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2024年5月21日【事業資源】

ボッシュ日本、前年比2割超の売上高を背景に更なる飛躍へ

坂上 賢治

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ボッシュ・ロゴ

 

ロバートボッシュの日本法人は5月21日、2023年度の日本国内に於ける第三者連結売上高が前年比23%増の約4,200億円(約27.9億ユーロ)になったと発表した。また日本国内に於けるボッシュ・グループの従業員数は2023年12月31日現在、約6,400名であることを明らかにした。

 

 

2023年、日本の自動車生産台数は新型コロナウイルスのパンデミックや半導体不足による3年間にも及ぶ市場の落ち込みから力強い回復を見せ、昨年の自動車生産台数は900万台と前年比15%増加した。

 

そんな経済環境を踏まえてボッシュ株式会社代表取締役社長のクラウス・メーダー氏は自社の決算発表で、「ボッシュの売上高は前年比23%増と、日本の自動車市場を大きく上回る成長を遂げました。

 

また2024年の売上高は、国内に於ける経済成長が緩やかで、依然として課題の多い年になるとの見通しから、微増にとどまると見込んでいます。

 

そうした経済環境のなかでも当社は、モビリティ事業の再編や横浜への本社移転を機に、日本にお於ける組織内の連携を進め、開発体制を一層強化します。これからもボッシュは、お客様の要望に柔軟に応え、日本のモビリティ市場の発展に貢献していきます」と語った。

 

 

さて近年、モビリティ市場に於ける自動車開発のトレンドは、ソフトウェア主軸へと変化しており、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)では、ユーザーが自動車購入後も車載ソフトを更新するなど、ソフトウェア自体が車の価値を高める方向へと動く。

 

そのなかで難しくなるのは車体制御の分野となる。というのは運転者が必要とする運転機能は、快適な運転からスポーティな運転まで、停止・発進操作が多い市街地、カーブの続く山道、高速道路などの走行環境下のドライビングフィールによって大きく異なるからだ。

 

このような環境下でソフトウェア機能を確実に活かしていくためには、自動車メーカー、サプライヤー、サードパーティーをも巻き込んだ企業間の共同開発を成功させるためのエコシステムの確立が最も重要となる。

 

そこでボッシュでは上記背景から、ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなどのアクチュエーターを統合制御する車体制御の包括的なソフトウェアソリューション、ビークルモーションマネジメントの開発を進めている。

 

このビークルモーションマネジメントが大きく進化すれば、各運転機能の操作に必要な複数のアクチュエーターを総合的に制御できるため、あらゆる運転シーンに於いても安全性、快適性、効率性を高めることができると説明している。

 

実際、ビークルモーションマネジメント技術が大きく進めば、すべてのモーションソフトウェア機能をハードウェアから切り離すことが可能になるため、特定のE/Eアーキテクチャに縛られることなく、制御するアクチュエーターのタイプや数にも依存しない柔軟なソフトウェアパッケージの展開が可能になるからだ。

 

それゆえボッシュは、ビークルモーションマネジメントと並行して、新しいタイプのブレーキシステムとステアリングシステムの開発、市場投入を日本国内でも積極的に進めていく考えだ。

 

併せて急速な変化を遂げつつある世界のモビリティ市場下の日本国内事業で、当地の顧客からの独自の要求に応える体制を確立するべく同社は、横浜市都筑区に新社屋を建設して渋谷区から本社を移転する。

 

新本社には、東京・横浜エリアに点在している事業部及びグループ企業に在籍する約2,000人の従業員が集約され、今年5月末から業務が始動する。この拠点集約により、事業部やグループ企業間の連携を促進し国内の開発体制を、より柔軟かつ強化する構えだ。

 

一方で独本社を包括するモビリティ事業全体の再編を進めるべく、2024年1月にボッシュ モビリティが始動。この組織再編に伴い地域別のセクターボードも新たに設置されることになり、その結果、ボッシュ株式会社 取締役副社長のクリスチャン・メッカー氏が、ボッシュ モビリティ 東アジア・東南アジア地域(日本、韓国、ASEAN、オセアニア)セクターボードのプレジデント 兼 最高技術責任者に就任。

 

これにより、より早く柔軟な意思決定が可能となり、日本国内の顧客に対する要望に迅速に対応できるようになっている。

 

最後にボッシュは、自動運転機能の拡充を視野に生成AIの活用も強力に推進させている。その一環として、ボッシュはマイクロソフトと協力。生成AIを活用する可能性も探求している。

 

それにより生成的AIは、人、動物、物体、車両を検知できる現在の運転支援システムの機能を超えて、事故に繫がる可能性があるかどうかの判断を行い、それに応じた反応ができるようになることから道路利用者の安全性を極限にまで押し上げていくことも可能になるだろうという。従ってボッシュはテクノロジーカンパニーとして、同領域の先進技術の活用を積極的に進めていくと結んでいた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。