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2020年8月17日【トピックス】

矢野経済研究所のxEV世界市場調査、2020年減少を予測

坂上 賢治

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xEV世界市場。2019年のxEV世界生産台数は前年比118.8%の682万1千台と成長は鈍化

 

 矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は8月17日、2020年の車載用リチウムイオン電池世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、車載用LiB生産の前提となる、世界のxEV生産台数推移・予測について公表する。(坂上 賢治)

 

1.市場概要
2019年の世界xEV(次世代車)市場はメーカー生産数量ベースで前年比118.8%、682.1万台と推計した。内訳をみると、ハイブリッド車(以下、HEV)が428.7万台(同128.6%)、電気自動車(以下、EV)は195.8万台(同113.2%)、プラグインハイブリッド車(以下、PHEV)が57.6万台(同84.9%)であった。

 

 

 各地域別では欧州を中心にHEV(Mild HEV、Strong HEV)が高い伸びを示し、EVではTesla モデル3等を中心に中容量(パック容量40kWh~69kWh程度)EVが大きな成長を見せている。一方で、PHEV、低容量(パック容量5kWh~39kWh程度)EVは前年割れに転じている。

 

地域を転じると特に中国では、Aセグメント領域の低容量EV、PHEV、そしてバスを中心とした商用EVを中心に拡大し、これまでxEV市場を牽引してきたが、補助金条件の変更等を背景に需要は伸び悩んでいる。

 

この理由は高容量(パック容量70Kwh以上)EVに関して、同セグメントのメインプレーヤーであったTeslaが中容量領域であるモデル3へ軸足を移したこと、また各国で補助金の恩恵を受けていた高価格帯のEVの需要が減少したことが前年割れの主要因であると考える。

 

2.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境、特にコロナ禍によって産業全体が縮小した世界の自動車市場、また現時点での景気・経済対策等を考慮し、政策ベース予測と市場ベース予測の2つの成長予測を行った。

 

 政策ベース予測では、世界的な環境規制強化の動きと、各国の普及政策、自動車メーカー(以下 OEM)各社の電動化シフトを背景に、2020年も欧州を中心にxEV市場が成長を維持するシナリオを読み込んでいる。

 

欧州ではドイツ、フランス等でPHEV、EVに対する補助金政策が2020年6月に発表されており、新型コロナウイルス感染拡大以降も成長継続が見られるEV市場を後押しする形となっている。

 

 時系列に見ると2021年以降は環境規制クリアに向け、PHEV、EVで一定の成長が維持される見通しで、補助金条件や中国LiBメーカーによる新たなパック技術の発表状況等を含めて、中容量EVを中心に伸びると予測する。一方、小容量EVに関してもVWが2023年に予定している小型EV「ID.1」の上市を踏まえ、一定規模での成長を実現すると予測している。

 

 MildHEV(以下、M-HEV)に関しては欧州OEMを中心に標準装備が今後進み、システム価格の下落、普及拡大に期待している。Strong HEV(以下、S-HEV)は2019年の実績、並びに欧州OEMや中国OEMで新規参入の動きが見られる点を含め、引き続き成長が続く可能性がある。

 

上記を踏まえ、政策ベースでのxEV市場規模(メーカー生産数量ベース)は2025年で2,821万台、2030年には4,792万台になると予測する。なお市場ベース予測では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさなどの消費者側のニーズを背景に、新型コロナウイルスの影響による経済の減退を受け、xEV市場も前年割れで推移するシナリオを読み込んでいる。

 

 具体的には2021年以降、xEV市場は回復に転ずると予測するが、自動車市場全体が縮小傾向にある中、OEM各社は内燃機関車(ICE)に比べ利幅が少ないPHEV、EVの展開が当初の想定よりも困難となり、また経済環境を考慮すると消費者側の需要拡大も、やはり当初の見込み程には至らないと予測する。

 

対してS-HEVに関してはガソリン価格下落の影響が懸念されるも、欧州OEMや中国OEMで新規参入の動きが見られる点を含め、今後も一定の成長が続く可能性があると予測する。また、M-HEVに関しては欧州OEMを中心に標準装備が今後進み、台数規模では政策ベース予測を下回るも、上記のようにPHEV、EVの台数伸び悩みを受け、構成比率は高くなると予測。上記を踏まえ、市場ベース予測でのxEV市場規模は2025年で1,206万台、2030年には2,030万台になるとしている。

 

調査要綱
1.調査期間: 2020年5月~7月
2.調査対象: 自動車メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年7月31日

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。