精密塗装工程シミュレーション開発で塗装工程の作業コストを最大30%削減へ
エンジニアリング技術をデジタル化と結び付けるABBは12月16日、オーストリアに本社を置くEngineering Software Steyr GmbH ( ESS )と、戦略的提携を結んだことを明らかにした。
その目的は自動車塗装工場のオペレーション工程を変革させ、運用コストを最大30%削減できる強力なシミュレーションツールを開発することにある。そのためにABBはESSに少数株主として出資する。出資の詳細は公表されていない。
この出資際してABBロボティクスでディビジョンプレジデントとして務めるマーク・セグーラ氏は、「塗装工程をより迅速でエネルギー効率の高いソリューションとして完成させることは、自動車産業に於ける製造のデジタル化に係るパズルの最後の1ピースです。
私たちがESSと共同開発している革新的なソリューションは、自動車の開発期間を最大1ヶ月短縮し、最大30%のコスト削減を実現します。これによりメーカーは競争力、効率性、レジリエンスを向上させることができます。
こうしたソリューションを使用することにより、年間30万台の車両を生産するメーカーは、CO2 の排出量を年間約17,000トン削減できる可能性があります(標準的なエネルギーミックスで100kWhの省エネに加え、車体1台あたり2.8kgの廃棄物とオーバーコーティングの削減により年間30万台の生産台数を想定した場合年間16,860トンのCO2削減と試算)。
そもそも一般的な自動車塗装工程は、脱脂、電着塗装からシーリング、スプレー、焼き付けまで20以上の個別の工程によって構成されています。そうした各工程では、材料の粘度、接着性、乾燥時間などの様々なパラメータが考慮されますが、これらは新モデルの量産を開始する前にテストと最適化を行う必要があります。従ってこうした各作業の実施と検証には、莫大な費用と時間が掛かっていました」と説明する。
ABBは、シミュレーション技術を公平な競争の場を提供することを目指す
次いでESSでCEOを務めるマーティン・シフコ博士は、「最適化されたイノベーションを実現するためには、適切なデジタルツールにアクセスできることが重要です。これは大企業、中小企業を問わず、すべてのプレイヤーにとって極めて重要なことです。
実際、市場にはそのようなツールが数多く存在していますが、そうしたツールの多くは高額であり規模の小さい企業にとってはデジタルの力を活用すること自体が困難です。一方で当社は、シミュレーション技術を全ての企業が利用できるようにすることで、資本の大小を問わず、公平な競争の場を提供することを目指しています。
従って当社が開発したソリューションにより、多くの企業は、素早く技術革新を手中にすると共に環境への影響を低減し、要求の厳しい業界で競争力を維持することができるです。
また今回の提携により、多くの顧客企業はABBロボティクスの自動車塗装工程に於ける幅広い専門知識や、精密なディテールを再現するインクジェット方式のビジョン制御塗装ヘッドPixelPaint、最大99%の塗装機効率を実現し、塗料や材料の使用量を削減する高塗着塗装機RB1000i-Sなどの先進的な自動化ソリューション導入による利点を十二分に活用することができるでしょう。
そのためにABBは、世界で最も普及しているロボットアプリケーション用オフラインプログラミングおよびシミュレーションツールであるABBのRobotStudio®に、ESSの技術を統合することを目指します。なお、このソフトウェアは、デスクトップ、クラウド、ARプラットフォームのいずれでも利用可能です」と結んだ。