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2023年12月20日【企業・経営】

ダイハツ、車両認証試験不正での第三者委員会の報告書を公表

松下次男

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不正行為は生産終了のものを含め64車種・3エンジン、174件に

 

ダイハツ工業は12月20日、車両認証試験に関する新たな不正が行われていたとの第三者委員会の調査報告を受け、全車両の出荷を一旦停止すると発表した。不正行為はすでに生産終了したものを含め64車種・3エンジン、174件にのぼり、一部車種では安全性能が法規に適合していない可能性も判明した。

 

貝阿彌誠弁護士を委員長にした第三者委員会は4月28日の側面衝突試験の不正行為公表を機に、ダイハツが5月15日に設置していたもの。この委員会による調査報告がまとまり、同日内容を公表するとともに、記者会見を開いた。

 

これに続き、ダイハツと親会社のトヨタ自動車が今後の対応などについて共同記者会見を行った。

 

調査報告によると、不正行為は4月のドアトリム不正(海外市場向け4車種)、5月のポール側面衝突試験不正から大幅に増え、新たに25の試験項目、174件(不正加工・調整類型28件、虚偽記載類型143件、元データ不正操作類型3件)の不正行為がわかった。

 

また、こうした検証を行う中、キャスト/ビクシスジョイの側面衝突試験で「乗員救出性に関する安全性能(ドアロック解除)」が法規に適合していない可能性も判明した。

 

総じて実務や現場に精通しておらず「現地現物」の発想が欠けていた

 

対象車種はダイハツブランドに加え、トヨタ、マツダ、スバルへのOEM(相手先分ラドによる生産)供給車両も含まれており、生産・開発中の車種は国内28車種・3エンジン、海外16車種にのぼる。生産終了車種は20車種・3エンジン。不正行為は1989年から認められ、全体として2014年以降から増加傾向という。

 

新たに見つかった不正行為の一部は、衝突時のエアバッグの作動試験をECUで作動(自動着火)させずに、タイマーで着火させたケースや歩行者頭部及び脚部保護試験で衝突速度が法規の基準を超えていた試験速度の改ざん。タイヤ空気圧の虚偽記載、助手席加速度データの差し替えなどだ。

 

第三者委員会はこうした問題が発生した原因について「過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー」「現場任せで管理職が関与しない態勢」「ブラックボックス化した職場環境」「法規の不十分な理解」「コンプライアンス意識の希薄化」などと分析。

 

不正事案の多くは基準値不適合を適合させようとしたものでなく、適合いかんに関わらず「早く試験を通過させる」「不合格は許されない」ことに主眼が置かれ、業務を行った結果との見方を示した。

 

貝阿彌委員長はこうした事態に陥った要因について記者会見で「不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題」や企業風土を指摘した。管理職も実務や現場に精通しておらず「現地現物」の発想が欠けていたと話す。

 

奥平総一郎社長は「すべては経営陣に責任がある」と謝罪

 

これを踏まえ、「経営幹部から従業員に対する反省と出直しの決意表明」や「硬直的な“短期開発”の開発・認証プロセス見直しなどの再発防止を求めた。

 

これに続いて行われたダイハツとトヨタの共同記者会見では、まずダイハツの奥平総一郎社長が「すべては経営陣に責任がある」と謝罪したうえで、再発防止に向け企業風土、組織改革に取り組む考えを示した。

 

経営刷新については、「まず再発防止の方向性を示す」ことが現経営陣の役割として明言を避けた。

 

トヨタの中嶋祐樹副社長も「実態を見抜けなかった」と反省するとともに、トヨタグループで相次ぐ不正事案に改めて「コンプライアンスを徹底したい」と述べた。

 

トヨタ中嶋副社長は共同開発中も軽商用BEV発売への影響を示唆

 

不正事案と実際に法規に適合しているかどうかの判断については、ドアロック解除を除き「安全に乗り続けられることを最重点に再チェックし、社内検査ではあるが乗り続けて問題のある事象はなかった」と述べ、市販済み車両についても継続使用に問題はないとの見方を奥平社長は示した。

 

中嶋副社長もトヨタでも別途、独自に検査し「問題は見つからなかった」とした。ドアロック解除案件については改めて検査を行うとともに、国土交通省の判断などを踏まえて対応を検討する方針。

 

出荷再開の時期や業績への影響は現状、「全く不透明」と述べた。海外向け車両についても出荷を止めており、再開は各国で法規基準が異なることから「当局と相談しながら、個々に検討をすすめていくことになる」との見方を示した。

 

トヨタの小型車事業や共同開発車の影響については「まずは安心安全にクルマにお乗りいただくよう再発防止に全力で取り組む」ことが先決としながらも、中嶋副社長はトヨタ、スズキ、ダイハツの3社で共同開発する軽商用BEV(バッテリー電気自動車)発売の「日程に影響はでるだろう」との可能性を示唆した。同BEVは今年度中の発売を計画していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。