世界的に需要は根強く、大半のメーカーが22年3月期決算は増収増益および黒字転換へ
上場自動車メーカーの2022年3月期連結決算が5月13日までに出揃った。それによると世界的に新車市場が回復し、22年3月期の連結業績は多くが増収増益や黒字転換となった。一方で、世界情勢の不安に加え、原材料費が急騰しており、2023年3月期の業績見通しは一転、減益予想や厳しい見通しが相次ぐ。(佃モビリティ総研・松下次男)
2022年3月期はコロナ禍で落ち込んでいた自動車市場が世界的に回復し、メーカーの大半がほとんどの地域で販売を伸ばした。この結果、売上高(国際会計基準の営業収益、売上収益)で二桁増を達成したところが目立った。
トヨタ自動車、ホンダ、スズキ、日野自動車が10%台の伸びを達成。三菱自動車、いすゞは大幅な増収となった。
半面で、需要はあるものの、半導体不足やコロナ禍のロックダウンに伴う部品の供給不足から、各社とも国内外の生産拠点で生産調整や操業の一時停止を余儀なくされた。
この結果、コロナ禍前の受注水準に戻しつつあったものの、車両供給が追い付かず、販売計画未達に終わったところが少なくない。生産縮小の影響を大きく受けたスバルは減収となった。
逆に、こうした生産縮小は需要がひっ迫し、在庫縮小や受注残を招くことになった。これらを背景に、米国などでは販売奨励金が大きく減少し、収益増へと寄与した。
対ドルなどで大きく円安へと動いた為替変動が重なり、営業利益を各社とも大きく伸ばす
これに販売台数増や高グレード車へのシフトなどに伴う販売構成比の改善、それに対ドルなどで大きく円安へと動いた為替変動が重なり、営業利益を各社とも大きく伸ばした。
トヨタ、ホンダは前期比30%を超える伸び、いすゞは同90%超の伸びとなるなど、4社が営業利益増を達成。
日産自動車、マツダ、三菱自の3社が営業利益、純利益とも前期の赤字から黒字転換した。
日野自は営業利益で黒字を確保したものの、認証関連損失を計上したことから、最終利益は大幅な赤字となった。
これに対し、2023年3月期の連結業績予想は新車需要が世界的に根強いことから日野を除く全メーカーが増収を見込んでいる。しかし、半導体の需給ひっ迫状態は2022年度も続くとみているほか、ここへきて原材料費が急騰するなど懸念材料も多い。
ロシアのクライナ侵攻に伴う国際情勢の変動もあり、エネルギー不安や物流費の上昇もネックとなる。
このため、トヨタ、ホンダなどは23年3月期、減益を予想。
トヨタの近健太副社長は、収益構造を変革しトヨタは毎年3000億円の原価改善に取り組んでいるが、23年3月期に見込む1兆4500億円の資材価格高騰を「単年度で解消するのは難しい」と述べ、減益予想の要因を説明した。
新たなプラットフォームや車種構成の改善などを通じて収益構造改善を進めていく考えも
ホンダの竹内弘平副社長も「値上がり分をすべてカバーするのは難しい」と述べ、新たなプラットフォームや車種構成の改善などを通じて収益構造改善を進めていく考えを示した。
日産の内田誠社長兼CEOはニッサン・ネクストの取り組みを前倒しすることで目指していた22年3月期の利益率2%をクリアーしたことを強調する一方で、23年3月期は「厳しい」環境を予想。これを乗り越えて、次の中期計画につなげたいとした。
また、日産はウクライナ情勢に伴い23年3月期にロシア事業を現時点では盛り込んでいないことを明らかにした。
スバルの中村知美社長CEOは23年3月期、生産台数「100万台にチャレンジ」し、大幅な収益増を見込むとともに、中期的にEV(電気自動車)の自社生産に踏み切ると表明。2025年をめどに矢島工場でEVの混流生産に乗り出すほか、2027年ごろに大泉工場にEV専用ラインを新設する考えを示した。
いすゞ自動車も2022年度中に小型BEVトラックの量産を開始すると表明した。
日野は認証不正問題に伴う関連車両の出荷再開の時期が不透明なため、2022年3月期決算発表段階での23年3月期の業績見通し算定が困難として公表を見送った。算定が可能となった時点で速やかに開示するとした。