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いすゞ自動車の南信介 代表取締役社長
いすゞ自動車(本社:神奈川県横浜市、社長COO:南真介)は4月3日、横濱ゲートタワーの本社拠点に報道陣を募り、「運ぶ」に関わる様々な社会課題を解決していくべく、来たる2030年のグローバル市場に於ける「商用モビリティソリューションカンパニー」への変革を目指していくための中期経営計画「ISUZU Transformation – Growth to 2030(IX)」の策定内容を発表した。
その方策は、2030年に目指すべき自社の姿として「安心×斬新」な「運ぶ」を創造する新事業への挑戦を掲げ、(1)自動運転ソリューション、(2)コネクテッドサービス、(3)カーボンニュートラルソリューションの3領域を柱に据えて、これらをテーマに将来の新たな収益源として事業を加速させていくと述べた。
具体的な数値目標してはグループ全体で、既存事業の強化を軸に新規事業を強力に推進することによって、2030年度に売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指すという。そのための背景・経営方針などの個々の策定内容は以下の通りとなる。
「ISUZU Transformation(IX)」イメージ
1.背景
いすゞグループは昨年5月、経営理念体系「ISUZU IDⅰ」を策定した。それは100年に一度の大変革期に於いて全従業員が同じ価値観を共有し、グループ一丸となって社会課題の解決に取り組むべく、共通の指針として定めたもの。
この「ISUZU IDⅰ」では、〝地球の『運ぶ』を創造する〟をPURPOSE(使命)に、〝『安心×斬新』で世界を進化させるイノベーションリーダー〟をVISION(将来像)にそれぞれ掲げた。
また更に、カーボンニュートラル(CN)と物流DXを加速させるため、2030年までに総額1兆円規模のイノベーション投資を行うことも表明した。
そうした経営理念体系の策定を前提に、今回、「中期経営計画2024(2022年3月期~2024年3月期)」の成果や将来の事業環境からのバックキャストを踏まえて、ISUZU IDやいすゞグループの2030年にありたい姿を「IX」として具体化したという。
2.経営方針
いすゞグループは2030年に向けて、創造する価値を従来の商品軸から新たにソリューションへと広げ、ビジネスモデルを大きく変革する。そのために、現在の収益の拡大と未来の収益への投資を両輪として顧客を含めた社会、あらゆるステークホルダーが抱える課題を解決できる商用モビリティソリューションカンパニーを目指す。
3「運ぶ」を創造する新事業への挑戦
将来の新たな収益源へと大きく成長させるため、以下の新技術3領域を起点に、事業化を加速させる。そうしたステップを踏むことで来るべき2030年代には、売上高1兆円規模の事業を目指す。
(1)自動運転ソリューション-Autonomous driving solutions
2027年度以降、自動運転レベル4のトラック・バス事業の開始を順次目指す。そのために今春より自動運転技術の獲得や基礎的なサービスの作り込みを本格的にスタートさせ、アライアンスパートナーとの協働によるモニター実証を経て、2027年度より順次、高速道路・ハブ間での輸送や、市街地をはじめとする路線バス向けのソリューション提供へと繋げていく。
(2)コネクテッドサービス-Connected services
国内では運送事業者・荷主の輸配送効率を高めるサービスを提供する他、業界を超えた様々なデータを商用車情報基盤「GATEX(ゲーテックス)ⅱ」と連携させることで、新たなサービスを創出する。
さらに北米へ、高度純正整備「PREISM(プレイズム)ⅲ」と、BEVの導入をサポートするトータルソリューションプログラム「EVisionⅳ」を展開し、2028年までに北米以外の主要地域へも対象エリアを拡大させていく。
(3)カーボンニュートラルソリューション-Carbon neutral solutions
様々なパートナーとの協業を通じて、マルチパスウェイ(全方位)でのCN化を進める。具体的には、2030年までにすべてのカテゴリーでCN商品をラインアップに加える。
更に2030年代の普及期を見据え、価格競争力のあるBEVの投入や、バッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Conceptⅴ」をはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進し、社会のCN化を牽引していく。
4.「運ぶ」を支える既存事業の強化
今後は事業基盤を更に強化し、2030年度に新車販売85万台以上、売上高5兆円以上を目指す。CV事業は、いすゞ・UDトラックス(UD)の販売・サービスチャネル及び商品の相互補完でシナジー創出を更に加速させることにより、グローバルでの徹底的な拡販を実現させていく。
LCVⅵ事業は、グローバルサウスへの拡販を進めると共に、2030年に向けては、動力源の多様化および次世代モデルに向けた要素技術の開発を推進し、事業を拡大・成長させていく。
2030年度 販売台数目標
5.地域別戦略
いすゞグループが重点地域と位置付ける日本、米国、ASEANの3地域へは、サプライチェーン全体、特にものづくり強化への投資を継続する。更に今後の成長を見込む戦略地域であるインド・アフリカへは、将来に向けたブランドの浸透とプレゼンスの拡大に努める。
重点地域(1):日本
グローバルの生産量を確保するため、強靭なサプライチェーンの整備を行っていく。また労働人口減少に備え、既存インフラをベースに、生成AIの活用などで効率化・近代化し、最適な国内ものづくり体制を再構築する。
更に新車販売・保有事業の拡大を支える機能およびサービスインフラ網の強化への投資(2,050億円)を実施し、これらにより、既存事業の盤石化を図る。
「物流2024年問題」に対しては、荷主の立場で、ドライバー拘束時間・積載率の実態に基づき運営を改善し、ドライバーの負荷軽減に努める。加えて、自動運転技術を活用した実証と新規事業の展開により、日本の物流・人流およびものづくりを、いすゞグループが守っていく。
重点地域(2):米国
海外におけるBEVビジネス構築の先駆けとして、小型BEVを市場投入する。これを起点に、開発・購買機能の強化と生産能力の増強を目的とした積極的な投資を行う。加えて、アフター重視のビジネスモデルに転換し、LCFⅶ市場でのマーケットリーダーを目指す。
6.財務方針
財務目標
投資全体像
7.ISUZU IDを基軸とした経営基盤の確立
ISUZU IDを起点とする人的資本経営に向けて、グローバル基準の人財マネジメント基盤を整備する。その変革の第一弾として、従来の職能型を改め、職務型を採用した新人事制度を今春よりスタートさせた。今後はこれを順次対象を拡大させていき、2026年度にはグループ全体で運用させていく構えだ。
また、事業戦略の実現に必要なDXケイパビリティを確保するため、新事業展開に向けた技術・サービスの開発や既存事業運営の効率化への取り組みを通して、全従業員の基礎スキルおよび専門領域のスキルの向上や、技術革新に対応する新たなスキルの獲得を進める。
そして、専門人財の獲得とリソースシフトを促進し、DX領域における強固な人財基盤を構築する。いすゞグループは、デジタルを活用してイノベーションを創出する集団へと生まれ変わり、世の中に提供する価値の拡大を図る。
いすゞでは、「2030年の成長に向けてIXを掲げ、多様化するお客様ニーズや不確実性の高い事業環境にもしなやかに対応し、絶えず変革し続けていきます。そして〝安心×斬新〟でお客様・社会の課題を解決する「商用モビリティソリューションカンパニー」を目指してまいります」と結んでいる。
※なお今発表概要中にも内包されている「ISUZU ID: 新経営理念体系/New corporate philosophy(先の2023年5月策定)」を説明した配信動画は以下の通り