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2023年4月28日【企業・経営】

村田製作所、スマホ市場の回復緩やかで2期連続の減益見通し

山田清志

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オンライン決算会見の様子

 

 

村田製作所は4月28日、2022年度の連結決算を発表した。売上高は前期比6.9%減の1兆6867億円、営業利益が同29.8%減の2978億円、当期純利益が同19.2%減の2536億円だった。6期ぶりの減収、5期ぶりの減益で、2023年度についても厳しい見通しだ。米国会計基準から国際財務報告基準(IFRS)に変更するため、単純には比較できないが、当期純利益が3割程度減益となる見込みだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

モビリティ向け売上高は2ケタ成長

 

「エレクトロニクス市場の部品需要は、前連結会計年度比で自動車生産台数の増加もあってモビリティ向けは増加したが、スマートフォンやPCの市場低迷と在庫調整の長期化により全体として減少した」と村田恒夫会長は2022年度を振り返った。

 

2022年度業績

 

売上高は為替変動の影響もあって樹脂多層基板がスマートフォン向けで増加したほか、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加したが、積層セラミックコンデンサーがコンピュータやスマートフォン向けで減少し、また表面波フィルターや高周波もシュールもスマートフォン向けで減少。その結果、前期に比べて減収となった。

 

営業利益についても、円安やコストダウンなどの増益要因があったものの、操業度の低下や固定費の増加により前期に比べて大幅な減益となった。その増減益要因を見ると、合理化効果で410億円の増益、操業度損で2150億円の減益、売価値下げで210億円の減益、為替変動で1160億円の増益、そのほか減価償却費の増加57億円、固定費の増加170億円、品種構成差など245億円とそれぞれ減益だった。

 

用途別の売上高については、通信用途が前期比1200億円減(15.4%減)の6592億円だった。スマートフォン向けで樹脂多層基板が増加したが、高周波モジュールやコネクティビティモジュール、表面波フィルター、積層セラミックコンデンサーが減少したことが響いた。

 

2022年度用途別売上高

 

モビリティ用途の売上高は、円安による増収効果や自動車生産台数の回復もあり、積層セラミックコンデンサーやEMI除去フィルターの売り上げが増加し、前期に比べて539億円増(16.0%増)の3901億円となった。

 

家電用途の売上高は、パワーツール向けでリチウムイオン二次電池が増加し、前期に比べ146億円増(8.0%増)の1978億円。産業・その他用途の売上高は15億円減(0.7%減)の2148億円だった。

 

足元の在庫が過去最高水準に

 

2023年度の業績見通しについては、「世界の経済情勢は、欧米の金融市場の混乱や物価高に加えて、ウクライナ情勢や米中対立といった地政学リスクへの警戒から、先進国を中心に経済成長の鈍化が懸念される。また、各国中央銀行の金融政策の変更による為替相場の不安定な動きが予想されるなど、経済の先行きは不透明な状況にある」と村田会長は前置きし、次のように述べた。

 

2023年度業績予想

 

「売上高は、コンデンサがモビリティ向けで増加するものの、コネクティビティモジュールが事業ポートフォリオ見直しにより大きく減少、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで減少することを見込んでいる。その結果、為替変動の影響もあり減収、利益については、コストダウンなどの増益要因に対し、製品価格の値下がり円高の進行といった減益要因があり、減益を計画している」

 

2023年度の売上高は1兆6400億円、営業利益は2200億円、当期純利益は1640億円で、22年度の米国会計基準の実績と単純比較して、それぞれ2.8%減、26.1%減、35.4%減となる。また、23年度の部品需要を、スマートフォン向けが22年度比3%増の11.1億台、PC向けが同10%減の3.8億台、自動車向けが同5%増の8600万台、うち電動車両向けが同1.3倍の3200万台と予想する。

 

スマホに関して、村田会長は「買い換えサイクルが伸びてきている。スマホの販売台数が伸びるには、5Gの利便性を感じるアプリが増えてくる必要がある」と指摘。一方、自動車については、今後も電気自動車やADAS市場が拡大して電子部品の需要は堅調に推移すると見ており、「年間1割の生産能力を増やす設備投資は継続する」とした。

 

2023年度用途別売上予想

 

足元の工場稼働率は80%程度で、夏ごろでも85%程度に留まる見通しだという。足元の在庫も過去最高水準の5750億円までに積み上がっていて、減産により400億円程度の削減を計画している。ただ、村田会長は「中長期的には電子部品領域は着実に拡大する」と強調していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。