日本のボッシュ・グループ、2023年業績で2桁増の成長を目指す
ボッシュは6月8日、オンラインで「ボッシュ・グループ年次記者会見」を開き、日本のボッシュ・グループの2023年業績見通しで2桁増の成長を見込んでいると表明した。インフォテイメントシステムなどの新規製品が寄与し、22年対前年比15%増の売り上げを達成したことから、引き続き高成長を目指す。(佃モビリティ総研・松下次男)
2023年のボッシュ・グループ年次記者会見にはクラウス・メーダー社長とクリスチャン・メッカー副社長が登壇。メーダ―社長が工場のグリーン電力化などの取り組みを述べた後、メッカ―副社長がグループの業績や展望をスピーチした。
それによるとグローバルのボッシュ・グループは2022年、売上高が前年比12%増の882億ユーロを達成し、EBIT(支払金利前税引前利益)は38億ユーロだった。
これに対し、日本のボッシュ・グループは2022年、売上高が3400億円となった。
横滑り防止装置(ESC)に加え、インフォテイメントシステムや日本で製造開始した電動ブレーキブースターの「iBooster」などの幅広い製品群が寄与し、自動車の生産台数が横ばいだったにも関わらず2桁成長を達成した。引き続き、こうした製品群が成長をけん引するとみている。
自動車関連事業を再編し、テクノロジーとソリューションをワンストップで提供
一方で、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化していることから、市場のニーズに合わせて自動車関連事業を再編し、「カスタマイズしたテクノロジーとソリューションをワンストップで提供する」と表明した。
メッカ―副社長によると、将来の車両アーキテクチャは先進運転支援システム(ADAS)、モーション、エネルギー、ボディ&コンフォート、インフォテイメントの5つの主要領域から成り、これらが個々のデバイスだけでなく、クラウドとつながり、ソフトウェアの重要性がますます高まると話す。
自動車関連事業の再編は、こうした変化に対し高度な柔軟性や領域横断的なコラボレーションが必要になると判断、実行するものだ。
事業活動では、ドライバーの操作に応じて車両の望ましい挙動を予測し、ブレーキやシャシー、ステアリング、パワートレインなどの各アクチュエーターを狙い通りに作動させる「ビークルダイナミックスコントロール2・0」を搭載した次世代ESCを2023年後半から量産開始すると公表した。
日本でも次世代ESCを搭載したプロトタイプの試乗会を女満別のテストコースで実施。これを踏まえ、複数の日本車メーカーとビークルダイナミックスコントロール2・0を搭載した次世代ESCを開発中という。
SDVの標準化を目指すモビリティ・システム・アーキテクチャを提唱
また、ソフトウェアに関連する取り組みではソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)実現に向けて、「モビリティ・システム・アーキテクチャ(MSA)」を提唱する。
SDVでは将来、自動車がインターネットとつながることで、車両購入後も車載ソフトウェアを更新し、後から新しい機能がつけられるような開発が進む。
しかし、現状は独自の規格やルールでアプリケーションソフトウェアの開発が行われていることから、それぞれ膨大な開発コストがかかり、他の自動車に応用できない、他のサービスと連携できないなどの再利用性の低さが課題と指摘する。
そこでボッシュはアーキテクチャの概念を自動車の外、クラウドまで拡張したMSAを提唱。例えば、ある自動車が道路上でスリップした際、その場所、時間などの情報がクラウド上で他メーカー車の運転手とも共有されれば、周辺を走るクルマが危険な個所を避けることが可能になる。
新本社に併設する都筑区民文化センターの施設名に「ボッシュホール」を提案
ボッシュはこうしたMSAの考えに基づいて、アプリケーションソフトウェアの設計や実装方法のオープン標準化の取り組みを促進させたいと話す。
電動化では、小型商用車向けに電気モーターとインバーターを統合した新しいドライブユニット「eDM」に生産を開始し、2022年から日本の自動車メーカーの商用モデルに搭載、供給する。
さらに複数の機能を統合した「Xin1」eアクスルについても対応を進めていると述べた。
2024年竣工予定の新本社・新研究開発施設についてはほぼ「予定どおりの進捗」と述べ、完成後は東京・横浜エリアに点在している事業部およびグループ企業を集約。開発分野についても横浜市都筑区にある既存の研究開発施設との2か所で協業、連携が進み、開発体制が強化できるとした。
また、メーダ―社長は新社屋に併設する都筑区民文化センターの施設名に「ボッシュホール」を提案していることを明らかにした。