村田製作所の好業績が続いている。4月28日に発表した2021年度の連結決算は、売上高が前年度比11.2%増の1兆8125億円、営業利益が同35.4%増の4340億円、当期純利益が同32.5%増の3141億円と大幅な増収増益だった。営業利益率は何と23.4%で4.2ポイントも増えた。2022年度も増収増益を見込み、過去最高の業績を更新する予定だ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
操業度益、コストダウン効果などで大幅な増益
「当社グループが属するエレクトロニクス市場は、カーエレクトロニクス向けでは、自動車の電装化の進展や顧客による部品在庫積み増しの動きにより、前年度比で需要が大きく増加した。また、PC向けではリモートワーク用途などの需要が引き続き堅調に推移したものの、スマートフォン向けでは中華圏得意先での在庫調整の影響もあり、需要が軟調だった」と村田恒夫会長はオンライン会見で2022年度の経営環境について振り返った。
そのような中、コネクティビティモジュールがスマートフォン向けで減少したが、積層セラミックコンデンサーがコンピュータおよび関連機器向けやカーエレクトロニクス向けで大きく増加。さらにリチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加して、売上高が2ケタ増となった。
営業利益については、生産高増加に伴い生産関連費用は増加したが、操業度益やコストダウン、円安効果などで35%以上の増益を達成した。営業利益の変動要因は、操業度益でプラス1170億円、合理化効果でプラス460億円、為替変動でプラス380億円、売価値下げでマイナス320億円、減価償却費の増加でマイナス125億円、固定費の増加でマイナス640億円、品種構成差などでプラス184億円だった。
また、資源価格やエネルギー価格の値上がりに伴う原材料費の高騰について、村田会長は「2021年度については、それほど大きくなく、価格転嫁がある程度できたので、損益面では影響が少なかった」と述べた。
PC、カーエレ、家電向けの売上高が大幅に増加
用途別の売上高については、AV向けが前年度比0.6%(4億円)減の714億円。デジタルカメラ向けでリチウムイオン二次電池が増加したものの、セットトップボックスで積層セラミックコンデンサーが減少したためだった。
通信用と向け売上高は、スマートフォン向けで積層セラミックコンデンサーが増加したが、同用途向けで事業ポートフォリオ見直しによりコネクティビティモジュールが減少したほか、高周波モジュールも減少。その結果、3.2%(257億円)減の7792億円となった。
コンピュータおよび関連機器向けの売上高は、前年度に比べて23.6%(689億円)と大幅増加の3604億円だった。これはPCやサーバー向けでセラミックコンデンサーやインダクターが大きく増加したことが大きかった。
カーエレクトロニクス向けの売上高は、電装化の進展や顧客による部品在庫の積み増し需要により、積層セラミックコンデンサーが大きく増加したほか、EMI除去フィルターやインダクターの売り上げも増加。その結果、23.1%(631億円)と大幅増加の3363億円となった。
家電・その他の売上高についても、前年度に比べて40.9%(761億円)と大幅に増加して2622億円となった。これはパワーツール向けでリチウムイオン二次電池の売り上げが大きく増加したうえ、代理店向けで積層セラミックコンデンサーの売り上げが増加したためだった。
2023年度も在庫の積み増し状況は続く
2022年度の業績予想については、売上高が前年度比6.5%増の1兆9300億円、営業利益が同3.8%増の4400億円、当期純利益が同3.1%増の3240億円を見込む。ただ、上期業績については、売上高が4.8%増の9520億円、営業利益が5.9%減の2090億円、当期純利益が8.2%減の1540億円と増収減益の予想だ。
また、部品の需要予測については、スマートフォン向けが1%増の13.7億台、うち5G端末が32%増の7.5億台、PC向けが4%減の4.8億台、自動車向けが10%増の8400万台、うち電動車が1.5倍の2400台と予想する。
「自動車の生産台数回復と電装化の進展により、カーエレクトロニクス向けの需要は拡大する見通しだが、半導体不足の継続や中国におけるロックダウンによるサプライチェーンの寸断懸念等もあり、部品需要の先行きは不透明な状況にある。そんな中で、過去最高の業績を見込んでいる」と村田会長は力強く話す。
コンデンサーやインダクター、EMI除去フィルターがカーエレクトロニクス向けで増加するほか、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加することを見込み、さらに円安効果も加わって前年度比で増収を計画。製品価格の値下がり、固定費の増加などの減益要因はあるものの、円安効果やコストダウンなどによって、前年度比増益を達成する。
「われわれのほうではすべて掴むことはできないが、前期は約1カ月分の在庫の積み増しがあったと見ている。今期も引き続き在庫の積み増しは減少することはないと見ている」村田会長は話し、2023年度についてもその状況は続くと予想する。村田製作所の快進撃はまだしばらく続きそうだ。