
世界初の3Dプリンター鉄道駅舎の建設で持続可能なインフラ体制を目指す
西日本旅客鉄道、JR 西日本イノベーションズ、セレンディクスの3社は3月12日、老朽化した木造等の駅舎の建替えに伴う新たな試みとして、建設用3Dプリンターを活用した駅舎建設の実現を目指す。対象の駅舎はJR紀勢本線の初島駅(和歌山県有田市)、3Dプリンティング技術を用いた駅舎建設は世界初の事例となる。
駅舎の規模は、鉄筋コンクリート造の10平方メートル弱の平屋建。高さ約2.6m、幅、6.3m、奥行2.1m。壁面には有田市の名産「みかん」「たちうお」をイメージした装飾を施す。
意匠設計は、関わるのは株式会社ヌーブ一級建築士事務所の太田浩史(おおた・こうじ)一級建築士。西日本旅客鉄道株式会社大阪一級建築士事務所。構造設計は株式会社KAP一級建築士事務所と西日本旅客鉄道株式会社大阪一級建築士事務所となる。
1.新駅舎の概要
10平方メートル弱の建物を計画。建物の基礎部分を含めた外形は、最新の3Dプリンター技術を用いて出力する。出力したパーツに必要な処理を行った上(鉄筋・コンクリート充填)で、現地組み立てを行う。
現地では、クレーンによりパーツを組み上げ接合して完成させる。当日の施工時間(組上げ〜躯体完成)は終電から始発までの約6時間を想定。これにより、現場での作業が大幅に効率化され、在来工法(鉄骨造や鉄筋コンクリート造)と比較して、工期の短縮効果が期待される。
完成に至った駅舎は、鉄筋コンクリート製であるため耐久性や耐食性に優れている。また、従来のプレキャスト工法と比較し、型枠を使用しないため、造形の自由度が高く、デザイン面でも工夫が可能となっている。外装デザインには、当該地域ならではの特性を反映した地域住民に愛される駅舎を目指し、地域共生に貢献させていく考え。
2.建設場所
JR紀勢本線 初島駅(和歌山県有田市)
3.今後の展開
今プロジェクトでは、建設および維持管理にかかるコスト効果を詳細に検証。今回建設する駅舎を基本モデルとし、他駅への展開可能性を検討していく。
なお同技術の導入は、顕在化する労働力不足に対応することで、鉄道施設の計画的な更新を促進するもの。これにより、鉄道インフラの持続可能性を高め、当社の長期ビジョンに掲げる「安全、安心で、人と地球にやさしい交通」の実現に向けて着実に前進していきたいとしている。
ステークホルダー各企業は、当該プロジェクトに留まらず、最先端技術の活用による鉄道インフラの革新と、地域に根ざした持続可能な交通サービスの提供を目指していくと話している。