トヨタ自動車とダイムラートラック、傘下の商用車事業で協業
トヨタ自動車と独ダイムラートラックは5月30日、共に商用車事業で協業し、それぞれの子会社である傘下の日野自動車、三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)を経営統合すると発表した。(佃モビリティ総研・松下次男)
トヨタ自動車の佐藤 恒治 代表取締役社長
カーボンニュートラルへの対応など、激変する商用車の事業環境を見据えて上記の4社が協業しCASE(ケース)技術の開発を加速させていく構えだ。
ダイムラートラックのマーティン・ダウム代表取締役
そこで上記の協業合意の公表に合わせ、トヨタの佐藤恒治社長CEO(最高経営責任者)、ダイムラートラックのマーティン・ダウムCEO、日野の小木曽聡社長CEO、三菱ふそうのカール・デッペン社長・CEOの4社首脳が同日、東京都内で記者会見を開いた。
三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペン代表取締役社長・CEO
トヨタとダイムラートラックは統合会社の株式を同割合で保有
それによると、日野と三菱ふそうの統合は対等な立場で実施され、それぞれの親会社のトヨタとダイムラートラックが統合後の持株会社を同割合で保有する。
日野自動車の小木曽 聡 代表取締役社長
日野と三菱ふそうはこの持株会社の下にぶら下がらり、商用車の開発、調達、生産の各分野で協業する一方、販売および商用車ブランドは従来通り独自に事業展開していく形だ。
なお持株会社は東京証券市場に上場。三菱ふそうに出資する三菱グループなども引き続き「同様のかたちで新会社に出資することになるだろう」(ダウムCEO)の見方を示した。
CASE技術の開発を加速を目指し統合は2024年末までに完了
新会社の名称や所在地、体制、協業の範囲などは協議の上、2024年3月期中に最終契約を結び、2024年末までの統合完了を目指す。
記者会見で登壇した佐藤社長は、今回の4社協業の狙いについて「皆で力を合わせて商用車の未来をつくる」取り組みだと強調。トヨタとしては次世代の商業車事業を積極的にサポートしていく考えを表明した。
またダウムCEOはトヨタ、ダイムラートラックを含めた協業の狙いについて水素関連分野の推進を掲げた。
小型・中型・大型トラック、対象市場毎に優位技術を模索する
改めて翻ってみると商用車分野は、ラストワンマイルデリバリーから国境を越えた長距離物流輸送など、多様な用途と市場があり、車両も宅配用の小型車からトレーラーまで幅広い。
こうした中、宅配用などの小型トラックにはBEV(バッテリー電気自動車)が適用可能だが、大型トラックのEV化は重いバッテリーを数多く搭載せざるを得なく、実用的でない。
このため、大型トラック分野では実用化なゼロエミッション社会の実現を視野に燃料電池車(FCV)などの水素の活用が進むとした。
実際、トヨタ、ダイムラートラック共に水素を燃料にしたパワートレインの開発で世界市場を牽引しており、両社の協業で、国際環境下で各々の立場を一段と優位な立ち位置に押し上げることかできるとの判断もあるのだろう。
来るべきカーボンニュートラル時代を照準に水素技術を活用
トヨタの佐藤社長も水素インフラの普及には「決まった拠点間を移動する商用車で先行するのが実用的」との見方を示す。一方の小型トラックのBEV化では三菱ふそう、日野がともに先行、実用化しており、こちらも協業が生かせる。
登壇した各首脳ともカーボンニュートラルやCASEに「個社で対応するのは不可能」と話し、協業、共同事業化は時代の流れとの見解を示す。
今後の協業の実現により、日野、三菱ふそう統合後の事業規模はグローバルの商用車市場の1割強を占めるという見通しを持っており、特に両社のシェアが高い東南アジアで相乗効果が期待されている。
また日本市場ではUDトラックスを傘下に持ついすゞ自動車グループと同規模となり、実質的に商用車は2グループの競合市場になる見込みだ。