独ロバート・ボッシュGmbHは現地時間の4月26日、米カリフォルニア州ローズビルに本拠を置くチップメーカーTSIセミコンダクターズ( TSI Semiconductors )の資産を取得する方針を発表した。( 坂上 賢治 )
この買収によりボッシュは、EV市場の拡大が必至の重要市場に於いてSiCチップの製造能力を確立させると同時に、世界規模での半導体製造事業拡大を視野に据えたことになる。
なおボッシュは同投資に関し、規制当局からの承認条件として取引の財務上の詳細を開示しないことに合意している。
今回の買収先であるTSIセミコンダクターズは250人の従業員を擁し、特定用途向け集積回路 (ASIC) の開発・製造を手掛ける当地の受託製造ファウンドリーだ。
TSIセミコンダクターズは現在、主にモビリティ、テレコミュニケーション、エネルギー、ライフサイエンス業界向けの200ミリ シリコンウエハーを開発・製造しており、他方で炭化ケイ素チップの開発事業を拡大している。
ボッシュは今買収に伴い、今後数年間で米ローズビルのTSIセミコンダクターズの拠点に15億米ドル以上を投資し、最先端の製造施設へと刷新していく構え。これにより来たる2026年からシリコンカーバイド (SiC) をベースにした200ミリウェーハの製造を開始する意向という。
同買収と一連の投資施策について、ボッシュ取締役会会長のステファン ハルトゥング博士は、「このTSIセミコンダクターズの買収により、ボッシュの国際的な半導体製造ネットワークを強化し、我々グループは、新しい製造能力を獲得することになります。
このローズビルの拠点は1984年から稼働しており、40年近くに亘って半導体製造に係る専門知識を蓄積して来ました。この専門知識をボッシュの半導体製造ネットワークに統合する予定です。
そんなローズビルでは今後、EV用のSiC チップをより大規模に製造出来るようになります。より具体的には来たる2026 年から、最初のSiC チップ製造の原資となる200ミリウエハーを製造します。
翻ると、そもそもボッシュは、早い段階でSiC チップの開発と生産に投資して来ました。2021年以降は、独自開発為た半導体製造プロセスを用いて、シュトゥットガルト近くのロイトリンゲン拠点で半導体チップを大量生産していますが、将来的にはこのロイトリンゲンでも200ミリウェーハを製造する予定です。
そのために2025 年末までにロイトリンゲンのクリーンルームスペースを約35,000 平方メートルから44,000平方メートル以上に拡張します。
SiCチップはEVにとって最重要コンポーネントであり、当社はこの取り組みを拡大させることで、各国ででのプレゼンスを強化していきます」と述べた。
またボッシュ取締役会役員でモビリティ・ソリューション・ビジネス セクターの会長を務めるマルクス・ハイン博士は、「私たちは、半導体の幅広い専門知識を持つTSIセミコンダクターズが当社グループに加わることを嬉しく思います。
今日、自動車産業向けチップの需要は依然として高いままです。ボッシュは、2025 年までに、すべての新車に平均25個のチップが組み込まれると予想しています。
これに伴いSiCチップ市場も急成長しており、その速度は年平均30%のペースで成長しています。この成長の主な原動力は、世界的なEV需要の拡大にあります。
SiCチップは最大50%少ないエネルギーで稼働するため、EVの航続距離延長と充電プロセスの効率化を推し進め、当該車両は1回のバッテリー充電で6%長い距離を走行できます」と語っている。
一方、TSIセミコンダクターズのオデッド・タルCEOは、「この投資施策より我々は、重要な国際市場でSiCチップの製造能力拡大を果たす共に、EV用のSiCチップ製造を伸張させることで、半導体製造に於いて国際戦略を大きく拡大していくことになります」と結んでいる。