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2023年8月9日【企業・経営】

自動車メーカー、2024年3月期第1四半期決算総括

松下次男

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半導体需給が改善し、増収増益が相次ぐ。車両販売もほぼ全地域で伸ばす

 

自動車メーカーの2024年3月期第1四半期(4~6月)連結決算発表が8月9日、出揃った。それによると長く続いていた半導体需給が改善し、ほぼ全地域で販売を伸ばしたことから、増収増益の好決算が相次いだ。半面、世界の最大市場である中国で日本メーカーの苦戦が目立っている。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

2024年3月期の通期連結業績予想では第1四半期の好業績や円安傾向を踏まえ上方修正したところと先行きの不透明感から期初予想を据え置くところへと分かれた。

 

トヨタ自動車は四半期決算で本業のもうけを示す営業利益がわが国企業として初めて1兆円を突破した。1兆1209億円に達し、純利益も1兆3113億円となった。売上高に相当する営業収益も10兆円を超えた。

 

他のメーカー各社も第1四半期はそろって好調となった。これまで悩まされてきた半導体需給が完全ではないものの、全般に改善してきたことから、販売台数を押し上げた。

 

特に主要市場の北米での大幅な販売台数増が目立つ。インフレ進行から米経済の先行きを懸念する見方もあるが、自動車に関しては依然、「需要が供給を上回っている」というところがほとんどで、当面、高水準の販売が続きそう。

 

このため、売れ筋モデルでは販売奨励金(インセンティブ)が低く抑えられ、商品の価格改定とあわせて北米事業が増益に大きく寄与しそう。
北米に投入したラージ商品が好調なマツダは、トヨタと合弁で立ち上げた北米工場で7月から2直操業を開始した。

 

予想以上で進むNEVシフトや値下げ競争の影響で体制見直しを迫られる

 

一方で、世界最大の自動車市場である中国で日本車メーカーの苦戦が目立つ。軒並み今年前半の販売台数が減少しており、中国市場の販売比率が高い日産自動車は1~3月4割近い落ち込みとなった。

 

日産の内田誠社長は中国市場の動きについて「ローカルブランドの新エネルギー車(NEV)が急速に拡大していることやエンジン車に対する新しい排出ガス規制の導入を見据え、激しい価格競争が起きた」ことで、影響を受けたと話す。

 

ただ4~6月は「下げ幅は小さくなり、ショールへの来店数も増えている」ことから「この勢いを維持し、上期の減少分を挽回したい」と決算会見で訴えた。

 

また、同時に発表したルノーとの資本関係を対等な立場に見直す最終契約を完了したことも日産にとっては事業に集中できる環境が整い、プラス要素となるだろう。

 

中国事業に関しては、三菱自動車の加藤隆雄社長やマツダのジェフェリー・エイチ・ガイトン最高財務責任者なども決算会見でNEVの需要が「想定以上のスピードで伸びている」との見方を示し、それぞれ現地のパートナー企業と対応策の協議を進めていることを明らかにした。

 

各社とも、現状、中国事業の撤退までの決定はしていないが、改革が必要なのは明白であり、今後、電気自動車(EV)をはじめとしたNEV対抗の品揃えをどう強化していくかが課題となりそうだ。

 

このほか東南アジアについてもインドネシアの景気低迷などから足元の販売が伸び悩んでいる。

 

2024年3月期通期見通しは据え置き、上方修正と分かれた

 

2024年3月期の通期見通しではトヨタ、ホンダ、マツダ、スバルが期初見通しを据え置き、日産、スズキ、三菱自が上方修正した。

 

ホンダは第1四半期の営業利益が通期目標である1兆円の約4割に達したが、中国事業や為替の見通しが不透明として期初予想を据え置いた。想定より円安傾向となっていることから、第2四半期発表時点で改めて精査し、反映したいとした。

 

ホンダはあわせて株主数の拡大を狙いに株式を3分割すると発表した。基準日は9月30日で、10月1日を効力発生日とする予定だ。

 

スズキはインドや欧州などで販売を伸ばしたことなどから、通期見通しを上方修正し、初の売上高5兆円を目指す。

 

商用車メーカー2社の第1四半期の連結業績では、いすゞ自動車が着実に業績を伸ばし、売上高、営業利益で過去最高を計上した一方、日野自動車は認証不正問題の影響から最終利益で赤字決算を余儀なくされた。通期見通しは両社とも期初の見通しを据え置いた。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。