量子コンピュータやAIクラウドプラットフォームを開発・提供するグルーヴノーツは日産自動車と自動車の組立工程に於ける作業編成立案の自動化に取り組んでおり今回、量子アニーリング技術を用いた組立作業の割当て最適化手法に係る共著論文が「2024年度 人工知能学会全国大会」で採択されたという。5月29日の全国大会で論文発表が行われる見込み。
今日、自動車工場の一般的な組立ラインでは、ベルトコンベア上の車体に対して、それぞれの持ち場を担当する組立作業員により、部品の組み付けなどの各種作業が行われている。
組立作業員に作業を割り当てる作業編成作業では、作業内容の車種ごとの違いや各作業場所にある設備との兼ね合い、作業の順序関係、所要時間(タクトタイム)、複数の作業場所を担当する組立作業員の移動など、様々な制約を考慮しなければならず、熟練したスキルや経験が要求される。
更に生産量など変動に対しても無理なく安全に作業が行われ、なおかつ生産性向上を阻害しないためには、作業配分の偏りをなくし平準化された編成の立案が肝要となる。
一つのラインあたり150もある作業を20名程度の組立作業員に割り当てるとしても、こうした多様な要件を織り込んで作業編成表を作成するには、多大な時間と労力が必要とされ、またその技術継承が予てより課題として挙げられていた。
そこで日産は、組立作業編成のデジタル化に向けて、組合せ最適化問題の解法を得意とする量子アニーリング技術を取り入れながらグルーヴノーツの「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」によるシステム構築の取り組みを開始した。
当該の論文テーマなどは以下の通り
【テーマ】
「量子アニーリングを活用した順序制約を含む大規模な自動車組立作業割り当て最適化手法の開発」
【執筆者】
日産自動車株式会社 守屋岳志氏、岡田欣也氏、斎田勝枝氏、古市浩貴氏
日産自動車九州株式会社 高橋裕司氏
株式会社グルーヴノーツ 吉村敏志
【概要】
組立ラインのうち部品を組み付けるトリム工程を対象に、量子アニーリング技術等を用いて、工程上の基本制約に基づき組立作業員に各作業を割り当てる最適化計算の検証をおこなった。計算結果は、各制約との整合性を欠くことなく、実際の方法で組立作業編成を決定するより、組立作業員ごとの作業量が平準化されていることなどから、その有効性を確認した。
【2024年度 人工知能学会全国大会(第38回)】
・日程:2024年5月28日(火)~31日(金)
・会場:アクトシティ浜松(静岡県浜松市)+ オンライン
・主催:一般社団法人 人工知能学会
・URL:https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2024/
【今後の展望】
研究成果からは、現場の業務上の課題や改善点など多くの洞察も得られた。日産とグルーヴノーツは現在、効果的な現場運用に向けて、対応する制約の追加や業務改善につながる機能の追加などをはじめ、作業編成システムの継続的な改善を進めている。
今回の割当て最適化手法は実用的な拡大性があり、多くの組合せ最適化問題のある自動車生産準備などでの活用が期待される。