バージニア州ダブリンのニュー・リバー・バレー工場で本格生産に移る
ボルボ・トラック・ノース・アメリカは1月23日、北米の大型トラック業界で自社が新時代を担う存在になるべく新型「VNL」を発売した。
そんな同車の最も大きな特徴は、車両の空力特性を徹底的に高めて燃料効率を最大10%向上させたところにある。そんな当該車両の組み立ては、今後数カ月以内に開始される意向で、バージニア州ダブリンのニュー・リバー・バレー工場で本格生産に移る予定だ。
先のVNLの空力特性の向上では、まずフロントのフォルム変更にあたって角張ったくさび形のキャブを設計したこと。これを湾曲したフロントガラスを組み合わせたこと。
またホイール開口部のクリアランスを狭くし、バンパー・ボンネット間のチリを検討、シャーシフェアリングの追加などで乱気流を抑えたことなどにより、同車に新たな空力的ゲインを生み出した。
加えてパワートレインも改良した。新しいVNLは、最新世代のD13エンジンを搭載したことから燃料効率、パフォーマンス、耐久性の向上を狙っている。そんなD13エンジンには、405~500馬力に至る4つの定格と、1,750~1,950ポンドフィートの3 つのトルク定格がある。
ギアチェンジの操作が多くなる場所での効率的な運転が実現
併せて効率的なアイドリング管理機能を備えており、車両停止・駐車時のエンジンアイドリング時の環境負荷低減にも貢献する。例えば駐車時には車載の24ボルトバッテリーシステムを利用して排出ガス、エンジンの摩耗、燃料コストを積極的に削減する。
時にアイドリング禁止エリアに駐車しんければならないドライバーのためには、ボルボ・パーキングクーラーが役立つ。これによりアイドリング時の騒音や振動を排除させることで快適な環境を維持し、ドライバーの健康と幸福度を最大限に高める。
そのパワーユニット関連に対するトランスミッション設定には、より素早いシフト操作が可能なDCT(デュアルクラッチトランスミッション)とした「I-シフト・デュアルクラッチ」を組み合わせたI-シフト・トランスミッションシステムが採用された。
このI-シフト・デュアルクラッチは、入力軸とクラッチを2つずつ備えたもので、従来型変速機の前半分を再設計したもの。I-シフト・デュアルクラッチでは、選択したギアとは別に、同時に次段階の変速ギアが同時に回っているため、シフト操作が瞬時に切り替わるのが大きな特徴となっている。
従ってエンジンパワーの伝達が無駄に中断されることなく、連続したトルク特性が維持される。このため変速時に瞬間的に速度が落ちることがなくなり、カーブの多い道路、アップダウンなど坂が繰り返される場所、信号が多い市街地など、ギアチェンジの操作が多くなる場所で効率的な運転が実現する。
正確なステアリング制御を提供することでドライバーの疲労の軽減にも貢献
加えて重量貨物を載せる場合、タンクローリーを引く場合、家畜を輸送する場合などで、変速ショックがやわらげられて荷物の揺れが抑えられることで、ナイーブな路面状況でも走行時の危険が低減する。
新型ボルボVNLは、ドライバーの仕事、生活、休憩時の快適性、効率性、安全性を最適化することも念頭に設計されており、新しくオプション設定されたエアサスペンションシステムのGRAS (グローバル リア エア サスペンション) は、デュアル レベリングロッドを介して車両のロール角とピッチ角を低減させて、横方向の安定性を向上させることにより常に一定の車両姿勢を維持する。
そんなGRASシステムに組み込まれたボルボ スマート サスペンション ソフトウェアは、ボルボ ダイナミック ステアリング システムとシームレスに連携。様々な積載条件に合わせてサスペンションを調整するための機能を持つ併せており、荷重、地形、道路状況、さまざまなエンジン トルク レベルに関係なく、正確なステアリング制御を提供することでドライバーの疲労の軽減にも貢献する。
車両運行時には、オールインワンのフリート管理ポータルのボルボコネクトが活躍する。ちなみに全ての新型ボルボトラックには、24か月間の無料のボルボコネクト・サブスクリプションが標準装備され、車両の診断、燃費レポート、安全性レポート、位置情報サービスなどを1つのプラットフォームに収容した同機能が役立つ。
ドライバーはボルボ・マイ・トラックアプリを使うことで、推定燃料残量、DEFレベル、冷却液レベルを確認できる他、ライトの故障、ウォッシャー液のレベル低下、その他の重要な項目など潜在的な問題に関する通知を前以て受け取ることで、休憩中や運行前の点検の際にそうしたトラブル要因に事前対処できるようにする。
車両を運転するドライバーにとっても新たな時代の到来を告げるもの
こうした新VNLの仕上がりに対してボルボ・トラック・ノースアメリカのピーター・フォールホーブ社長は、「新ボルボVNLは全てが刷新されました。それは当社のお客様のみならず、車両を運転するドライバーにとっても新たな時代の到来を告げるものとなります。
今になって過去を翻ってみると1996年に第一世代のボルボVNを発売した際、その型破りな空力ボディは、北米のトラック業界に衝撃をもたらすことになりました。そして今回、装いも新たになったボルボVNLを市場投入するにあたり、再び、当地のトラック業界の未来を革新する車両を導入できることに胸を膨らませています。
なかでも安全性の確保では当社伝統のDNAを受け継いでおり、我々のエンジニア達は、事故ゼロを目指して独自のアクティブ+パッシブ安全機能に焦点を当てました。
新VNLでは、アクティブレーンセンタリングを提供するパイロットアシスト付きボルボアクティブドライバーアシストプラスを含む、クラスをリードする様々な予防安全システムが提供されます。
例えばボルボ アクティブ ドライバー アシストプラスは、ボルボ ダイナミックステアリングを搭載しており、あらゆる速度での操縦安定性を向上させ、あらゆる道路速度での安定性を高め、横風、高速道路のクラウニング、柔らかい路肩、またはタイヤの故障などの緊急事態に的確に応える懐の深さも備えています。
将来到来する完全自動運転トラックの標準パッケージに
新しい歩行者検知機能は、歩行者や自転車が進路や死角にいる可能性がある場合にドライバーに警告し、進行経路に直接ある物体に対しては前方自動緊急ブレーキを作動させます。
クラス最高の受動的安全システムでは、死角の無い広域視界を実現する接着式のフロントガラスを搭載。これによりVNLはただ単に空力特性だけが改善されるのではなく、ドライバーの視認性を向上させ、安全性も強化され、キャビン内の風切り音も軽減されます。
そのキャビン自体は高張力鋼で構成されており、万が一の衝突時エネルギーも大きく削減し怪我の可能性を抑え込むだけでなく、独自のフレアフレームレール構造によって、パワートレインをキャブの下に落とし込むことで乗員を最大限保護し続けます。
もちろん主要な衝突試験基準に適合させる設計となっており、運転席側と助手席側には米業界初のサイド カーテンエアバッグもオプション搭載可能となっています。なおエアバッグ展開時やロールオーバー衝突時などのアクシデントが発生した折には、新たな安全機能としてE-Callが作動。携帯電話による接続が可能な場合は、ボルボ独自の緊急サービスを介してドライバー並び車両の正確な位置情報を伝えます。
新しいボルボVNLは、BEV、FCV、水素・再生可能燃料を含む次世代の内燃エンジンなど、今後の投入される可能性がある多様なパワーユニットに対応できる新プラットフォームに基づく設計思想に立脚したものとなっており、将来到来する完全自動運転トラックに於いても標準パッケージとなります」と結んだ。