独・アウディAktienGesellshaft(AUDI AG)は9月26日、自社のインゴルシュタット工場(バイエルン州インゴルシュタット)に於いて、来年1月1日からネット・カーボンニュートラル生産を開始することを明らかにした。
アウディ本社と同一地域にあるこの工場では、来年から新型Audi Q6 e-tronシリーズの生産を開始する予定。これによりインゴルシュタットの拠点は、ブリュッセル(ベルギー、2018年)、ジェール(ハンガリー、2020年)に続き、ネットゼロエミッションで稼働するアウディの3番目の工場となる。
また生産車としてのAudi R8及びAudi e-tron GT quattroも、2020年からベーリンガーホフ工場(ヴュルテンベルク州ハイルブロン郡ネッカーズルム)で、ネット・カーボンニュートラルな手法で工場生産されている。
そもそも予てよりアウディは、Mission:Zero(ミッションゼロ)環境プログラムの一環として、来たる2025年までに、全世界の拠点でネットカーボンニュートラルを達成するという目標を設定・消化し続けており、ネッカーズルムの残り拠点と、サンホセチアパ(メキシコ)に於ける同一プログラムの消化で、ネットカーボンニュートラル(正味ゼロ化)化の最終段階を迎える予定だ。
こうした取り組みに掛かる進捗について、アウディの生産及びロジスティクス担当取締役のガード・ウォーカー氏は、「自然環境を可能な限り保護することは、当社の企業戦略の根幹となっています。
私たちは、かつてインゴルシュタット工場のエネルギー源を再生可能エネルギーに切り替えることで、ネットカーボンニュートラルな車両を生産するという目標に向けて大きな一歩を踏み出しました。
当社は、その野心的な目標を達成するために4つの柱から成るコンセプトを、以下の通り策定しています。
その最初の柱は、アウディ車の生産拠点に於けるエネルギー効率を改善することで、既に大量のCO2排出量が削減されています。
例えば2022年には、インゴルシュタットの傘下拠点で35,000メガワット時(MWh)を超えるエネルギーを節約し、5,000トン以上のCO2排出量を削減しました。
更に当社は、先のコンセプトの2番目の柱である再生可能エネルギーについても自社独自で生成し始めており、現在、インゴルシュタット工場の23,000m2の敷地に太陽光発電モジュールを設置しています。
我々は今後数年間に亘り、自らの全拠点で自らで生成するエネルギーの割合を増やし続けます。実際、本社工場では現在、そのための追加策や計画を実行中です。
続けてコンセプトの3番目にあたる柱として当社は、エネルギーの調達もネット・カーボンニュートラルな方法へと移行させている最中です。
その一例を挙げると、当社は2012年の初頭よりインゴルシュタットでグリーン電力のみを使用して車両を生産しています。それは当時のドイツ国内でも逸早い動きであり、自己で消費するエネルギー源を迅速に切り替えたことで結果、我々は自動車業界でサステナビリティ分野の先駆者となりました。
またインゴルシュタット工場には、隣接する製油所と都市廃棄物リサイクルプラントから、ネット・カーボンニュートラルな廃熱も取り出し、利用しています。
併せて同じくネット・カーボンニュートラルな熱供給を、より安定的に確保するため、大量のバイオガスも確保しています。このようにして我々は、エネルギー需要のほぼ全てを再生可能なエネルギー源で賄えるようになりました。
最後の4番目の柱は、アウディがまだ回避できていない排出量(従来のCO2排出量の最大10%)に関して、Gold Standardなどで認定されたカーボンクレジットを購入することで相殺していることです」と述べた。
加えてアウディグループで環境保護責任者を務めるDr. リュディガー レクナゲル氏は、「インゴルシュタット工場では、工場内の物流もネット・カーボンニュートラルな方法で行われています。
環境プログラムMission:Zeroの対策は、脱炭素化を超えて、水利用、資源効率、生物多様性の保護など、多角的な活動分野へも及んでいます。
そんな我々が掲げる目標は、プラスチック、水、その他の原材料などの資源のクローズドサイクルを確立させ、循環型経済を構築することです。
例えばインゴルシュタットでは、水をより効率的に使用するために、2019年から膜分離活性汚泥法(MBR:membrane bioreactor)により処理された水の供給センターを運営しています。
そのために今年、アウディはプレミアム自動車メーカーとして初めて、Alliance for Water Stewardship(AWS)に参加しました。
アウディは、2035年までに世界中の生産拠点で環境にとって重要な水の消費量を半減させることを計画しています。メキシコのサンホセチアパ工場は、2018年以来、廃水を一切出さずに車両を生産しており、水資源の責任ある利用の模範的な工場となっています。
またアウディは、Biodiversity in Good Company(ビジネスと生物多様性)イニシアチブのメンバーとして、すべての拠点で生物多様性の保護にも取り組んでいます。
ミンシュスミュンスター工場の敷地外にあるオープンスペースは、自然に近い状態を維持するように設計されています。その約17ヘクタールにも及ぶ敷地には、多種多様な動植物の生息地が造られており、これはアウディにとって、同分野に於ける環境対策のモデルケースとなっています。
加えて当社は、自社拠点の次世代開発に於いても持続可能性に注力しています。我々は、eモビリティへの移行に伴う自社のスマートプロダクション施策を推し進めるにあたり、世界的な生産ネットワークの包括的な改革に取り組んでおり、将来の〝ビジョン360ファクトリー(Vision360factory)〟と題した将来の生産について根拠を踏まえた確かなビジョンを策定しています。
このように総合的かつ持続可能なアプローチを推し進めるべく、当社は将来に向けて既存の工場の近代化・デジタル化を推し進めています。我々は先の〝ビジョン360ファクトリー〟を下敷きに、持続可能な土地利用に腐心し生産活動に於ける柔軟性と効率性を追求していきます。
その好例として昨年7月に発表したインゴルシュタット市と当社の合弁事業によるイン・キャンパス・テクノロジーパーク(in-Campus-Technology-Park)の建設では、持株会社の〝IFG AöR〟を通じて、in-campus GmbHがインゴルシュタットの東にある75ヘクタールの利用されていなかった工業用団地を再開発しました。
ここでは、特別な新しい土地を開発することなく、テクノロジーパークが建設されました。また総面積のうち15ヘクタールが、自然及び景観保護区域に指定されています。この土地は、もともと栄養分の乏しい痩せた地域でしたが、現在では草木が生い茂り、自然に近い状態の林が広がっています」と自社の取り組みの先進性を訴えた。