トヨタ・ガズー・レーシング(TOYOTA GAZOO Racing、TGR)とスバルは4月5日、オンラインによるトークセッションを共催し、共同開発の新型トヨタ「GR 86」、スバル「BRZ」を世界初公開した。2012年に発売した初代モデルに続く2世代目となるもので、新型「BRZ」は今年夏に、新型「GR 86」は今年秋頃に日本で発売する。(佃モビリティ総研・松下 次男)
「GR 86」と「BRZ」はクルマのベースを共有するものの、それぞれ異なる走りの味を持たせることに注力したという。搭載する水平対向4気筒エンジンは初代の2リットルから2・4リットルへと排気量をアップ。AT車にはともにスバルの運転支援システム「アイサイト」を採用する。
共催イベント「いっしょにいいクルマつくろう!トークセッション」に登壇したトヨタの佐藤恒治TGRプレジデントとスバルの藤貫哲郎執行役員CTO(最高技術責任者)技術統括本部長兼技術研究所長は、2019年9月に合意した「新たな業務資本提携」で掲げた協業推進により、両モデルともに一段と高度、進化した口をそろえる。
具体的には、相互の開発陣が徹底的に議論することにより、「走りや運動性能のバランスを崩さず、磨げた」という。初代モデルでは、車両デザインはトヨタが車両のデザインを先導したが、2代目はスバルの開発拠点で両社のデザインチームが一緒にクレイモデルなどを作りこんだ。また、最後まで開発の手を緩めず、改良を重ねた。
その一例として、佐藤プレジデントはほぼ最終段階で「モリゾウ」ことトヨタ自動車の豊田章男社長がテスト走行を兼ねた試乗した後に漏らした感想の一端を紹介。「86ならば十分」だが、GRとしては「物足りなさ」を示したと。そこで部品の一部を変更するが、その提案は藤貫CTOサイドからだったと披露した。
ちなみに、トヨタは2代目へと進化させる当たり、初代の「86」からGRの冠をかぶせた「GR 86」へと車名を変更し、GRスープラ―、GRヤリスに続く、TRGが展開するスポーツカーのグローバルモデル第3弾として売り出す。
共同開発した新型GR 86、BRZはFRピュアスポーツカーで、全長4265ミリメートル、全幅1775ミリメートル、全高1310ミリメートルとパッケージ、サイズは前モデルをほぼ継承し、全高、ヒップポイントを低く抑えた。ホイールベースは2575ミリメートル。
排気量を2・4リットルと拡大した水平対向エンジンは、動力性能とともに、レスポンスが向上。BR 86は時速0-100キロメートルの加速性能が従来型の7・4秒から6・3秒に高まった。排気量が大きくなれば、その分、エンジンの重量が増すが、新型車は様々な改良で軽量化を実現。
さらに初代モデル比でフロント横曲げ剛性を約60%、ねじり合成を約50%それぞれ大幅に向上し、ステアリング操作への応答性や軽快な動きを高めた。トランスミッションは6速MTと6速ATを用意する。
GR 86は「スポーツ性能に特化した、更なる高い次元でのダイレクトで気持ちのいい走り」を、BRZは「さらに磨きのかかったスポーツカーならではの走りの愉しさ」とそれぞれ個性を持たせる。イベントに参加したプロドライバーからはBRZは「街乗り」、GR 86は「とがった感」が楽しめそうとの感想が出された。
両モデルは、ヘッドランプなどのエクステリアのほか、シートやカラーなどのインテリアデザインにも個性を持たせている。
安全面では、運転支援システム「アイサイト」をBRZのAT車だけでなく、GR 86のAT車へも標準装備する。