、eパワーなどのハイブリット車両に係るメリットがありそうだ。対してホンダ・日立合弁の日立アステモが持つカメラ技術を主体とする自動運転システムにも魅力がある。
また最近、動きが慌ただしい電動軽自動車分野で日産は勿論、いずれは双方企業の収益の柱に育っていくあろうことから、思い切った連携の可能性もなくはないかも知れない。但し双方共に現段階では、資本提携までは考えていないとしている。
いずれにしても自動車産業は、もはやこれまでの車両の売り切りだけの事業に立ち戻れる訳はなく、性急なライバル勢力の成長を踏まえると検討の時間は限られている。実際のパートナーシップが前向きになった場合は、この1年を待たすに何らかの進展が浮上してくるものと見られる。
なお両社が今パートナーシップの検討段階に入ったことについて日産自動車株式会社 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 内田 誠氏は、「今後加速するモビリティへの変革に対し、中長期的な視点で備えをしていくことが重要であり、今回、両社が共通の課題意識のもと、合意に至ったことは大変意義深いものだと考えています。加えて今後の競争を勝ち抜く上で、これまでの業界の常識や手法に縛られていては到底太刀打ちすることはできません。今後、両社で論議を重ね、持続的成長に向けて、WIN-WINとなる価値ある結論が見いだせることを期待しています」と語っている。
また本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部 敏宏氏は、「100年に一度と言われる自動車業界の変革期において、両社がこれまで培ってきた技術や知見の相乗効果により、業界のトップランナーとして自動車の新たな価値創造をリードする存在となり得るかの観点で、両社のパートナーシップの可能性を検討していきます」とのコメントを公式に残している。