NEXT MOBILITY

MENU

2024年12月16日【事業資源】

デンソー、2024年度省エネ大賞で9年振りの経済産業大臣賞

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

デンソーは12月16日、「技術開発で生み出す新エアー洗浄技術の確立」の経済産業大臣賞を筆頭に3案件が「2024年度省エネ大賞」を受賞したことを明らかにした。表彰式は、2025年1月29日に東京ビッグサイトで行われる。

 

「省エネ大賞」は、一般財団法人省エネルギーセンターが主催し、企業や自治体などに於ける優れた省エネ活動や、技術開発などによる先進型省エネ製品などを表彰するもの。

 

今年度の省エネ大賞では、デンソーとして「経済産業大臣賞」、「資源エネルギー庁長官賞」、「省エネルギーセンター会長賞」の計3賞を受賞。これにより、当社の省エネ大賞の受賞は2009年から15度連続となった。また、最上位の経済産業大臣賞は9年ぶりの受賞、そしてデンソーとして初めて省エネ事例部門で同時に3案件の受賞となった。

 

———————————————

 

受賞事例・製品の概要は以下の通り

 

1. 〈省エネ事例部門産業分野 経済産業大臣賞〉
「技術開発で生み出す新エアー洗浄技術の確立」
(メカトロニクスシステム製造部/大安製作所)
大量の圧縮エア―を消費するエアー洗浄工程*に着眼し、電動ブロワー1台で吹き付けと吸引を同時に担うことのできる洗浄技術の開発によって、従来の洗浄方法に比べて90%のCO2排出量削減を実現した省エネ活動。

 

具体的な取り組みとして、①電動ブロワーが生み出す低い圧力の風でも駆動するエジェクタを独自で開発、②開発したエジェクタを組み込んだシンプルな“吹き付け・吸引一体のエアー洗浄システム”を低コストで実現した。

 

このシステムを製造部内の12の工程へ導入した結果、原油換算3.9kL/年のエネルギー削減を達成し、さらに社内全体・取引先へ展開していくことで、最大7,567kL/年の削減を見込んでいる。

 

小型部品を取り扱うことが多いメカトロニクスシステム製造部の工場では大風量で機械サイズも大きく高価な既存製品は適さない状況の中、省エネ活動のやり切りにこだわり、社内の知見を生かしながらブロワーに見合った最適な形状のエジェクタを開発した点が高く評価された。
*エアー洗浄工程:高速の風を対象に当てて異物除去や乾燥を行う“吹き付け”と、除去した異物を空気と共に吸引回収する“吸引”を実施する工程

 

2.〈省エネ事例部門CGO・企業等分野 資源エネルギー庁長官賞〉
「荷主が主体となったフルトレ・DX 技術の有効性向上による物流省エネ活動」
(生産管理部/本社)
デンソーは取引先と当社、お客さまを繋ぐ物流網において、サプライチェーン全体のリードタイム短縮、物流の効率化を行うことで省エネ、CO2削減を推進している。そうしたなかで主に以下の取り組みによる輸送距離削減によって、原油換算で1,256kL/年、CO2排出量で2,514t/年の低減を達成した。

 

また、物流の担い手不足という昨今の社会課題に対し荷主として活動を先導し、輸送会社やグループ会社などを含む幅広いパートナーと協業したことや物流業界で働く人の働きやすさに着目して労働負荷を軽減したことも評価された。

 

(2-1)フルトレーラー直接乗り入れ
車格2倍で大量輸送できるフルトレーラーは、サイズの大きさを理由に発着地が限られ一般的には中継地での通常トラックへの乗せ換えが必要となる。これを直接工場内へ乗り入れできるよう荷降ろし場のレイアウト改善や荷役時間短縮を実施し、効率的遠隔輸送の新しいモデルを確立した。

 

(2−2)配送計画の最適化に向けたDX技術の活用
自社開発の疑似量子技術「DENSO Mk-D(デンソー マークディー)」を応用し、多頻度・等間隔かつ最適な配送経路を提案できる最適化アルゴリズムを開発。またトラック荷台映像をAIに分析させることで積載率や輸送効率を向上させた。

 

3.〈省エネ事例部門 省エネルギーセンター会長賞〉
「圧縮エアーレス小型ハイブリッド式ドライエアー生成装置~専門メーカーとの共同開発~」
(エレクトロ製造部/幸田製作所)
低温検査における結露・着霜を防ぐために除湿を行うドライエアーは、これまでロスが大きい圧縮エアーを用いて生成されていたが、冷媒を使用し除湿する冷却式と、吸着材の中に大気圧の空気を通して除湿を行う吸着式を組み合わせたドライエアー装置を除湿装置メーカーのオリオン機械株式会社(オリオン機械)と新たに開発し、圧縮エアーの使用量を大幅に削減した。

 

この方式を採用している除湿装置は主に空調システム用であり、工場の生産ラインに導入するためには小型化が必要だった。デンソーとオリオン機械の知見を生かして課題をひとつひとつ解決し、装置内のローターや送風機などを小型化することで、圧縮エアーを使用する従来機とほぼ同じ設置面積で、CO2排出量を75%削減できる機器を実現した。

 

今後、エレクトロ製造部全体で装置を置き換えることで、原油換算で 938kL/年の削減を見込んでいるほか、デンソーグループ国内外の工場へも展開を進めていくことで、さらなる省エネ効果を得られる見込み。また、オリオン機械で一般販売することで、他業界のCO2削減にも貢献することが期待される。

 

———————————————

 

参考:
デンソー、疑似量子技術「DENSO Mk-D」を開発、世界で初めて500万変数規模の実問題に対応
https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2023/20230921-01/
デンソーエコビジョン2025特設サイト
https://www.denso.com/jp/ja/about-us/sustainability/environment/ecovision/

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。