BASFのパフォーマンスマテリアル事業本部は10月23日(独・ルートヴィッヒスハーフェン発)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor/絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)半導体のハウジング製造に適したポリフタルアミド(PPA/Polyphthalamide)を開発した。
IGBTはパワー半導体デバイスのトランジスタの一種。入力部がMOSFET構造、出力部がバイポーラ構造のトランジスタで、入力インピーダンスが高くスイッチング速度が速いというMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor/金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の特徴と、飽和電圧が低いというバイポーラトランジスタの長所を兼ね備えるのが利点だ。
またポリフタルアミド(PPA)は、テレフタル酸、イソフタル酸などのフタル酸類をモノマーとして使用したポリアミドで、一般的には分子骨格中にベンゼン環を導入する事により高強度・高耐熱を実現できる。その他、耐疲労特性、耐薬品性、成形加工性にも優れる。
今回、BASFが開発したPPA(Ultramid® Advanced N3U41 G6)は、電気自動車、高速鉄道、スマート製造、再生可能エネルギーの発電用途を視野に信頼性が求められる電子部品の需要拡大に対応するものとして半導体ハウジングに提供された。
BASFによるとUltramid® AdvancedのNグレードは、優れた化学耐性と寸法安定性により、IGBTの耐久性、長期性能、信頼性を強化し、エネルギー節約、より高い電力密度、効率向上のニーズに応える。またIGBTはパワーエレクトロニクスに於いて、電気回路の効率的なスイッチングと制御を実現すると謳われている。
去る2022年にセミクロンとダンフォス シリコンパワーの合併により誕生したパワーエレクトロニクスでグローバル技術リーダーを担うセミクロンダンフォス(Semikron Danfoss)は、既に太陽光発電および風力発電システムのインバータに組み込むSemitrans 10 IGBTの樹脂ハウジングにBASFのPPA Ultramid® Advanced N3U41 G6を採用している。
そのセミクロンダンフォスで研究・開発担当を担うヤン・グロースマン氏は、「IGBTは、特に再生可能エネルギー分野では、現代のエレクトロニクスに於ける重要な要素であり、高温環境下でも長期的な安定性と性能を維持する必要があります。
Semitrans 10は、BASFのPPAの独自の特性を生かし、性能と効率の新しいベンチマークを打ち立てました。この材料を選んだ理由は、過酷な環境でも優れた電気絶縁性を持ち、組立工程での短期的な温度ピークにも優れた耐久性を発揮するためです。
高性能材料とスマートな設計の組み合わせにより、より高速なスイッチング、低い導電損失、優れた熱管理が可能となり、パワーエレクトロニクスの重要なニーズに応えます。
現在のIGBTでは、BASFの実績あるUltradur®(PBT:ポリブチレンテレフタレート)が広く使用されています。この新しいPPAは、急速に進化するパワーエレクトロニクスの次世代IGBTの厳しい要求を満たすように設計されています。
これらのIGBTは、高温に耐え、長期にわたる電気絶縁性を提供し、湿度、ほこり、汚れなどの厳しい環境条件下でも寸法安定性を維持できる材料を必要としています。レーザー溶着性を持つUltramid® Advanced N3U41 G6は、非ハロゲン系難燃剤を使用し、高い耐熱性と低吸水性、優れた電気特性を兼ね備えています。
また、この材料は、CTI(比較トラッキング指数)が600(IEC 60112規格に準拠)という特徴があり、これによりIGBTの小型化を実現し、電力スイッチ用のこれまでの材料よりも低いクリープ距離と優れた絶縁性を提供します。UL認定グレードは、優れた電気RTI(相対温度指数)値150°Cを示します」と説明している。
これを受けてBASFでパワーエレクトロニクス担当シニアアプリケーションエキスパートを務めるヨーヘン・ゾイブルトは、「BASFのPPAコンパウンドは、グローバルで提供可能であり、サンプルの準備も整っています。
私たちの顧客志向の技術サポートと部品開発のバックアップにより、この革新的な材料がパワーエレクトロニクスの進歩に大きく貢献し、再生可能エネルギーへの世界的な移行をサポートすることを期待しています。
IGBTの製造に於いて、BASFのPPAは、射出成形後に金属ピンやクランプで半導体を組み立てるために使用されるポッティング材料と互換性があります」と結んでいる。
BASFのPPAソリューションの詳細は以下URLを閲覧されたい。https://www.ppa.basf.com/