山梨県 米倉山電力貯蔵技術研究サイト
トヨタ自動車(以下「トヨタ」)は3月19日、「ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第1戦 SUZUKA 5時間耐久レース」(以下「SUZUKA 5時間耐久レース」)での、水素とカーボンニュートラル燃料を「つくる」「はこぶ」「つかう」取り組みについて発表した。
①つくる
福島県浪江町(FH2R)の太陽光由来水素に加え、今回は新たに山梨県、東京電力ホールディングス(以下「東京電力HD」)、東レが連携して製造する、太陽光由来水素の供給を受け、水素エンジンカローラに使用する。
山梨県、東京電力HD、東レが連携して製造する水素は、山梨県甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイト内に建設したP2G(パワー・ツー・ガス)システムにより、太陽光由来の電力で水を電気分解することで1時間あたり最大370Nm3製造され、山梨県内の工場などで利用されている。山梨県は、このP2Gシステムを国内外へ展開し、水素エネルギー社会の構築を進めるため、東京電力ホールディングスならびに東レと、パワー・ツー・ガスを専業とする国内初の企業「株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー」を2月に設立し、P2Gシステムの技術開発だけでなく、営業活動にも力を入れている。
②はこぶ
水素エンジンカローラに使用する水素は、トヨタ輸送株式会社のバイオ燃料トレーラーや、Commercial Japan Partnership Technologies(以下「CJPT」)のFC小型トラックなどで鈴鹿サーキットまで運ばれている。これまで、水素を運搬するために金属製タンクを使用していたが、CJPTのFC小型トラックには、今回から、FCEVのMIRAIの開発で培った軽量かつ高圧で水素運搬可能な樹脂ライナー製タンクを搭載したカードルを使用する。使用するタンクを樹脂ライナー製に変更することで、従来の金属製タンクに比べ、タンク圧力は20MPaから45MPaまで上げることが可能となり、水素運搬量は前回大会と比べ、約4倍になった。また、今後は、タンク圧力を70MPaまで上げ、さらに水素を効率的に運ぶことにも挑戦していくなど、様々な分野で水素を必要とする人々への要望に応えるため、改良を続けていく。
③つかう
「SUZUKA 5時間耐久レース」では、水素エンジンカローラの課題である、(1)航続距離の改善、(2)水素充填時間の短縮に取り組む。
(1)航続距離の改善
燃料噴射を緻密にコントロールすることで異常燃焼を制御し、効率的にタンク内の水素を使うことが出来るようになった。結果、1回の水素充填で走行可能な距離は、前回大会から約20%向上した。
また、さらなる航続距離の改善を目指し、使用する水素を、今回使用している気体水素から液体水素に変更する新技術への挑戦を開始した。今後実現すれば、体積当たりのエネルギー密度向上により、航続距離を大きく伸ばすことが可能になることに加え、使用できる水素の状態の選択肢も広がる。
(2)水素充填時間の短縮
2021年、車両の両側から充填が出来るようにするなどの改良を行い、レースを重ねるごとに水素充填時間を短縮してきた。今回は、将来の水素利用拡大を見据え、充填時の昇圧率をさらに高くする「大流量充填」に挑戦する。通常、一気に充填を行うとタンク内の温度が急上昇してしまうが、上限温度に倒達しないよう安全を担保するとともに、大流量に対応できるよう充填口と配管を変更した。水素エンジンカローラの両側から行う充填方式は変えずに、「大流量充填」にすることで、水素充填時間は、前回大会の2分弱から、1分半まで短縮した。
ST-Qクラスでは、水素エンジンカローラ、GR86(カーボンニュートラル燃料)に加え、マツダの「MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」とスバルの「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」がカーボンニュートラル燃料を使用し、レースに参戦する。協調領域では3社で情報交換をしていくとともに、レースの場では競い合うことで、技術開発のスピードを上げ、カーボンニュートラル社会実現を目指していく。
樹脂ライナー製タンク