トヨタモビリティパーツの共同配送の様子
パナソニックコネクトは6月14日、「配送見える化ソリューション」についての説明会を開催。同ソリューションを自動車関連部品・用品の卸売業を行うトヨタモビリティパーツ(TMP)に納入したと発表した。届け先の企業が異なる部品でも、運転手が専用端末で荷物のバーコードを読み込むことで、管理者は配送状況や作業をパソコンからリアルタイムで把握でき、業務の効率化が図れるというもの。パナソニックコネクトでは、このソリューションを自動車関連以外の業界にも広げていこうと考えている。(経済ジャーナリスト・山田清志)
ベルギーのソリューション企業を買収
パナソニックコネクトはパナソニックホールディングス(HD)傘下の事業会社で、主にB2Bソリューション事業を手がけており、従業員はグローバルで約2万8500人、売上高は9249億円。「現場から社会を動かし、未来につなぐ」を企業としての存在意義に掲げ、オートノーマスサプライチェーンの実現を目指している。
トヨタモビリティパーツの共同配送概要
「今回、TMPがドライバー不足やCO2削減をはじめとする環境保全などの課題を背景に、自動車メーカーの垣根を越えた補修用部品・用品の共同配送の検討を促進する中で、部品の配送管理システムとして導入することになった」とモバイルソリューション事業部の里平利彦主幹は話す。
TMPは全国33社のトヨタ部品共販とタクティーが統合し、2020年4月に発足。修理部品や用品を企画・販売、配送などを手がけている。同年6月からダイハツ工業やSUBARU(スバル)などと整備部品の共同配送を順次開始しており、その配送を効率化するためにパナソニックの「配送見える化ソリューション」を導入。まず栃木支社(栃木県壬生町)から稼働を開始し、22年4月から全国展開を進めている。
同ソリューションはもともとベルギーのゼテス・インダストリーズ社が開発したもので、1984年の創業以来、サプライチェーンのソリューションを手がけてきた。世界30カ国以上でビジネスを展開し、グローバルトップ500社のうち、80%の企業が何らかの形でゼテス社と関わっているそうだ。そのゼテス社をパナソニックが2017年に買収した。
タフブック画面(ドライバー端末)
当時、パナソニックは「タフブック」という端末を販売していたが、売り切りの商売だけでなく、端末にソフトを組み合わせたビジネスを模索していた。そこで、ゼテス社が提供していた配送現場プロセスの可視化システム「ゼテス クロノス」に目をつけ、買収することにしたわけだ。
食品物流の現場にもソリューションを提供
これによって、ドライバーが持つタフブックと運行管理者のPCをクラウドサーバーで相互に連携できるようになり、配送状況をリアルタイムで把握することが可能になった。「アナログの現場の情報をデジタルに変換することをゼテスが担っている」とモバイルソリューション事業部の計盛大課長は述べ、「ビジネスモデルとしては、パナソニックが狙っているリカーリングビジネスで売上高の4割を占めている」そうだ。
しかし、今回の導入を巡ってはいろいろと試行錯誤があった。共同配送では、各社が使用しているシステムが違い、ラベルなど現場運用が異なるため目視検品の運用となり、ミスに繋がりやすくなることが課題だった。そこで、各社のシステムとラベルをトヨタ標準出荷ラベルに統一することで一元管理を可能にし、他社の部品も自社配送管理システムで管理できるようにした。
里平利彦主幹(左)と計盛大課長
その結果、運行管理者は配送状況についての問い合わせにすぐ応えられるようになり、またドライバー端末でバーコードの読み取りによってデジタル化したことで誤配送の防止にも役立っている。
「物流関係のお客と話していると、ドライバー不足の問題に対する緊迫感をひしひしと感じる。人手不足の対策をシステムで補うことがさらに重要になってくると思う。当社は今後も、ゼテス社の技術力と、サプライチェーンの現場で培ってきた技術力、サービス・サポート力を組み合わせ、物流現場の課題解決と新たな価値提供を目指していく」と里平主幹は話す。
TMP以外にも、食品や酒類、コンビニエンスストアなどの物流の現場ですでに配送見える化ソリューションが導入されているそうだ。