川崎重工業は11月8日、連結子会社である〝カワサキモータース 〟について、自社が保有するの発行済株式の20%(4,000株)をカワサキモータースに売却することと、カワサキモータースが伊藤忠商事に対して第三者割当を行い、発行済株式の20%を割り当てることを、同日開催の取締役会で決議。また、同日付で各当事会社間に於いて資本業務提携に関する契約を締結したことを発表した。なお、効力発生日の来年4月1日を予定していると云う。
1.資本業務提携の目的
川崎重工では、2020年度に制定した「グループビジョン 2030」の実現に向けて、社会課題に対するソリューションの創出とそのための体制づくりや成長シナリオの構築を推進。その一環として、カワサキモータースの売上高の目標を1兆円に定めて、同社於いて様々な経営施策を実行してきたと云う。
そのようななか、川崎重工とカワサキモータースは、伊藤忠を加えた3社間に於いて、各社のリソースを活用した協業の可能性についての協議を重ねて実施。その結果、伊藤忠をパワースポーツ&エンジン事業の中長期的なパートナーとして、人材交流を積極的に進め、成長戦略の実現を共同で行っていくことを確認、今回の業務提携の合意に至った云う。
3社は今後、この提携を通じて、主力市場である世界最大規模の北米市場に於いてユーザー向けファイナンスを直接提供できる体制を整え、市場状況の変化に対する耐性を高め、販売基盤をより強固なものとすることで、カワサキモータースの成長戦略をさらに加速、強化するとしている。
なお、伊藤忠は、1960年代以降の二輪車事業の海外進出の初期段階に於いて、輸出業務・欧州販売代理店業務で協業関係にあり、カワサキモータースの事業について深い理解を有しているほか、より消費者に近い川下ビジネスを起点に成長投資ならびに事業拡大を進めており、ユーザー向けファイナンス事業を展開するなど金融会社の運営に豊富な知見・ノウハウも有しているとのこと。
川崎重工は、調達した資金をグループビジョン2030で定めた水素事業をはじめとする3つの注力フィールドへの投資にも活用。これにより成長分野への投資を加速させ、グループの持続的な成長をより早期に実現することを目指すと共に、グループの財務体質の改善、資産・資本効率の改善に充当し、適切なバランスシート構成を実現していくとしている。
2.資本業務提携の内容
(1)ユーザー向けファイナンス事業を目的とした合弁会社の設立
米国市場向けにユーザー向けファイナンス事業を目的とした合弁会社を設立し、パワースポーツ商品の購入に当たって長期分割払いのニーズが高い同市場に於いて、販売代理店や顧客に対する迅速な審査プロセスや、競争力のあるファイナンスメニューを提供。
魅力的な新規モデル導入と並行して、マーケットインの視点で質の高い金融サービスを提供していくことで、カワサキモータースの製品・サービスの更なる拡販を進め、米国でのバリューチェーンを延伸。売上の過半を占める同市場於ける顧客基盤を抜本的に強化し、競争優位性を確立する。
ユーザー向けファイナンス事業のスキーム。
(2)グローバル販売協力・物流効率化
川崎重工とカワサキモータースの人材交流や、伊藤忠商事が有するグローバル拠点を活用することにより、パワースポーツ商品のグローバルな拡販を進める。
また、伊藤忠が自動車ビジネスを通じて深い知見を持つCIS・中近東・アフリカ・中南米等の新興市場を筆頭に、カワサキモータースの市場開拓が進んでいない国での更なる需要取り込みを目指すと共に、伊藤忠グループが有している陸海送物流ネットワークを活用した物流の効率化を図る。
(3)資本提携の内容
①上述の広範な業務提携を実施するに当たり、その効果を最大限に実現するべく、米国でのファイナンス事業を目的とした合弁会社の設立に加えて、以下、カワサキモータースの株式の一部を伊藤忠が保有する資本提携を行う。
(ⅰ)カワサキモータースは、川崎重工が保有する自社の普通株式4千株を同社から取得する。
(ⅱ)また、伊藤忠に対して普通株式4千株の第三者割当を実施する。
(ⅲ)上記の結果、カワサキモータースの議決権の所有割合は、川崎重工が80%、伊藤忠が20%となる予定。
(ⅰ)の概要
(ⅱ)の概要
3.当該子会社(カワサキモータース)の概要
4.資本業務提携相手先(伊藤忠)の概要
5.日程
・取締役会決議日:2024年11月8日
・契約締結日:2024年11月8日
・効力発生日:2025年4月1日(予定)
6.今後の見通し
川崎重工は、この提携による当期業績に対する影響はないとしている(2026年3月期の川崎重工個別決算で、特別利益として約700億円を計上する予定)。
また、取引後もカワサキモータースは引き続き同社の連結子会社であるため、連結損益への影響は軽微なものになると見込んでいると云う。
■参考リンク:パワースポーツ&エンジン事業(カワサキモータース)の成長戦略 (PDF)(6ページ目以降)