ロバートボッシュの日本法人は5月21日、2023年度の日本国内に於ける第三者連結売上高が前年比23%増の約4,200億円(約27.9億ユーロ)になったと発表した。また日本国内に於けるボッシュ・グループの従業員数は2023年12月31日現在、約6,400名であることを明らかにした。
2023年、日本の自動車生産台数は新型コロナウイルスのパンデミックや半導体不足による3年間にも及ぶ市場の落ち込みから力強い回復を見せ、昨年の自動車生産台数は900万台と前年比15%増加した。
そんな経済環境を踏まえてボッシュ株式会社代表取締役社長のクラウス・メーダー氏は自社の決算発表で、「ボッシュの売上高は前年比23%増と、日本の自動車市場を大きく上回る成長を遂げました。
また2024年の売上高は、国内に於ける経済成長が緩やかで、依然として課題の多い年になるとの見通しから、微増にとどまると見込んでいます。
そうした経済環境のなかでも当社は、モビリティ事業の再編や横浜への本社移転を機に、日本にお於ける組織内の連携を進め、開発体制を一層強化します。これからもボッシュは、お客様の要望に柔軟に応え、日本のモビリティ市場の発展に貢献していきます」と語った。
さて近年、モビリティ市場に於ける自動車開発のトレンドは、ソフトウェア主軸へと変化しており、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)では、ユーザーが自動車購入後も車載ソフトを更新するなど、ソフトウェア自体が車の価値を高める方向へと動く。
そのなかで難しくなるのは車体制御の分野となる。というのは運転者が必要とする運転機能は、快適な運転からスポーティな運転まで、停止・発進操作が多い市街地、カーブの続く山道、高速道路などの走行環境下のドライビングフィールによって大きく異なるからだ。
このような環境下でソフトウェア機能を確実に活かしていくためには、自動車メーカー、サプライヤー、サードパーティーをも巻き込んだ企業間の共同開発を成功させるためのエコシステムの確立が最も重要となる。
そこでボッシュでは上記背景から、ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなどのアクチュエーターを統合制御する車体制御の包括的なソフトウェアソリューション、ビークルモーションマネジメントの開発を進めている。
このビークルモーションマネジメントが大きく進化すれば、各運転機能の操作に必要な複数のアクチュエーターを総合的に制御できるため、あらゆる運転シーンに於いても安全性、快適性、効率性を高めることができると説明している。
実際、ビークルモーションマネジメント技術が大きく進めば、すべてのモーションソフトウェア機能をハードウェアから切り離すことが可能になるため、特定のE/Eアーキテクチャに縛られることなく、制御するアクチュエーターのタイプや数にも依存しない柔軟なソフトウェアパッケージの展開が可能になるからだ。
それゆえボッシュは、ビークルモーションマネジメントと並行して、新しいタイプのブレーキシステムとステアリングシステムの開発、市場投入を日本国内でも積極的に進めていく考えだ。
併せて急速な変化を遂げつつある世界のモビリティ市場下の日本国内事業で、当地の顧客からの独自の要求に応える体制を確立するべく同社は、横浜市都筑区に新社屋を建設して渋谷区から本社を移転する。
新本社には、東京・横浜エリアに点在している事業部及びグループ企業に在籍する約2,000人の従業員が集約され、今年5月末から業務が始動する。この拠点集約により、事業部やグループ企業間の連携を促進し国内の開発体制を、より柔軟かつ強化する構えだ。
一方で独本社を包括するモビリティ事業全体の再編を進めるべく、2024年1月にボッシュ モビリティが始動。この組織再編に伴い地域別のセクターボードも新たに設置されることになり、その結果、ボッシュ株式会社 取締役副社長のクリスチャン・メッカー氏が、ボッシュ モビリティ 東アジア・東南アジア地域(日本、韓国、ASEAN、オセアニア)セクターボードのプレジデント 兼 最高技術責任者に就任。
これにより、より早く柔軟な意思決定が可能となり、日本国内の顧客に対する要望に迅速に対応できるようになっている。
最後にボッシュは、自動運転機能の拡充を視野に生成AIの活用も強力に推進させている。その一環として、ボッシュはマイクロソフトと協力。生成AIを活用する可能性も探求している。
それにより生成的AIは、人、動物、物体、車両を検知できる現在の運転支援システムの機能を超えて、事故に繫がる可能性があるかどうかの判断を行い、それに応じた反応ができるようになることから道路利用者の安全性を極限にまで押し上げていくことも可能になるだろうという。従ってボッシュはテクノロジーカンパニーとして、同領域の先進技術の活用を積極的に進めていくと結んでいた。