
日本航空(JAL)、丸紅、三菱ケミカル、中国木材、ボーイングジャパン、大林組の6社は3月27日、国内の森林資源から持続可能な航空燃料(SAF/Sustainable Aviation Fuel)、バイオナフサ、バイオディーゼルを製造・販売する事業についての事業性調査を目的とした覚書を締結した。
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背景・意義
日本は世界有数の森林資源保有国であり、間伐材や木材利用により生じる残渣などは、その潜在量からサステナブルな原料として期待されている。また資源循環の観点からも、高層ビルを含む大型木造建築物への木材利用が注目を集めており、それに伴い発生する残渣の活用機会の増加が見込まれている。
<航空業界とケミカル業界の現状・取り組み>
航空業界
・CO2排出量の削減が喫緊の課題となる中、SAFの活用は現実的かつ有効な手段。
・SAF利用が本格化する2030年以降の需要拡大に対し、安定的なSAFの供給体制を構築するため、国内において原料・製造・利用まで一貫したサプライチェーンが必要。
ケミカル業界
・カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーの実現に向け、製品製造時の温室効果ガス排出量低減や、原料転換(バイオマスを原料とするバイオケミカル製品や廃プラスチックを原料とするケミカルリサイクル製品)の取り組みが進められている。
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調査の概要
同調査は、Licella社(豪州の循環型リサイクルソリューション企業)の製造技術を用いて、木材残渣からバイオ原油を製造し、それを改質・精製し、SAF、バイオナフサ、バイオディーゼルといった製品を製造する国内地産地消型のサプライチェーンを構築することを想定している。
より具体的には、事業の経済性評価、原料の供給・処理システムの検討、製造プロセスの検討、製品のロジスティックスの評価、CO2排出量削減効果の評価などを行う。調査期間は2025年12月までを予定しており、調査が進んだ場合2030年ごろの商用化を目指す。
<調査における各社役割>
日本航空 :製造事業検討主体・SAF利用に向けた検討
丸紅 :製造事業検討主体・本調査全体取り纏め・各製品利用に向けた検討
三菱ケミカル: 製造事業検討主体・技術評価支援・バイオナフサ利用に向けた検討
中国木材 :原料調達・供給方法の検討
ボーイング :技術認証関連の支援
大林組 :バイオディーゼル利用に向けた検討
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今後の展望
調査に参画する6社がこれまでの知見を持ち寄って相互に連携することで、脱炭素製品の国産化を実現すると共に、日本各地に森林資源を活用した新たな産業をつくり、地域の活性化を促す。
また、森林資源循環を促進することで炭素固定化(大気中の二酸化炭素を植物や土壌などに取り込み長期間にわたり貯留するプロセス)、水源涵養(森林が雨水を蓄え、地下水として供給する機能を指す)、災害防止といった日本の森林の課題解決にも貢献することを目指す。