パナソニックホールディングスの傘下事業会社であるパナソニックエンターテインメント&コミュニケーション(PEAC)は5月31日、独ライカカメラ社と包括的な業務提携を行うことで合意した。これまでの技術協業の枠組みを進化させ、共同投資、共同開発、共同マーケティングの分野まで発展させる。スマートフォンの高機能化でデジタルカメラ市場が縮小するなか、パナソニックはブランド力の高いライカと包括提携することで、マニアの間で人気のある高級デジカメの拡充を図ろうというわけだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
両社は2000年からレンズで協業を開始
「写真や映像がリアルタイムでグローバルに共有される時代の到来により、カメラはより印象的で高い表現力が求められるようになった。この新時代において、ライカとLUMIX(ルミックス)は感動を奮い立たせるような表現力を生み出し、その感動を世界中の人々と共有し、人々に新たな価値を提供するために、アライアンスを組んだ。『L2 Technology(エルスクエア・テクノロジー)』はそのシンボルだ」とPEACの山根洋介副社長は今回のライカとの包括提携について説明する。
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションの山根洋介副社長
「L2」とは、「LEICA」と「LUMIX」の2つのLを表しており、両社の協業によって生まれる新たな技術やソリューションに「L2 Technology」と冠し、今後、両社のマーケティング活動などで展開していくそうだ。
ライカカメラ社については、詳しく説明するまでもないが、カメラファンの間では有名な企業で、カメラ製品のほか、スポーツオプティクス製品をグローバルに展開するプレミアム企業だ。本社をドイツ・ヘッセン州のウェッツラーに置き、ポルトガルのヴィラ・ノヴァ・デ・ファマリカンに第2工場を持つ。
卓越した品質の製品を作り続けた伝統と、ドイツのクラフトマンシップや革新的な技術を結びついた工業デザインにより、ライカブランドは伝説と呼ばれるほどの高い評価を確立している。また、写真界の発展に寄与する活動として、世界各地に展開するライカギャラリーやライカアカデミーに加えて、世界で最も権威のある国際写真コンテストの一つである「ライカ・オスカー・バルナックアワード」を主催するなど、さまざまな文化活動も行っている。
そんなライカと2000年8月、パナソニックはデジタル・AV機器のレンズに関する業務提携を行って協業を開始。翌2001年には、デジタルカメラ分野に業務提携を拡大した。その後、2018年にライカ、パナソニック、シグマの3社による「Lマウントアライアンス」を結成し、ライカのレンズ規格に対応するカメラを展開してきた。そして、今回、さらに提携範囲を拡大しようとなったわけだ。
共同開発した新技術を両社のカメラに
「私たちは長年、ビジネスパートナーとして信頼し合い、協業を進めてきた。両社の強みを掛け合わせ、L2 Technology を生み出していくことは、われわれの協業の第一歩。現在のカメラ市場の課題に対応していくためには、ここの枠組みに籠もることなく、将来のためのソリューションを共同でつくり上げていく能力を深めていくことが重要だと思う」とライカカメラ社のマティアス・ハーシュCEOは話し、「両社で創造性に富むイメージングの新時代をつくり上げていく」と強調した。
ライカカメラのマティアス・ハーシュCEO
両社はカメラやレンズ製品に組み込まれる新たな技術への投資を共同で行い、共同で開発したプラットフォームやキーテクノロジーをお互いのカメラ製品に取り入れるなどシナジーを発揮し、さらなる商品力の強化を図る。さらに、ライカとルミックスは、クリエイティブなカメラユーザーに向け、新たな可能性を切り開くL2 Technologyを両社のマーケティング活動にも展開していく。
「今回の広範囲な提携は間違いなくイメージング事業の発展につながる大きな転機であり、パナソニックホールディングスにとっても非常に楽しみなことだ。私個人としてもL2 Technologyが搭載された新しいルミックスを使い始める日が待ち遠しい」とパナソニックホールディングスの楠見雄規CEO。
現在、パナソニックのデジカメの世界シェアは数%で、ランキングに名前も出ずにその他として扱われている。なにしろ上位3社、キヤノン、ニコン、ソニーで約90%のシェアを占めているのだ。その中にパナソニックが食い込んでいくというのはいくらなんでも難しいだろう。パナソニックとしては、今回の包括提携によって、高級デジカメを拡充し、まずはルミックスのブランド力を高めていこうというわけだ。