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2024年10月11日【事業資源】

ブレンボ、サスペンション大手メーカーのオーリンズを買収

坂上 賢治

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マテオ・ティラボスキ、ブレンボ執行役員会長(Matteo Tiraboschi, Brembo Executive Chairman)

 

ブレンボ(Freni Brembo S.p.a.)は10月11日 (東部標準時・米国発)、オーリンズ社(Öhlins Racing AB)と提携して自動車市場向けの製品ラインを拡大。モビリティ産業に於けるソリューションプロバイダーとしての自社の立ち位置を強化することを明らかにした。( 坂上 賢治 )

 

より具体的には2022年以降、米アポロ・グローバル・マネジメント社(Apollo Global Management, Inc.)が支援してきたテネコ社(Tenneco Inc.)を介して同社傘下にあるオーリンズ・レーシングの株式の100%を取得する。今回オーリンズ株を譲渡するテネコは、自動車アフターマーケット向け(自動車、商用トラック、オフハイウェイ、モータースポーツ)製品の設計、製造、販売を担う国際企業だ。

 

買収価格は4億500万米ドル(同日の為替レートで約3億7000万ユーロに相当)であり、同取引は規制当局の承認を条件としていることから買収完了は2025年初頭になる見込みだ。

 

なおこの取引は1961年にイタリアで設立され、現時点で世界15か国に16,000人以上の従業員を抱え、32の生産・事業拠点、9つの研究開発センターを擁し、2023年の売上高38億4,900万ユーロに達するブレンボにとっても史上最大の買収となり、この取引を介して自社グループのブランドポートフォリオが一層強化される。

 

ちなみに上記のアポロ・グローバル・マネジメント社は、米投資銀行ドレクセル・バーナム・ランバートの元幹部が1990年に創業した米国ニューヨークを本拠とする大手プライベート・エクイティ・ファンド(投資ファンド)。

 

またオーリンズは、MotoGP、F1、スーパーバイク、NASCARなどでの著名なサプライヤー企業として、国際的なレーシングシーンに於いて、孤高の存在感を誇っている。

 

併せてオーリンズのレーシング部門は、クローズドコースと公道の両方に対応できる次世代のメカトロニックサスペンションの技術開発に取り組んでおり、同社を手中に収めることは、ブレンボにとって国際的な総合モビリティソリューション企業を目指す自社技術戦略の強化を意味している。

 

 

今回の株式取得についてブレンボ会長のマテオ・ティラボスキ氏は、「この度、当社は自動車市場向けの製品のポートフォリオを拡大する絶好の機会を得て、オーリンズ・レーシングを当社グループに迎え入れます。

 

オーリンズは1976年に設立され、スウェーデンのウプランド・ヴェスビー(ストックホルム)に拠点を置き、過去に於いて数々の輝かしい足跡を残しています。企業経営面でも、スウェーデンとタイにある2つの生産施設、スウェーデンとタイにある2つの研究開発センター、米国、ドイツ、タイ、スウェーデンの4つの流通・試験支社で約500人の従業員を雇用しています。

 

加えてオーリンズのサスペンションに係る主要技術は、精度、性能、革新性等で、自動車産業界で良く知られており、OEMとアフターマーケット双方の市場に於いてショックアブソーバー、フロントフォーク、ステアリングダンパー、それと関連するソフトウェアなどで幅広い製品を有しています。

 

また同社はMotoGP、F1、スーパーバイク世界選手権、NASCARなどに製品を供給しており、主要なモータースポーツ分野で確固たる地位を築いています。そんなオーリンズは、2024年に売上高1億4,400万米ドル、調整後EBITDAマージンの予想でも21%~22%の実績を記す見込みです。

 

従ってモータースポーツシーン並びに国際マーケットの双方に於いて安安定した実績を備えるオーリンズ・レーシングは、当社が取得すべき企業として相応しいブランドであり、同買収により当社は、保有技術並びにブランド戦略の双方で相乗効果を高められ、将来のお客様に世界最高峰のソリューションを提供するという当社の戦略が、より加速化されることになります」と述べた。

 

2024年1月17日、テネコのマーク・マカリスター副社長と握手するオーリンズのトム・ヴィッテンシュレーガーCEO(写真向かって右側)

 

これを受けてオーリンズでCEOを務めるトム・ヴィッテンシュレーガー氏は、 「今後は、ブレンボと力を合わせることで、新たな成長の機会を切り開き、双方の強みと資産を活用してイノベーションを活性化させ、お客様並びに従業員へ更なる価値を提供できることを嬉しく思います」と応えた。

 

一方、テネコでCEOを務めるジム・フォス氏は、「ブレンボはオーリンズを次のレベルに引き上げるのに適したパートナーであると確信しています。

 

テネコのジム・フォスCEO

 

また今回の売却は、オーリンズとその従業員が、未来のモビリティ市場で継続的な成功を収められるだけでなく、長期ビジョンの実現に向けて当社(テネコ)の事業ポートフォリオを合理化し、バランスシートを強化する戦略にも役立ちます」と語った。

 

先の通りオーリンズ・レーシングの買収は、ブレンボのモビリティ&モータースポーツ分野への投資を継続・強化する。実際、ブレンボは2021年にデンマークのSBS FrictionとスペインのJ.Juanを買収し、モーターサイクル領域の事業ポートフォリオを拡充。

 

今年2月には、タイで二輪向けブレーキシステム専用の新生産拠点を新設して同市場への参入を発表。軽合金ホイールの設計と製造を担ってきたマルケジーニを手中に収め、グループに於ける二輪車事業の総収益を約13%にまで高めてきている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。