SOFC用鋼材、コーティングレスによる耐酸化性と導電性の両立
JFEスチールは11月26日、コーティングレスで高温水蒸気中での耐酸化性と導電性を両立する固体酸化物形燃料電池(SOFC/Solid Oxide Fuel Cell.水素燃料電池)のインターコネクタ(セルを積層するため電気的に接続する部品)用フェライト系ステンレス鋼「JFE-FC1」を開発し、そのサンプルの提供を開始した。
JFE-FC1は、セラミックスコーティングに要するコストと作業工程を削減することができるステンレス鋼。燃料電池は水素と空気を反応させることで発電を行う電池であり、持続可能な社会の実現に必要とされる、二酸化炭素を排出しないグリーン電力の供給装置として今後広く普及することが期待されている。
インターコネクタ用ステンレス鋼の高温酸化挙動の模式図
開発の背景には、従来のステンレス鋼を用いたインターコネクタでは約700℃の高温水蒸気中での使用時に生成するステンレス特有の酸化皮膜が、長期間の使用によってそのバリア機能を失い、鉄そのものの酸化物である赤さびを生成することで電池性能の低下が生じるため。
従って現行のインターコネクタは、ステンレス鋼にあらかじめセラミックスコーティングを施すことで酸化皮膜のバリア機能を長期間の使用後にも維持できるようにしているが、希少元素を含むセラミックスコーティングの原料コストや製造にかかる作業工数が普及促進の大きな課題となっている。
今回、開発されたJFE-FC1は、長期間の使用後にもバリア機能を持ち続け、かつ発電効率を低下させないよう導電性も維持できる特殊な構造を持った酸化皮膜が生成する、新たな材料設計に基づいて開発されたステンレス鋼となる。
このJFE-FC1を適用することで、セラミックスコーティングに要するコストと工程を削減することができ、カーボンニュートラル実現に向けたSOFCの普及促進に大きく貢献する。
また、JFE-FC1はSOFCの逆反応であるSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell.電気で水を分解して水素を製造する装置)のインターコネクタにも同様に使用することができるため、SOECの普及による水素活用社会の実現にも大きく貢献する。