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2023年10月31日【企業・経営】

三菱電機、空調・家電の需要が堅調で営業利益が68%増

山田清志

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三菱電機が10月31日に発表した2023年度上期(4~9月期)の連結決算は、売上高が前年同期比8.5%増の2兆5384億円、営業利益が同68.7%増の1358億円、純利益が同60.7%増の1202億円だった。特にビルシステムや空調・家電のライフ部門が好調で、牽引役となった。通期業績予想は前回公表値から変更はないが、売上高、利益とも過去最高を見込む。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

インフラ部門は増収も営業赤字

 

「2023年度上期は空調・家電や自動車機器の需要が堅調に推移し、売上高は前年同期比で1989億円増えて、上期としては過去最高値となった。営業利益については、売り上げ増や各事業の価格転嫁の効果で前年同期比553億円増加した。自動車機器事業は、第2四半期3カ月の営業利益が黒字に転換した」と増田邦昭常務執行役CFOは決算のポイントについて述べた。

 

増田邦昭常務執行役CFO

 

営業利益の変動内訳は、為替影響がプラス190億円、価格転嫁がプラス510億円、規模変動などがマイナス37億円、開発費・償却などがマイナス110億円だった。また、営業利益段階のセグメント別増減は、インフラ部門64億円増、インダストリー部門プラス59億円増、ライフ部門445億円増、ビジネス・プラットフォーム部門前年同期並み、セミコンダクター・デバイス部門16億円増、その他14億円減となっている。

 

それではセグメント別の業績を詳しく見てみよう。インフラ部門は売上高が前年同期比6%(242億円)増の4262億円、営業損益が64億円改善し、89億円の赤字だった。そのうち、社会システム事業は国内外の交通分野における需要回復の動きが継続し、国内外の公共分野における投資も堅調に推移したほか、円安の影響などで、売上高が187億円増の1714億円、営業損益は19億円改善して60億円の赤字だった。

 

2023年度上期業績

 

電力システムは国内電力会社の設備投資の動きが継続し、再生可能エネルギーの拡大に伴う電力安定化の需要などが国内で堅調に推移、さらに円安も加わって、売上高が73億円増の1532億円、営業利益が26億円減の16億円。防衛・宇宙システムは、受注高が防衛システム事業の大口案件の増加により前年同期を上回ったが、売上高は防衛システム事業の大口案件の減少により前年同期比18億円減の1015億円、営業損益は71億円改善して45億円の赤字だった。

 

自動車機器事業は24年4月に分社化

 

インダストリー・モビリティ部門は売上高が前年同期比6%(488億円)増の8437億円、営業利益が59億円増の498億円となった。そのうち、FAシステム事業はリチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野の需要が継続したものの、半導体などのデジタル関連分野を中心に国内外で需要が減少。その結果、売上高は96億円減の3963億円、営業利益は99億円減の523億円となった。

 

自動車機器事業は一部半導体部品の需給の改善などにより新車販売台数が前年を上回り、電動車を中心とした市場の拡大に伴う電動化関連製品などの需要が堅調に推移。このような状況からモーター・インバーターなどの電動化関連製品や自動車用電装品、ADAS関連機器の増加に加え、円安の影響や価格転嫁などの効果により、売上高が584億円増の4474億円、営業損益は158億円改善の24億円の赤字だった。

 

2023年度部門別上期業績

 

この自動車機器事業は同日、2024年4月1日付で分社化されることが発表された。分社化の狙いについて、三菱電機では「自動車機器事業においては収益改善が課題であり、またCASEをはじめとして、産業構造が急速に転換するなか、意思決定プロセスを簡素化し、よりスピーディな事業運営を行うため、自動車機器事業を分社化することにした。これにより、一段の事業運営の効率化と事業ポートフォリオの再構築を図っていく」と説明している。

 

三菱電機では現在、収益性、資産効率の向上を図るべく、経営戦略として掲げる事業ポートフォリオ戦略と経営の体質改善を推進している。今回の自動車機器事業の分社化はその一環だ。「自動車機器事業の改革はおおむね予定通りに進んでいる。電動化やADASについては、パートナーとの話し合いを進めている段階だ」と増田常務執行役CFOは話し、「どういう形で提携するかは可能性を狭めずに検討していきたい」と付け加えた。

 

各事業の価格転嫁の効果刈り取りを着実に推進

 

ライフ部門は売上高が前年同期比11%(1070億円)増の1兆471億円、営業利益が445億円増の785億円となった。そのうち、ビルシステム事業は円安の影響や中国を除くアジア、欧州、国内の増加などにより、売上高が189億円増の2964億円、営業利益が52億円増の146億円。空調・家電事業は世界的な脱炭素化の動きを受けて空調機器の需要が国内外で堅調に推移、円安や価格転嫁の効果もあって、売上高が880億円増の7507億円、営業利益が392億円増の639億円だった。

 

2023年度通期業績見通し

 

ビジネス・プラットフォーム部門は売上高が前年同期比5%(34億円)増の658億円、営業利益は1億円増の39億円となった。レガシーシステムの更新や、デジタルトランスフォーメーション導入関連の需要が堅調に推移し、受注高、売上高とも前年同期を上回った。

 

セミコンダクター・デバイス部門は売上高が前年同期比4%(61億円)増の1444億円、営業利益が16億円増の164億円となった。電鉄・電力向けのパワー半導体需要が増加したことと円安の影響が増収増益に寄与した。

 

2023年度の通期業績見通しは、7月公表値から変更なしで、売上高が前期比3.9%増の5兆2000億円、営業利益が同25.8%増の3300億円、当期純利益が同21.5%増の2600億円を見込む。増田常務執行役CFOは「各事業の価格転嫁の効果刈り取りを着実に推進し、売上高、利益とも過去最高値を達成したい」と強調していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。