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2021年4月23日【企業・経営】

ホンダ、三部敏宏社長就任会見

松下次男

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2030年に先進国のEV/FCV比率を40%に、2040年にグローバルでEV/FCV比率を100%に

 

 ホンダの三部敏宏新社長が4月23日、社長就任会見を開き、2040年までに電気自動車(EV)/燃料電池車(FCV)の販売比率100%を目指す意欲的な四輪車電動化電略を表明した。前日の気候変動サミットで日本政府が2030年の温室効果ガスの削減目標を大幅に引き上げることを公表した中で、ホンダはガソリン車、ハイブリッド車(HV)からの脱却をより鮮明にした。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 中間の2030年時点ではEV/FCV比率を40%(先進国トータル)に、2035年に80%(同)の比率を目指す。
4月1日付でホンダの新社長に就任した三部氏は「地球環境」と「安全」への取り組みを会見の骨子に据え、将来戦略を披歴した。

 

 この中で、地球環境への取り組みでは、政府の2050年のカーボンニュートラル宣言、さらに前日の気候変動サミットで菅首相が表明した2030年の温室効果ガス削減目標を2013年比で「46%削減する」(前目標は26%)方針を支持し、「これに向けて全力で取り組む」と述べた。

 

 これを北米、中国、日本の主要地域別にみると、北米と中国ではEVとFCVの販売比率を2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%を目標にする考えを示した。
 うち北米では、GM(ゼネラルモーターズ)とのアライアンスを加速し、共同開発EVを投入する。まずGM主導でEV用に開発したバッテリー「アルティウム」を採用した大型EV2車種をホンダ、アキュラブランドの2024年モデルとして北米に投入。

 

 そのあと、今度はホンダ主導で開発したEVプラットフォーム「e:アーキテクチャー」採用モデルを2020年後半から北米へ投入する。同プラットフォームはGMへも提供する。
 中国では、上海モーターショーでも公開した「SUV e:プロトタイプ」をベースとした量販車を2020年春に発売するのを皮切りに、今後5年以内に10機種のホンダブランドを投入する計画だ。基幹部品のバッテリーは協業するCATLなどから調達する。

 

 日本はEV、FCVの販売比率を2030年に20%、2035年に80%、2040年に100%とする目標だ。また、2024年には軽自動車のEVを投入する。
 三部社長は米中などと比べて日本の2030年のEV、FCVの販売比率が低いことについて「日本ではHVが広く普及しており、その比率は世界的に突出している。さらに、電源への負荷などを考量すると、30年の段階ではHVでCO2(二酸化炭素)削減に起用するのが現実的だ」との見方を示した。

 

 HVを含めると、2030年時点でホンダは日本で100%電動化を達成する方針だ。
 三部社長はEV普及で課題となるのがコストの大きな比率を占める「バッテリー」の調達との見方を示し、現行の液体のリチウムイオン電池では運搬が厄介であり、調達は「それぞれ地域ごとに委ねられることになるだろう」と述べた。

 

 特に北米では主要なバッテリーメーカーが存在していないことから、2020年代後半に投入する「e:アーキテクチャー」のバッテリーについて「アルティウムは有力候補の一つ。新たな企業が出てくれば、それらも対象となるだろう。EV普及とそれに応じた量に左右される」とした。
 また、全固体電池についても独自に研究を進めていることを明らかにし、2020年代後半のモデルに採用をめざす。

 

 二輪車では、高額なバッテリーと車両を切り離して考えることが普及のカギとし、モバイルパワーパックや日本・欧州で他の二輪車メーカーとコンソーシアムを設立して標準化に取り組む交換式バッテリー技術などを活用すると表明した。
 また、2021年にはビジネス領域で、2024年までにパーソナル領域で原付一種・原付二種クラスへ3機種の電動二輪車を投入する方針を示した。

 

 2040年でEV、FCVの販売比率100%を目指すのは「クルマは約10年間使用される。2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、その10年前の段階で新車のカーボンニュートラルを達成する必要がある」ためだ。

 

 安全への取り組むでは、「2050年に全世界で、ホンダの二輪車、四輪車が関与する交通事故ゼロを目指す」と表明した。その一環として、二輪車の死亡事故に四輪車が関与するケースが多いことから、「全方位安全支援に進化したADAS(先進運転支援システム)を2030年までに先進国の四輪車全機種へ提供することを目指す」と述べた。

 

 あわせて、これらの環境と安全への取り組みには積極的な投資が必要とし、「売上高の増減に左右されず、今後6年間で総額5兆円程度を研究開発費として投入する」と発言した。
 また、事業展開に当たっては「台数ありきの戦略はとらない。目標は立てるが、拡大を追うつもりはない」と強調。電動化で部品点数が削減するが、アライアンスや効率化で目標とする「利益率7%を達成できる」経営体質を目指す。
 ホンダらしさについては「ソフトウェアでいかに味を出していくか」が重要とした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。