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2023年2月1日【企業・経営】

日立、DX関連事業の伸長で通期業績予想を上方修正

山田清志

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日立製作所が2月1日に発表した2022年度第3四半期累計(4月~12月期)の連結決算は、売上高にあたる売上収益が前年同期比10.4%増の8兆1087億円、調整後営業利益が同8.9%増の5274億円、調整後EBITAが同8.5%増の6242億円、純利益が同35.2%減の2922億円だった。
リスク分担型企業年金制度への移行影響や日立エナジーの暖簾減損による営業外損益の減少により純利益が減少したが、営業利益ベースではデジタルトランスフォーメーション(DX)事業の拡大や円安効果により大きく上振れ。2022年度の通期業績見通しを上方修正した。(経済ジャーナリスト 山田清志)

 

2022年度第3四半期決算の業績ハイライト

 

買収した米クローバルロジック事業が大きく成長

 

「ウクライナの情勢や新型コロナウイルスのパンデミック、上海のロックダウンなど厳しい環境下で、ほぼ予定通りの収益を積むことができた。会社全体の収益が改善している。通年で上方修正ができたということから、社内ではまあまあの決算ができたのではないかと評価している」と河村芳彦執行役副社長CFOは第3四半期決算を振り返った。

 

デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティを中心に受注が堅調だった。例えば、デジタルシステム&サービスでは、10月~12月期の受注高が6513億円と前年同期比で22%も増加した。

 

また、グリーンエナジー&モビリティでは、日立エナジーがケベック州とニューヨーク州の交流送電網を連系するHVDC(高圧直流送電)変換設備、鉄道システム事業がカナダの地下鉄オンタリオ線向け車両と鉄道システムを受注。それぞれ10~12月期の受注高が前年同期比15%増の5544億円、135%増の6665億円だった。

 

2022年度第3四半期決算の主要事業業績

 

それではセグメント別の業績を詳しく見てみよう。まずデジタルシステム&サービスは売上収益が前年同期比12%増の1兆6780億円、調整後EBITAが85億円増の1883億円だった。セグメント全体では、デジタル技術を活用したソリューションビジネスであるLumada(ルマーダ)事業が堅調に推移した。

 

特にサービス&プラットフォームが売上収益で6890億円と24%増え、調整後EBITAも568億円と81億円増加した。ITプロダクツ関連の部材価格の高騰影響があったものの、21年7月に買収した米グローバルロジックの事業が大きく成長、海外クラウドサービスも好調だったそうだ。

 

グリーンエナジー&モビリティは、売上収益が前年同期比18%増の1兆7237億円、調整後EBITAが369億円増の919億円と、セグメント全体では、為替影響や日立エナジー・鉄道システム事業が堅調に推移して増収増益を達成した。

 

ただ、原子力・エネルギーのビジネスは、エネルギーBU(ビジネスユニット)の大型太陽光案件の減少や風力発電システム事業の戦略変更、一部プロジェクトにおけるコスト増などにより減収減益となった。

 

2022年度の通期業績見通しハイライト

 

日立アステモは為替影響で増収増益に

 

コネクティブインダストリーズは売上収益が前年同期比9%増の2兆1703億円、調整後EBITAが414億円増の2274億円だった。海外家電事業の売却・中国ロックダウンの影響により生活・エコシステム事業が減収になったが、日立ハイテクの計測分析システム事業やビルシステムBUが堅調に推移して増収増益となった。

 

なかでも増収増益に大きく貢献したのが計測分析システム事業で、売上収益が5016億円と前年同期に比べて22%も伸び、調整後EBITAも783億円と409億円も増加した。また、ビルシステムBUは為替影響やビルサービス事業の拡大により、売上収益が9%増の7063億円、調整後EBITAが115億円の717億円だった。

 

自動車関連子会社の日立アステモについては、売上収益が前年同期比20%増の1兆3772億円、調整後EBITAが25億円増の398億円だった。半導体不足や中国におけるサプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰があったものの、為替影響および自動車メーカーの生産量の緩やかな回復により増収増益を達成した。

 

ただ、純利益は赤字となった。「固定資産の減損や年金の移行など一時的なものが発生したためで、経営的な措置を打つとことせず、来年になればなくなると見ている」と河村副社長CFOは話し、来年度はアステモに期待しているそうだ。

 

ちなみに、アステモの収益の半分強が2輪ビジネスから上がってきているそうで、4輪の電動化に経営資源を振っているものの、しばらくの間は2輪ビジネスがアステモを支えることになりそうだ。

 

2022年度の主要事業業績見通し

 

売上収益と純利益を1500億円、300億円上方修正

 

2022年度の通期業績見通しは、売上収益が前期比2.8%増の10兆5500億円、調整後営業利益が同2.0%増の7530億円、調整後EBITAが増2.5%増の8770億円、当期純利益が同8.0%増の6300億円を見込む。売上収益と当期純利益をそれぞれ1500億円、300億円前回公表値から上方修正した。

 

セグメント別では、デジタルシステム&サービスは売上収益が前期比6%増の2兆2900億円、調整後EBITAが185億円増の3000億円で、それぞれ前回見通しを据え置いた。グリーンエナジー&モビリティは売上収益が同19%増の2兆4400億円と前回見通しから1300億円上方修正し、調整後EBITAについては666億円増の1590億円と変更なし。

 

コネクティブインダストリーズは前回見通しから変更なしで、売上収益が同3%増の2兆8400億円、調整後EBITAが451億円増の3030億円。

 

日立アステモは売上収益が同17%増の1兆8700億円、調整後EBITAが296億円増の920億円。為替影響などにより、売上収益を前回見通しから200億円上方修正した。

 

また、質疑応答では賃上げについての質問があり、河村副社長CFOは「国民的なアジェンダになっているので、当社としても真摯に向き合っていろいろな検討をしている。基本的にはできる限り対応していきたい。

 

ただ、賃上げというのは持続可能にする必要があると思う。そのためには労働生産性が上がっていかないといけない。とにかく労働生産性を改善して、その改善した分を賃上げとして反映していこうと考えている」と答えていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。