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2024年10月5日【事業資源】

JLR、61年の歴史を持つ古参工場を抜本的改修へ

坂上 賢治

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既に2億5,000万ポンド超を投資し、今後は更に2億5,000万ポンドを投じる

 

JLR(ジャガー・ランドローバー)は今秋(英国ゲイドン発)、5億ポンドを投資して歴史あるヘイルウッド工場を改修。既存の内燃エンジン車(ICE)やハイブリッド車(PHEV)と共に電気自動車(EV)の並行生産ができるようにしたことを明らかにした。

 

これにより1963年にフォード「アングリア」の生産工場として建設された同拠点は、これからのEV時代に適応した拠点に生まれ変わる。実際、同工場へは新しいエレクトリック・モジュラー・アーキテクチャー(EMA:Electric Modular Architecture)を持つ電動ミッドサイズSUVを生産するため、敷地を32,364平方メートルへと拡張するなど、既に2億5,000万ポンドを投じ、過去1年で100万時間以上の労力を掛け、様々な建設作業が行われてきた。

 

 

投入された設備には、新しいEV組み立てライン、750台の自律型ロボット、ADAS(先進ドライバー支援システム)キャリブレーション設備、完璧な部品取り付けのためのレーザーアライメント技術、生産を監視する最新のクラウドベースのデジタルプラント管理システムなど多岐に亘る。

 

今改修で内燃エンジン車、ハイブリッド車、EVの並行生産が可能に

 

今回の同工場への投資について、JLRでインダストリアル・オペレーションズ担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるバーバラ・バーグマイヤー氏は、「ヘイルウッド工場は、20年以上に亘り、RANGE ROVER EVOQUEやDISCOVERY SPORTなどの車両を生産し、英国北西部におけるJLRの心臓部として機能してきましたが、今回の投資は、そうした役割の大転換となります。

 

 

我々は来たる2030年までに、JLRの全ブランドに電動モデルをラインアップさせ、2039年までにJLRのサプライチェーン、製品、事業全体でカーボンネットゼロ(排出ガス量実質ゼロ)を達成することを目指しています。

 

従って当該工場については、敷地内のエネルギー消費量の10%に相当する8,600 GWhのエネルギーを生産する18,000枚の太陽光発電パネルを設置する計画が含まれています。

 

加えて再生可能エネルギーの利用、燃料の転換、エネルギー効率の高い設備を導入することにより、同拠点からのCO2e(二酸化炭素換算値)排出量を40,000トン減らすことを目指しています。

 

 

拠点刷新はモダンラグジュアリーな企業に生まれ変わる証左となる

 

また何よりも、この戦略の中心となるのは電動化であり、ヘイルウッド工場は今後、ICE、PHEV、EVモデルを並行して生産する役割を担い、最終的にはJLR初のオール電動車生産施設となる予定です。

 

電動車生産に向けた人材の再教育にも取り組みます。私達は Future Skills Programme(フューチャー・スキルプログラム)の一環として、全拠点に毎年2,000万ポンドを投資し従業員がキャリアを転換し、自動車生産とエンジニアリングの未来の中核となる新しいシステム、テクノロジー、プロセスに関わる重スキルを習得できるように務めています。

 

こうした取り組みの一環としてヘイルウッド工場では、新たな研修開発センターも開設します。そこでは、生産サイクルの各段階にある車両を使用した研修が行われ、バッテリー組み立て工程を含む高電圧トレーニング(HVT)に重点的に取り組みます。事実、これまでに1,600人の従業員がHVTを修了しており、更に100人の従業員が研修を受ける予定です。

 

 

新たな生産ラインでは、EMAボディシェルの最初のテスト生産を既に完了しており、今後、EMA生産開始に先立ち、新しい機械とテクノロジーのテストと最適化を進めていきます。これらは、当社の内部チームとサプライヤーが力を合わせ、世界トップクラスのラグジュアリーEVを生産するために必要な技術を工場に導入してきた努力の証となるでしょう」と述べた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。