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デンソーは6月17日、自社内のBEVを活用したエネルギーマネジメントシステムを導入。クルマ移動とオフィスをカーボンニュートラルにする実証を開始した。
同社は、来たる2035年でのカーボンニュートラル実現を目指し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」の3つの領域から様々な取り組みを行っている。
そのひとつの「エネルギー利用」に係るカーボンニュートラルの実現では、工場等での生産活動だけに留まらず、営業車を使用したクルマでの移動、オフィス内、更には一般家庭など、社会の様々な環境下での技術開発を行っている。
そうしたなかで今実証では、BEVとの多様なエネルギー連携を想定したV2X( Vehicle to X / 電気自動車とあらゆるモノを繋げてエネルギーを利用し合う技術 )システムを導入。
より具体的には、太陽光発電装置( オンサイトならびにオフサイト )と、社有BEV、更に定置用蓄電池の間で電力を融通し合うことで、社有BEVとデンソー本社(6階建てのオフィス)の閉じた環境内に於けるカーボンニュートラルを目指す実証を行った。
特に、今回導入するV2Xシステムでは、デンソーが自動車部品開発で培った制御技術の知見や品質管理のノウハウを生かして独自開発したものを活用した。
本社の5号館受付前に、リアルタイムで電力の自家消費率や需給予測などの実証の様子が見られるサイネージを設置している。
それは自社内に設置した〝太陽光発電パネル〟、〝普通充電器〟、〝V2H-充放電器〟、〝社有BEV約20台〟〝電気自動車用蓄電池を複数台連結させた定置用蓄電池システム(電気自動車用蓄電池を活用した定置用蓄電池システム/トヨタ自動車製)〟などの他、オフサイトの太陽光発電装置も包括して構成させた。
まずは太陽光で発電した電力を、デンソー本社内の本館に供給し、昼間に余剰電力が発生する場合は、社有BEVや、定置用蓄電池に貯め、夜間に本館へ放電を行い、再生可能エネルギーの自家消費率を高める建て付けだ。
V2H-充放電器の一例、V2H-充放電器には様々なラインナップがある
今回の実証ポイントは以下の通り
今回のシステムでは多数台のBEVを社有車として導入し、実証を通じて、社有BEVの利便性とシステムの導入効果の両立を検証。将来的にはシステムの製品化を目指して、より便利で多様な組み合わせも想定しながら開発を進めていく。そんな当該実証については、以下の2点が特長となっている。
1. 本館とBEV間の効率的な電力の融通
実証では、太陽光発電による発電量と本館の電力需要の予測を行い、余剰が発生する場合はBEVの充電に活用し不足する場合は放電を行う。
この際、電力の需給変動と社有車予約システムを連携させることで、利用予約が入っていないBEVからは本社建屋に電力を供給する一方で、予約が入ったBEVは充電し、建屋とBEVの間で効率的に電力が融通される仕組みになっている。
2. BEV充電量の最適管理
従来のBEVの充電方法では、充電を開始すると満充電になるまで充電するのが一般的で、満充電の状態が続くとリチウムイオン電池が劣化し、航続距離が減少する可能性があった。
BEVを蓄電池として活用する今実証に於いて、BEVの電池性能はシステム全体の効率性の鍵を握るため、今回、充放電を最適に制御し、適切な充電量でBEVを管理することで電池の劣化を抑制する技術を開発した。実証を通じてV2Xシステムでの利用による電池劣化を検証する。
デンソーでは、「今後も、社会全体のカーボンニュートラル実現に向け、日々の生活の様々なシーンに活用の場を広げることができるソリューションを提供してまいります」と話している。