実用化に向けて8月からベトナム工場の量産ラインで評価を開始
三谷産業グループは8月26日、樹脂・エレクトロニクス事業で車載向け樹脂成形品・製造工程の効率化と品質向上を目指し、AIを活用した自動外観検査機を開発した。
上記の三谷産業は、石川県金沢市で創業して96年、ベトナムで創業して30年の複合商社。北陸、首都圏、ベトナムを拠点に、化学品/情報システム/樹脂・エレクトロニクス/空調設備工事/住宅設備機器/エネルギーの6セグメントで事業を展開中だ。2024年3月期:連結売上高は95,857百万円/連結従業員数は3,569名となっている。
現段階では、高品質な製品を安定して提供するべく徹底した品質管理を実施。具体的には、広島のM&E事業部の技術部と品質保証部をマザー機能として、ベトナムの量産子会社2社と連携。“良品しかつくれない製造工程”を目指して生産体制を構築している。
EV転換や自動運転技術の進展で車両品質への期待は益々高度化
そんな同社が、自動外観検査機を開発した背景には、上記の通り、同社の自動車用樹脂・エレクトロニクス事業が、日本とベトナムの双方を拠点に製造・販売を行っていることがある。加えて近年、自動車産業は電気自動車への転換や自動運転技術の進展など、急速な技術革新を遂げ、それに伴い、自動車の安全性や品質に対する期待は日を追うごとに高まっている。
これらを受けて同社グループでは、高いレベルでの品質保証を推進すると共に、AIやロボティクスなどの最新技術を活用した生産プロセスの構築と技術開発に取り組んだ。またそもそも製造拠点のあるベトナムでは、近年、人件費の上昇への対応が課題となっているためAIや自動化による効率化が急務だ。
特に、製品の欠陥を人の目で確認して良否判定を行う「目視検査」はコストや手間が掛かるため製造コスト増の要因となっていた。このような背景から、ベトナムの製造拠点での目視検査を行うゆえの工数削減と、高精度な品質管理を同時に実現することを目的にAI技術を活用した自動外観検査機の開発に着手した。
新たに開発したAIを用いた自動外観検査機の特長は以下の通り
▶良品学習が可能な外観検査AIを組み込み、良品データ学習による不良品検出を実現
▶高精度カメラやタッチパネルユニットを組み合わせた独自の設計
▶検査の省力化を可能にし、生産性の向上とコスト削減を図る
同社が開発した自動外観検査システムは、画像解析AIを活用して製品の欠陥を検知し、良品・不良品を自動で判定する。
作業者が製品を検査機にセットしボタンを押すと検査がスタート。AIが複数の角度から撮像した画像を学習結果と比較し、汚れや傷、バリ、欠けなどの欠陥を高精度で検知し、良品・不良品を判定。検査結果はタッチパネルディスプレイで確認することができる。
この検査機は、良品学習が可能な外観検査AIを組み込み、製品を撮像する高解像度カメラや設定用のタッチパネルディスプレイ、スイッチユニット等を組み合わせて独自で設計・構築した。サイズは高さ約3m、幅1.2m、奥行き1.45m。キャスター付きのため、工場内のどこにでも移動・設置できる柔軟な運用が可能。
検査機の設計、組み立て、AIの学習やシミュレーションは三谷産業の広島事業所にて実施し、今年5月にベトナムの製造工場へ移設して検証を行い、8月から量産ラインで評価を開始した。あせてAIの組み込みに関しては自社の情報システム事業部のノウハウも活用、自らの複合力を活かして開発を進めたという。
検査工程の評価・検証イメージ
期待される効果
この自動外観検査機を導入し、当該製品に量産適用すれば、現行の目視検査の工数を削減でき、検査工程の省人化による生産性の向上が期待できます。現在、ベトナムの製造工場にて実施している現行の目視検査では、熟練の検査員が1部品あたり110秒かけて検査していますが、自動外観検査機を適用すれば検査員の工数は1部品あたり37秒になり、約66%※の工数削減を見込むことができます。
今後の展開
現在、取引先の自動車部品メーカー等と量産適用の評価を行っており、正式稼働に向けて準備を進め、今後は2026年を目処にベトナムの全量産工場に適用を完了させる計画。
また将来的には、検査機に蓄積された判定結果のデータを活用し、量産工場で得られる製造データと紐づけることで、欠陥の発生原因を特定し、製造プロセス全体の改善につなげる活動にも取り組んでいく構えだ。
社名 :三谷産業株式会社 MITANI SANGYO Co., Ltd.
創業 :1928年(昭和3年)2月11日
設立 :1949年(昭和24年)8月11日
資本金 :48億8百万円
上場証券取引所 :東証スタンダード・名証プレミア(証券コード 8285)
代表者 :代表取締役社長 三谷 忠照
連結売上高 :95,857百万円(2024年3月期)
従業員数 :(連結) 3,569名 / (単体) 591名(2024年3月末時点)
主な事業内容 :情報システム関連、樹脂・エレクトロニクス関連、化学品関連、空調設備工事関連、住宅設備機器関連およびエネルギー関連事業