20年代後半にEV専用工場開設を視野に、全く新しい製造方法導入を検討
ホンダは4月26日、北米、日本でもバッテリーEV(電気自動車)の投入を加速させるなどとした「2023 ビジネスアップデート」を公表した。(佃モビリティ総研・松下次男)
三部敏宏社長が記者会見を開き表明したもので、懸案の半導体調達では台湾積体電路製造(TSMC)と協業し、中長期的視点で安定調達を目指す方針を明らかにした。
四輪EVについては、北米でGM(ゼネラルモーターズ)との共同開発モデルである「プロローグ」(ホンダブランド)、「ZDX」「アキュラブランド」を2024年に発売するのに続き、2024年に独自のプラットフォームを採用した中大型EVを投入すると発表。さらに2027年以降にGMと量販価格帯のEVを共同開発し、発売する。
中国では出展の3車種の他、2027年までに10機種のEV投入へ
日本では、すでに発表済みのN-VANベースの軽商用EVを2024年前半に発売するのに加え、2025年にN-ONEベースのEV、2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を投入すると表明した。
中国では、「e:NS2」「e:NP2」を2024年初頭に発売するのに続き、「e:N SUV 序」をベースとした量販車種を24年中に投入。これら3車種を含め、2027年までに10機種のEVを投入する方針だ。
EVの重要部品であるバッテリーでは、液体リチウムイオン電池の進化に加えて、半固体電池・全固体電池の次世代電池の開発を進める方針。
米オハイオ州内の3つの既存工場を北米のEV生産の拠点として活用
半固体電池(リチウム金属二次電池)では、EV用バッテリー研究開発会社の米SESへ出資し、共同開発を進める。全固体電池は独自開発を進めており、2024年にはパイロットプラントを立ち上げる。
EVの生産体制では、本格的な生産に向けて米国オハイオ州内の3つの既存工場を北米におけるEV生産のハブ拠点として活用する方針。
さらに2020年代後半に発売予定のEVをターゲットにEV専用工場の設置も目指す。自動化・知能化を追求した生産ラインを構築するもので、従来とは「発想、コンセプトが全く異なる工場、EV」と述べ、究極的に生産効率化した工場という。
EV専用工場は日本で開発したあと、「それぞれ投入するEVに合わせて展開する」計画で、将来的にグローバルへ広げる。
四輪で独自OSを開発、二輪車では交換式と充電式バッテリー車を検討
電動化の進展に不可欠なソフトウェア領域についても強化すると表明。ホンダ独自のビークルOSを開発し、これを基盤に車載ソフトウェアを進化させる考えで、2025年に北米に投入する中大型EVから採用する方針だ。
二輪車では、交換式バッテリーを搭載した「EM1 e:(イーエムワン イー)」を日本、欧州、インドネシアで2023年中に発売すると表明した。また、充電式バッテリーを搭載した電動二輪車の検討も進める考えを示した。
ホンダのビジネスアップデートは企業変革の進捗や電動化などの今後の取り組みを示したもので、記者会見には三部社長と青山真二副社長が出席した。
四輪事業の収益体質改善では、着実に進展していると表明し、2018年度と比較して固定費が2022年度10%以上削減。損益分岐点も2018年の約90%から2022年度は約80%へと改善したと述べた。
これに加え、販売台数を回復させることにより、2025年度売上高営業利益率7%達成を目指すとした。
基礎研究に年1000億円、スタートアップ投資に年100億円の出資枠を用意
また、自動車業界全体がここ1~2年悩まされた半導体不足問題では、代替品調達などの短期的な施策に加えて、中長期的視点で半導体メーカーとの協力関係構築を目指す考えを打ち出す。
その一環としてTSMCと戦略的協業することで合意したことを公表。TSMCとは部品メーカーを通じての取り引きはあったものの、直接の接点はなかったとし、今後、共同開発も視野に入れながら安定調達に生かしたいとした。
カーボンニュートラル技術を中心とした基礎研究領域に年間1000億円レベルの研究予算を安定的に確保していくほか、スタートアップとのオープンイノベーションを積極的に展開する狙いで年間100億円レベルの出資枠を用意するとの方針も示した。