ポルシェは記録的な業績を達成、Road to 20プログラムも始動
ポルシェAGは3月13日、オンライン環境を介したアニュアル・カンファレンスを開催。その際、公表された同社のアニュアル&サステナビリティレポートよると、同社は2022年度の会計を4つの新記録で締め括った。
まず同年のグループ売上高は376億ユーロ/13.6パーセント増( 2021年は331億ユーロ )に。
同営業利益は68億ユーロとなって、前年値を15億ユーロ上回った( 27.4パーセント増 )。また納入実績と自動車のネットキャッシュフローも過去最高値を記録。売上高利益率は16.0パーセントから18.0パーセントに上昇した。
加えて同社は、今年からモダン&ラグジュアリーの戦略を推し進めるべく、長期的にグループ営業利益率を20パーセント超以上としていく新事業指針「Road to 20( ロード トゥ20 )」の始動を掲げている。
素晴らしいチームワークによってポルシェ史上最高の業績を達成
同社執行委員会のオリバーブルーメ会長は、「ポルシェAGは〝ウクライナ戦争の影響〟〝コロナ禍によるパンデミックに係る課題〟〝世界的なサプライチェーンの混乱〟などの影響を受けつつも、過去からの歴史上で最も高い成績を達成した。
また併せて2022年に於いても、顧客へ向けてエキサイティングな新製品を提供する事が出来た。これらは素晴らしいチームパフォーマンスの結果であると誇らしく思っている」と語り、自社ステークホルダーへの感謝と労いの言葉を投げ掛けた。
実際、世界がサプライ チェーンの混乱に陥っているにも関わらず、ポルシェAGは既に充分以上の受注量を抱えており、そうした中で2022年は309,884台の新車を国際市場へ送り届けた。
ブルーメ会長は、「これは2021年の301,915台と比較して、およそ2.6パーセント増に値する。この結果、2022年度の純キャッシュフローは37億ユーロから39億ユーロに増加した」と昨年来から続く拡大傾向の背景を説明した。
自動車の総販売台数も、ネットキャッシュフローも過去最高を更新
このような拡大傾向を受けて登壇した財務・IT担当理事会メンバーのルッツ・メシュケ副会長は、「当社の成功要因は、価格ポジショニングの改善、強力な製品構成、車両販売の増加、為替レートの影響。及び厳格なコスト規律にある。
しかしこの成績は、今年から始動するRoad to 20によって、より一段と高い段階へと引き上がる事になる」と述べた。
「そのためにも製品の範囲、価格設定からコスト構造に至るまで、全てを新たに見直す。具体的には製品の貢献利益の質を高め、魅力的なものづくりを達成させたい」と語った。
加えてメシュケ副会長は、「昨年9月29日に我々は、ヨーロッパ最大のIPO( 時価総額 )を達成し、ポルシェに新時代が到来した事を伝える事が出来た。
このIPOの成功以来、ポルシェの株価はプラスに推移。株式市場に参入してからわずか81日後にはドイツ国内のDAX株式市場指数に組み込まれた。
株価の推移は、オファー価格の82.50ユーロから114ユーロに上昇した ( 2023年2月28日現在 ) 。これは1,080億ユーロの時価総額に相当する。
理事会は、優先株式1株あたり1.01ユーロの配当を提案
資本市場は、パフォーマンス重視の独立した高級ブランドとしての当社の地位を認めている。同時にフォルクスワーゲングループとの相乗効果を選択的に活用する事もでき、これらが株主に利益をもたらす事になる。
2022年度の普通株あたりの利益は5.43ユーロ、優先株あたりの利益は5.44 ユーロ。2022会計年度について理事会は、年次総会に9億1,100万ユーロの配当支払いを提案している。
これに優先株に対する500万ユーロの追加配当を加えると、総額は9億1,600万ユーロになる。これは普通株1株あたり1.00ユーロ、優先株1株あたり1.01ユーロに相当する。
なお今後の中長期的な目標に関して、経済的に困難な状況がより大幅に悪化しない限り、2023会計年度のグループの売上高利益率は17 ~19パーセントになる。
これは約400億から420億ユーロの範囲のグループ売上高に基づいたもの。また長期的には、先の通りで20パーセント以上のグループ営業利益率を目指している」と畳み掛けた。
オールエレクトリック・カイエンを筆頭に野心的な電動化戦略
こうした数値上の成績説明を引き継いだオリバーブルーメ会長は、自社ブランドの普遍性と価値に触れ、「ポルシェは世界で最も価値のある高級ブランドだ。そこで我々はモダンラグジュアリー戦略に焦点を当て、Sonderwunschプログラムの拡大を目指す。
それはスポーツカーの新しい製品ポートフォリオを拡大を意味するもので、既存のプロダクトに加えて限定版製品づくりにも注力。これまで以上に顧客の要望やライフスタイルに応える特別仕様車の提供に腐心し、当社ブランドへの期待を何度も上回りたいと考えている。
併せて野心的な電動化戦略についても引き続き注力していく。その第一弾となる完全電動のマカンは2024年に発売する予定だ。
完全電動の718は2020年代半ばに予定。それに続くのはオールエレクトリックのカイエンとなる。第4世代のSUVは2030年までに新車の80パーセント以上を完全電動車にするというポルシェの目標を明確に示したものだ。
製品ポートフォリオを、より上方に拡大する計画も示唆
加えてカイエンの上に位置するオールエレクトリックSUVも投入して、製品ポートフォリオを、より上方に拡大する事も計画している。
この新しい車両は、車内での全く新しい体験の提供と共に強力なパフォーマンスと、最先端の自動運転機能が提供出来るように設計される。
これによりスポーティかつラグジュアリーなポルシェのポジショニングを強化。特に中国と米国での市場拡大を視野に据えている」と中期的目標の一端を披露した。
一方、より短期的な戦略についてブルーメ会長は、「2023年中にカイエンは包括的なアップグレードを受ける事になる。
この第3世代のアップデートには、航続距離の拡大を視野に3つのプラグインハイブリッドが含まれる。いずれも新しいシャーシを導入し、オンロード性能のみならず、オフロード性能も高めていく。
またポルシェは2022年にチリのパートナーと共に立ちあげたe-fuelsパイロットプランを経てバイオ燃料が大量生産出来る可能性も実証した」と、未来に向けた動力エネルギーの多様化についての可能性についても触れた。