ダイハツ工業は4月28日、海外市場向け4車種に側面衝突試験の認証申請で不正行為があったと発表した。これを受けてダイハツの奥平総一郎社長、トヨタ自動車の豊田章男会長らが相次いで記者会見し、再発防止に向けてガバナンスやコンプライアンスの強化に取り組む考えを表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
対象車種はタイ、マレーシアなどで生産し、主にトヨタブランドで新興国向けに販売、輸出
トヨタの会見には佐藤恒治社長も同席。豊田会長は今回の事案について「クルマにとって最も大切な安全性に関わる問題であり、絶対にあってはならない行為だ」との認識を示したうえで、日野自動車や豊田自動織機でも不正行為が発覚していたことからトヨタグループ全体についても事業活動を再点検する意向を示した。
今回、不正行為があった4車種は「トヨタ ヤリスエイティブ」「プロドゥア アジア」「トヨタ アギヤ」、それに開発中の1車種。それぞれタイ、マレーシアが生産国で、アギヤは6月からインドネシアで生産開始する予定だった。
対象となる車種は主にトヨタとダイハツが共同開発し、トヨタブランドで新興国向けに販売する小型車など。トヨタの海外工場でも生産する。今年3月末時点で8万8123台が発売済みだ。
不正行為は車両の側面衝突試験の際に、認証する車両の前面ドア内張り部品が壊れやすいよう不正な加工を行ったもの。この行為は、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反する。
奥平社長は不正行為について今年4月の「内部通報で発覚した」と述べるとともに、独立した第三者委員会を立ち上げて事案を再調査し、再発防止に取り組む考えを示した。
不正加工は試験車両のみで、出荷済み車両は社内の再試験で基準を満たす
また、不正行為は試験車両に加工したものだが、市販(予定を含む)車両の正規品については社内で再試験結果、側面衝突試験で定められた基準を満たしていることを確認したという。
加えて、4車種以外にもすべての車両について社内調査を行ったとしたうえで、発覚したのは該当車両のみで、国内向け車両は現状、不正行為は見当たらなかったとした。
市販車の正規品は基準を満たしながらあえて加工した理由については「一回で試験をパスしたい」というプレッシャーや「より良い値を出したい」などが考えられるとの見方を示した。
正確には「第3者委員会の調査を待ちたい」とした。同個所の側面衝突試験の目的はドアを破損した際に、内張部品の破損部分が乗員に被害を及ぼさないかを試験するものだ。
不正行為が発覚した当該車両は検査の必要がない一部の国を除き出荷停止にしており、審査機関・認証当局の立会いのもと再試験を実施し、側面衝突性能が法規に適合しだい出荷を再開する予定。
一部の国を除き、該当車両は出荷を停止し、審査機関の承認が得られれば出荷を再開
トヨタは新興国向け小型車の開発に向けて、同分野が得意なダイハツと共同開発する目的で2017年に新興国小型車カンパニーを発足させた。
これを受けて、今回の車種は実務ベースの開発をダイハツが担い、トヨタの海外工場で生産し、トヨタブランドで途上国へ販売する車両の一部。それにダイハツのマレーシアの合弁会社プロドゥア向け、インドネシアの合弁会社の生産(予定)分が加わる。
このため、不正行為が発覚した車両にはトヨタとの共同開発車が含まれているが、当該箇所はダイハツが担当し、側面衝突試験もダイハツの日本国内のテクニカルセンターで実施したという。
ただし、正規部品の社内再試験にはトヨタの担当者も立ち合い側面衝突の基準を満たしていることを確認したと話す。
奥平社長はこうした不正行為が発覚した事実を重く受け止め、第3者委員会で真因を徹底的に究明し、再発防止策に乗り出すと強調した。
ダイハツの奥平社長に続き、トヨタの豊田会長、佐藤社長も記者会見し、グループのガバナンスやコンプライアンスを洗い直すと発信
その一つとして、側面衝突試験の部署が開発部隊と同一組織内にあるのも問題だとして再考する考えを示す。大半の試験部門は開発部門と分かれており、それらの試験では不正行為は見つかっていない。
トヨタもこうした事案を受け、ダイハツに続いてオンラインで記者会見を開き、徹底的に真因を究明し再発防止に取り組んでいくと強調した。
この中で、豊田会長はトヨタ自身も2009年に発生した大規模リコール問題に際し、再発防止策を徹底させるとともに、世界中にユーザーに向けて「逃げない、隠さない、噓をつかないということを約束した」と述べ、品質、安全問題に注意深く取り組んできたことを掲げた。
それにもかかわらずグループ各社でこのような問題が発生したことを重く受け止め、グループ全体でも改めて事業活動を再点検し、適正に運営できるよう取り組む考えを示した。
具体的には、佐藤社長がオペレーション関連を、豊田会長がガバナンス、コンプライアンスに関する部分を担当し、実行する方針だ。