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2024年2月16日【事業資源】

マツダ、東京・六本木に新事業拠点 創設の背景を一問一答で

松下次男

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マツダ、東京・六本木に「マツダイノベーションスペース東京」を開設

 

マツダは2月16日、東京・六本木に新たに「マツダイノベーションスペース東京」を開設し、報道陣にその施設を公開した。新拠点は、次世代モビリティ社会をにらんでIT(情報技術)人材の採用やスターアップとの交流など、自動車に捉われない事業領域に生かす。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

そんなマツダは関東地区に、東京本社やマツダR&D横浜などの拠点を構えるが、今回あえて六本木に拠点を開設するのは「新たな価値創造に挑戦する、自動車産業の枠を超えた仲間づくりの場」として活用する狙いがあるという。

 

というのは自動車産業が100年に一度という大変革期に差しかかる中、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)やCASE技術など、従来の延長線のみでは対応できない領域が拡大するからだ。

 

このためIT・DX(デジタルトランスフォーメーション)やMaaS領域などの専門人材、電動化をにらんだ新たなビジネスパートナーとの交流が求められおり、「ひと、共創、未来の仲間づくり」に東京・六本木の新拠点を活用する。

 

施設公開にあわせて記者会見した滝村典之執行役員(コミュニケーション・広報・渉外・サステナビリティ・東京首都圏担当)は新拠点についてマツダの「2030ビジョン実現のための仲間づくりの場として重要な役割を担う」と述べる共に、イメージとしてトヨタ自動車のウーブンシティやホンダ・ソニーのEV(電気自動車)事業協業などの取り組みを掲げた。

 

マツダ初の量産EV「MX―30」主査などの経歴を持つ竹内都美子執行役員(グローバル人事・安全・病院担当、人事本部長)は、車両開発中に経験した事例を取り上げ、異業種人材との交流で「予期せぬ気づき」があり、実際にクルマづくりに有効活用できたなど仲間づくりの重要性を訴えた。滝村氏、竹内氏、両執行役員の発言、記者との質疑応答は次のとおり。

 

 

MaaS事業本部や人事本部などから募った20人の陣容でスタート

 

――マツダイノベーションスペース東京はいつ、どのような陣容でスタートするのでしょうか。

 

「開設日は本日2024年2月16日から。開設当初はMaaS事業本部、e―マツダ、MDI&IT本部、人事本部から約20人が入る予定です。はじめはもっと少ない人員を考えていましたが、進行するうちに、規模が膨らみました。

 

実際、スタートすればさらに陣容が膨らむと予想しています。この拠点のキャパシティは80人です。また、パートナー企業との動き出しはこちらからテーマを出し、興味、賛同いただける人々に集まってもらい、取り組んでいきたいと考えております。そうした中で、予期していなかった成果が出る場合もあるでしょう。そのような広がりを期待したい」

 

――当面の活動スケジュールについては。

 

「まずは今申し上げた4つの部門が活動を加速させます。加えて、初年度はできるだけ多くの企業との交流や学生のキャリア採用の希望者に利用していただく予定です。初年度はトライアルの期間と考えており、次年度以降本格化させる計画です」

 

――どのような活動内容になるのでしょうか。

 

「どう活用するかについては、当社の社員とパートナー企業が一緒に考えていきますが、例えば、一つ具体的な課題、テーマに沿って合宿のようなかたちで意見を集約する、ワークショップのような形で一緒にセッションするようなケースも考えられるでしょう。

 

また、業種を超えて、複数の企業、従業員と一つのテーマについてパネルディスカッションのような議論を行うことも可能かと思います」
「業種に関しては、自動車業界にみならず様々な職種、IT系をはじめ社会問題に取り組んでいるスタートアップなどとも一人ひとりのつながり、絆を大切にして仲間づくりを進めていたいと考えています」

 

 

次世代のモビリティ社会に対応し、自動車の枠を超えた仲間づくりに活用

 

――人材採用についての取り組みは。

 

「キャリア採用版のインターンシップのようなイメージでしょうか。特定の課題についてマツダの社員と一緒に考え、マツダで働きたいという共創が生まれることを期待しています」

 

――当面のイベントが計画あれば、お聞かせください。

 

「2月下旬から、経営陣、社員を対象に組織風土の改革プログラムに活用します。インターンシップについては、どの部門が今年度、取り組むかを見極め、その部門とテーマに沿って学生にお声がけしたいと考えています」

 

――竹内さんはマツダで女性初の主査の経歴を持つなど社内でイノベーションを起こされてきました。新拠点にどのようなことを期待されるのでしょうか。

 

「課題、テーマを頭で考えることにはこれまでも実行してきましたが、チームや仲間で取り組むプロジェクトでいえばどう感情に働きかけ、動かすということが何よりも大事になると思っています。

 

そのためにも今の職場を飛び出し、きれいだとか、リラックスできるといった人間の持つ感情を動かし、お互いを知ることにより新たな価値が生まれると考えます。そうした感情を動かすことにこの場を活用できたらと期待しています」

 

 

IT人材の採用やスタートアップとの交流に生かし、スタッフ増も検討

 

――IT人材の採用でいえば、東京は母数も多いですが、競争も激しいです。また、IT分野でいえば、グローバルに人材が広がっています。

 

「本社のある広島は(採用)競争の観点からは確かに低いでしょう。実際、広島でもこのような活動に取り組んでおり、これまでにも食品業界などの異業種ともコラボレーションしてきました。

 

半面で、広島の企業というのは入社していただくのに一つにハードルがあります。競争は激しくとも東京・首都圏に拠点を構えて、一緒に価値を創造し、共同で作業を進めるという点で、ここに拠点を設けるのはメリットがあります。

 

また、外国人ということにも垣根はありません。むしろ先進的なIT人材は海外で活躍されている方の方が圧倒的に多いでしょう。そこで我々としては、ここで成果を出し、アウトプットムーブメントを起こすことで、海外の人々にマツダで一緒に取り組めば面白そうと発信できればと考えております」

 

――パートナー企業やスターアップとの共創の成果としてKPI(重要業績評価指標)を考えているのでしょうか。

 

「数字で表れないものがここから生まれると期待しております。時間軸でいえば、成果が実際にクルマやモビリティ事業につながるのは数年先になります。ただし、その原点は1年内に出てくるということも考えられるでしょう。実はゼロベースから始めているわけではありません。少しずつ動き始めているプロジェクトがあります」

 

――IT人材の採用に当たっては、高額給与など待遇面も課題になりますが。

 

「IT業界、MaaS領域も含めて、競争が激しいことは理解しています。その中でも、共感し、大きなプロジェクトを任せもらえる、お客様の顔が見えるといったところにやりがいを感じてもらえるということになるのでしょう。もちろん、今後はマーケットプライシングも意識しながら、現実的に考えていかなければならないとは認識しています」

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。