半導体需給が改善し、増収増益が相次ぐ。車両販売もほぼ全地域で伸ばす
自動車メーカーの2024年3月期第1四半期(4~6月)連結決算発表が8月9日、出揃った。それによると長く続いていた半導体需給が改善し、ほぼ全地域で販売を伸ばしたことから、増収増益の好決算が相次いだ。半面、世界の最大市場である中国で日本メーカーの苦戦が目立っている。(佃モビリティ総研・松下次男)
2024年3月期の通期連結業績予想では第1四半期の好業績や円安傾向を踏まえ上方修正したところと先行きの不透明感から期初予想を据え置くところへと分かれた。
トヨタ自動車は四半期決算で本業のもうけを示す営業利益がわが国企業として初めて1兆円を突破した。1兆1209億円に達し、純利益も1兆3113億円となった。売上高に相当する営業収益も10兆円を超えた。
他のメーカー各社も第1四半期はそろって好調となった。これまで悩まされてきた半導体需給が完全ではないものの、全般に改善してきたことから、販売台数を押し上げた。
特に主要市場の北米での大幅な販売台数増が目立つ。インフレ進行から米経済の先行きを懸念する見方もあるが、自動車に関しては依然、「需要が供給を上回っている」というところがほとんどで、当面、高水準の販売が続きそう。
このため、売れ筋モデルでは販売奨励金(インセンティブ)が低く抑えられ、商品の価格改定とあわせて北米事業が増益に大きく寄与しそう。
北米に投入したラージ商品が好調なマツダは、トヨタと合弁で立ち上げた北米工場で7月から2直操業を開始した。
予想以上で進むNEVシフトや値下げ競争の影響で体制見直しを迫られる
一方で、世界最大の自動車市場である中国で日本車メーカーの苦戦が目立つ。軒並み今年前半の販売台数が減少しており、中国市場の販売比率が高い日産自動車は1~3月4割近い落ち込みとなった。
日産の内田誠社長は中国市場の動きについて「ローカルブランドの新エネルギー車(NEV)が急速に拡大していることやエンジン車に対する新しい排出ガス規制の導入を見据え、激しい価格競争が起きた」ことで、影響を受けたと話す。
ただ4~6月は「下げ幅は小さくなり、ショールへの来店数も増えている」ことから「この勢いを維持し、上期の減少分を挽回したい」と決算会見で訴えた。
また、同時に発表したルノーとの資本関係を対等な立場に見直す最終契約を完了したことも日産にとっては事業に集中できる環境が整い、プラス要素となるだろう。
中国事業に関しては、三菱自動車の加藤隆雄社長やマツダのジェフェリー・エイチ・ガイトン最高財務責任者なども決算会見でNEVの需要が「想定以上のスピードで伸びている」との見方を示し、それぞれ現地のパートナー企業と対応策の協議を進めていることを明らかにした。
各社とも、現状、中国事業の撤退までの決定はしていないが、改革が必要なのは明白であり、今後、電気自動車(EV)をはじめとしたNEV対抗の品揃えをどう強化していくかが課題となりそうだ。
このほか東南アジアについてもインドネシアの景気低迷などから足元の販売が伸び悩んでいる。
2024年3月期通期見通しは据え置き、上方修正と分かれた
2024年3月期の通期見通しではトヨタ、ホンダ、マツダ、スバルが期初見通しを据え置き、日産、スズキ、三菱自が上方修正した。
ホンダは第1四半期の営業利益が通期目標である1兆円の約4割に達したが、中国事業や為替の見通しが不透明として期初予想を据え置いた。想定より円安傾向となっていることから、第2四半期発表時点で改めて精査し、反映したいとした。
ホンダはあわせて株主数の拡大を狙いに株式を3分割すると発表した。基準日は9月30日で、10月1日を効力発生日とする予定だ。
スズキはインドや欧州などで販売を伸ばしたことなどから、通期見通しを上方修正し、初の売上高5兆円を目指す。
商用車メーカー2社の第1四半期の連結業績では、いすゞ自動車が着実に業績を伸ばし、売上高、営業利益で過去最高を計上した一方、日野自動車は認証不正問題の影響から最終利益で赤字決算を余儀なくされた。通期見通しは両社とも期初の見通しを据え置いた。