
BYDは、EVの充電速度をガソリン車の給油速度と同等にする「油電同速」の実現に向け、新プラットフォーム「スーパーeプラットフォーム(Super e-Platform)」を発表した。
このプラットフォームは、1秒あたり2kmの航続距離に相当する超高速充電を行う「フラッシュ充電」を実現し、5分間で最大400km分の充電を可能とすることで、EV充電に関するこれまでの課題を大幅に改善するという。
スーパーeプラットフォームの主な技術革新
(1)世界初の量産乗用車向け「全域キロボルト高電圧アーキテクチャ」
スーパーeプラットフォームは、世界初の量産乗用車向け「全域キロボルト高電圧アーキテクチャ」を採用。バッテリー、モーター、電源システムなど、車両全体で最大1,000V級の高電圧に対応し超高速充電が可能となる。
(2)「フラッシュチャージバッテリー」で最大1,000Aの充電電流と10Cの充電レートを実現
新たに導入した「フラッシュチャージバッテリー」は、正極から負極まで超高速イオンチャネルを備え、最大1,000Aの充電電流と10Cの充電レートを実現したという。これにより、従来のEVバッテリーよりも大幅に高速な充電を可能にする。
(3)SiC(シリコンカーバイド)パワーチップの採用
BYDは業界初となる量産型自動車用の「SiCパワーチップ」を開発。これにより、最大1,500Vの高電圧環境下で効率的な電力制御が可能となったとしている。量産車としては最高水準の1メガワット(1,000kW)の充電出力を達成し、1秒あたり2kmの航続距離に相当する充電を実現している。
(4)最高速度300km/h超を達成する高性能モーター
スーパーeプラットフォームに搭載されるモーターは、単体で最大580kWの出力を発揮し、最高回転数30,000rpmを実現。これにより、中国市場向けの「HAN L(ハン エル)」と「TANG L(タン エル)」では、最高速度300km/h超を達成している。
中国全土に4000ヵ所以上のメガワット級フラッシュ充電ステーションを展開
BYDは、スーパーeプラットフォームの性能を最大限に活かすため、業界初となる「フル液冷メガワット級フラッシュ充電ターミナルシステム」を開発。このシステムは、最大1,360kWの出力を可能にし、既存の充電インフラをアップグレード可能な「デュアルガン充電」技術を採用しているという。
またBYDは中国全土に4,000ヵ所以上のメガワット級フラッシュ充電ステーションを展開する計画。これにより、EVユーザーがガソリン車並みの利便性を享受できる超高速充電環境を整備し、充電に対する不安を解消することを目指すとしている。
なお今後の展望として同社は、スーパーeプラットフォームとメガワット級充電インフラの組み合わせにより、EVの普及をさらに加速させ、中国が世界の電動化をリードする役割を強化していく考えとした。
BYD会長兼社長の王伝福は、「EVユーザーの充電に対する不安を完全に払拭するためには、ガソリン車並みの補給スピード、すなわち油電同速を目指すことが重要」と述べ、今後の技術革新への意欲を示した。なお 「スーパーeプラットフォーム」は、中国国内販売モデルに搭載予定で、現時点では輸出仕様には適用されないと結んでいる。