水素をつくるSOECの知見を生かし、カーボンニュートラルの実現に貢献へ
デンソーは6月28日、愛知県が13の企業・自治体と連携して行う「愛知県知多市における低炭素水素モデルタウンの事業化可能性調査」に協力し、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell / 固体酸化物形水電解装置)に関する情報提供を行う。
この取り組みは愛知県が申請し、環境省の「令和6年度既存のインフラ等を活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・FS事業」に採択されたもの。なお同調査結果を踏まえ、2025年度から2028年度にかけて実証事業が開始される予定としている。
愛知県は、2030年度のCO2排出量を2013年度と比較して46%削減することを目標と定める中で、業務部門では69.2%削減、家庭部門では77.6%削減というように目標値を高く設定している。
しかし、これらの達成には再生可能エネルギー導入拡大のみならず、燃料電池の導入促進や熱分野の燃料の脱炭素化などが必要であり、現在、街中での水素利用の具体化を目指している。
そうしたなかでデンソーは、2035年のカーボンニュートラル実現を目指し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」の3つの領域で様々な取り組みを行っており、「エネルギー利用」では将来のクリーンエネルギーとして注目されている水素を「つくる技術」と「つかう技術」の開発に注力。その一環で進めているSOECの開発・実証には、デンソーが自動車部品で培ったセラミックや熱マネジメント、電動化の技術が活用されている。
今回の知多市で行われる街中に於ける水素利用の実現のための調査では、知多市の水素ステーションから公共施設や住宅などに低炭素水素を供給するモデルタウン事業の事業化可能性を調査・検証するもの。
そこで水素のサプライチェーンを構築する上で、安定的かつ低コストで水素を生成する方法が重要な課題となっており、デンソーはSOECの開発・実証に於いて、これまで蓄積してきたノウハウなど、情報提供を通じて、同調査に協力する。
なお上記記述にあるSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell)とは、セラミック膜を電解質として高温で動作し、水蒸気を電気分解して水素を製造する装置を指す。
水素製造については、他にもアルカリ液を電解質とするアルカリ水電解や、高分子膜を電解質とするPEM形水電解があるが、今回の実証で使用するSOECはそれらと比べて電解に要する電気エネルギーが少ないことが大きな特長となっている。