マテオ・ティラボスキ、ブレンボ執行役員会長(Matteo Tiraboschi, Brembo Executive Chairman)
ブレンボ(Freni Brembo S.p.a.)は10月11日 (東部標準時・米国発)、オーリンズ社(Öhlins Racing AB)と提携して自動車市場向けの製品ラインを拡大。モビリティ産業に於けるソリューションプロバイダーとしての自社の立ち位置を強化することを明らかにした。( 坂上 賢治 )
より具体的には2022年以降、米アポロ・グローバル・マネジメント社(Apollo Global Management, Inc.)が支援してきたテネコ社(Tenneco Inc.)を介して同社傘下にあるオーリンズ・レーシングの株式の100%を取得する。今回オーリンズ株を譲渡するテネコは、自動車アフターマーケット向け(自動車、商用トラック、オフハイウェイ、モータースポーツ)製品の設計、製造、販売を担う国際企業だ。
買収価格は4億500万米ドル(同日の為替レートで約3億7000万ユーロに相当)であり、同取引は規制当局の承認を条件としていることから買収完了は2025年初頭になる見込みだ。
なおこの取引は1961年にイタリアで設立され、現時点で世界15か国に16,000人以上の従業員を抱え、32の生産・事業拠点、9つの研究開発センターを擁し、2023年の売上高38億4,900万ユーロに達するブレンボにとっても史上最大の買収となり、この取引を介して自社グループのブランドポートフォリオが一層強化される。
ちなみに上記のアポロ・グローバル・マネジメント社は、米投資銀行ドレクセル・バーナム・ランバートの元幹部が1990年に創業した米国ニューヨークを本拠とする大手プライベート・エクイティ・ファンド(投資ファンド)。
またオーリンズは、MotoGP、F1、スーパーバイク、NASCARなどでの著名なサプライヤー企業として、国際的なレーシングシーンに於いて、孤高の存在感を誇っている。
併せてオーリンズのレーシング部門は、クローズドコースと公道の両方に対応できる次世代のメカトロニックサスペンションの技術開発に取り組んでおり、同社を手中に収めることは、ブレンボにとって国際的な総合モビリティソリューション企業を目指す自社技術戦略の強化を意味している。
今回の株式取得についてブレンボ会長のマテオ・ティラボスキ氏は、「この度、当社は自動車市場向けの製品のポートフォリオを拡大する絶好の機会を得て、オーリンズ・レーシングを当社グループに迎え入れます。
オーリンズは1976年に設立され、スウェーデンのウプランド・ヴェスビー(ストックホルム)に拠点を置き、過去に於いて数々の輝かしい足跡を残しています。企業経営面でも、スウェーデンとタイにある2つの生産施設、スウェーデンとタイにある2つの研究開発センター、米国、ドイツ、タイ、スウェーデンの4つの流通・試験支社で約500人の従業員を雇用しています。
加えてオーリンズのサスペンションに係る主要技術は、精度、性能、革新性等で、自動車産業界で良く知られており、OEMとアフターマーケット双方の市場に於いてショックアブソーバー、フロントフォーク、ステアリングダンパー、それと関連するソフトウェアなどで幅広い製品を有しています。
また同社はMotoGP、F1、スーパーバイク世界選手権、NASCARなどに製品を供給しており、主要なモータースポーツ分野で確固たる地位を築いています。そんなオーリンズは、2024年に売上高1億4,400万米ドル、調整後EBITDAマージンの予想でも21%~22%の実績を記す見込みです。
従ってモータースポーツシーン並びに国際マーケットの双方に於いて安安定した実績を備えるオーリンズ・レーシングは、当社が取得すべき企業として相応しいブランドであり、同買収により当社は、保有技術並びにブランド戦略の双方で相乗効果を高められ、将来のお客様に世界最高峰のソリューションを提供するという当社の戦略が、より加速化されることになります」と述べた。
2024年1月17日、テネコのマーク・マカリスター副社長と握手するオーリンズのトム・ヴィッテンシュレーガーCEO(写真向かって右側)
これを受けてオーリンズでCEOを務めるトム・ヴィッテンシュレーガー氏は、 「今後は、ブレンボと力を合わせることで、新たな成長の機会を切り開き、双方の強みと資産を活用してイノベーションを活性化させ、お客様並びに従業員へ更なる価値を提供できることを嬉しく思います」と応えた。
一方、テネコでCEOを務めるジム・フォス氏は、「ブレンボはオーリンズを次のレベルに引き上げるのに適したパートナーであると確信しています。
テネコのジム・フォスCEO
また今回の売却は、オーリンズとその従業員が、未来のモビリティ市場で継続的な成功を収められるだけでなく、長期ビジョンの実現に向けて当社(テネコ)の事業ポートフォリオを合理化し、バランスシートを強化する戦略にも役立ちます」と語った。
先の通りオーリンズ・レーシングの買収は、ブレンボのモビリティ&モータースポーツ分野への投資を継続・強化する。実際、ブレンボは2021年にデンマークのSBS FrictionとスペインのJ.Juanを買収し、モーターサイクル領域の事業ポートフォリオを拡充。
今年2月には、タイで二輪向けブレーキシステム専用の新生産拠点を新設して同市場への参入を発表。軽合金ホイールの設計と製造を担ってきたマルケジーニを手中に収め、グループに於ける二輪車事業の総収益を約13%にまで高めてきている。