カミル・ザビエルスキー氏、ストアブランド・アセット・マネジメント社持続可能投資責任者
北欧金融グループのストアブランド(STB/Storebrand)は5月10日、株主3社がトヨタ自動車に対して、来たる6月の年次株主総会に向けて気候変動ロビー活動に係る決議案を提出するとしたプレスリリースを発表した。
ストアブランドは自らを、人々と企業にセキュリティの強化と財務上の健全性を提供する北欧の金融グループであるとし、自社は持続可能なソリューションを提供し、お客様が将来に向けて適切な経済的意思決定を行えるよう奨励する。私たちの目的は明確だ。それはより明るい未来を創造することにあると語っている。
そんなストアブランドには約40,000の法人顧客、200万の個人顧客がおり、1兆800億ノルウェークローネを管理。グループはノルウェーのオスロ郊外のライサケルに本社を置き、オスロ証券取引所に上場している。
なお今回のトヨタ自動車への提言は、デンマークの年金基金であるアカデミカーペンション(運用資産200億米ドル)、ノルウェーの金融サービス会社ストアブランド・アセット・マネジメント(運用資産1,200億米ドル)およびオランダの年金投資会社APG(運用資産 6,000億米ドル)が主導した。
その根拠として自動車ビジネスが気候危機にどのような影響を与えているかについて分析を行う独立系シンクタンクのインフルエンスマップの調査結果を挙げた。
このインフルエンスマップは、トヨタ自動車を気候変動ロビー活動に最も否定的な企業の1つとしてランク付けしているシンクタンクで、これを受けてストアブランド・アセット・マネジメントのサステナブル投資責任者を務めるカミル・ザビエルスキー氏は、「パリ協定には、国家レベルでの強力な規制が必要だ。企業や業界団体は、政治的影響力を利用して気候政策を阻止し、緊急の気候変動策実施のペースを遅らせるべきではない。
トヨタ自動車は日本の大手自動車会社として、あらゆる地域を介して一貫した関与策を実施すべきであり、それは気候変動に関わる我々の利益に沿ったものであるべきだ。トヨタ自動車は、長期に亘る気候変動に係る積極策を推し進めていくべきであると信じている」と述べた。
続いてアカデミカーペンションのアンデルス・シェルデ最高投資責任者 (CIO)は
「トヨタ自動車と2年以上に亘るコミュニケーションを経たにも関わらず、依然として同社と合意点に達することが出来ていない。
インフルエンスマップは、トヨタ自動車・経団連・自工会などの企業団体がパリ協定の目標に沿うまでには、まだ長い道のりがあることを示唆した。
これは投資の観点からは、トヨタがEV販売拡大による利益を逃し、貴重なブランドを危うくし、世界的に出遅れた現在の立場を進んで受け入れているのではないかと懸念している。
私たちは長年の対話結果と年次開示に期待した。しかしトヨタ自動車が多くの投資家達を充分に納得させるためには、より具体的な経営上の政策変更と、データに基づくより良い見直し策が必要だ」と話す。
最後にAPGアセットマネジメントのハーマン・スロイジャー最高情報責任者(CIO)は、「トヨタ自動車は日本株式会社である。そんなトヨタ自動車は世界最大の自動車メーカーであるゆえに同社のEVへの移行を加速させることは、ビジネス上の競争力を高めるだけでなく、自動車産業の発展を後押しするためにも極めて重要である。
そもそもトヨタ自動車は、日本のものづくりと経済を牽引する日本の自動車産業全域に於いて中核的な役割を果たしている。したがって、同社が業界団体、規制当局、サプライチェーンと主導的な立場と姿勢を示すことが日本経済の脱炭素化だけでなく、日本の持続可能な経済成長と雇用創出にとっても重要であると考えている。
私たちはトヨタ自動車に対し、特に一部の関連会社に於ける最近の排ガス不正表示問題などもを考慮して、私たちの提案に基づいて持続可能性開示の透明性を強化し、高めることを奨励する。これはトヨタ自動車の二酸化炭素削減への取り組みと戦略に対する投資家の信頼を回復するために重要である」と結んでいる。