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2020年7月9日【エネルギー】

ボルボ・カーズ、ブロックチェーン技術でブランド価値追求へ

坂上 賢治

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 ボルボ・カーズは北欧時間の7月8日、傘下のベンチャーキャピタル投資部門であるボルボ・カーズ・テック・ファンドを通じて、ロンドンに拠点を構えるブロックチェーンのスタートアップ企業のCirculor(サーキュラー)社に資本投資したと発表した。ボルボ・カーズとCirculorはこれまで、電気自動車のリチウムイオンバッテリーで使用されているコバルトのトレーサビリティ追求のためブロックチェーン技術で協力してきた経緯がある。(坂上 賢治)

 

 

 そもそもボルボ・カーズは、予てよりコバルトの確かな出所を追跡しようとしてきた。それは児童労働由来のコバルトや、人権侵害由来のコバルト、過酷過ぎる労働環境から産出されたコバルトなどを自社ブランド車への搭載することを避けたいためだ。

 

今日、リチウムイオンバッテリーを製造する上で必要不可欠なコバルトの多くは中部アフリカの鉱山地帯から採掘されてきた。しかし手堀りされ、仲買人が取り纏めたそのコバルトのどれが、買付時に倫理的に正しい手段を介して持ち込まれたものかを見分けることは困難だった。

 

 実は昨今、そんなコバルトのみならず、多くの貴金属の採掘で鉱物の出所を見極めることについて、ブロックチェーン技術が俄然、脚光を浴び始めている。というのはブロックチェーンを使えば、採掘から取扱・売買・最終商取引に至るまで〝差替えできない記録〟という形で全てのトランザクションデータが保存される事になるからだ。

 

Circulor社のブロックチェーン技術は、目下ボルボ・カーズのバッテリーサプライチェーン全体で使用され始めており、同社初の完全電気自動車である「XC40 Recharge P8」に使用されるコバルトのトレーサビリティが100%可視化できるようになるという。この結果、同モデルはベルギー・ゲント工場から送り出された時点で、最もSDGsに叶った製品として〝一帯一路〟を介した中国を筆頭に世界に向けて出荷できる様になる。

 ボルボ・カーズは今後、Circulor社への投資を継続することで、先の通りコバルト以外の稀少金属を含め、その他の使用財全般へと調査・探索対象を拡大していく。例えば、電気自動車のバッテリーパックの絶縁材料として盛んに使用されている雲母などもトレーサビリティの見える化を駆使し、その出所を解き明かしていく構えだ。

 

さらに両社は、CO2排出量のトラッキングや削減などにもブロックチェーンを使いたい意向だ。かつて2018年に立ち上げられたボルボ・カーズ・テック・ファンド。同部門が主導的に行うCirculor社への投資は、他にもSYSTEMIQ(システミック)、Total Carbon Neutrality Ventures(トータル・カーボン・ニュートラリティ・ベンチャーズ)、Plug & Play(プラグ・アンド・プレイ)の3社も参加する。

 

 

 こうした取り組みについてボルボ・カーズの調達部門責任者のマルティナ・ブーフハウザー氏は「私たちは、原材料の倫理的なサプライチェーンに力を入れており、Circulor社とのパートナーシップはその点に於いて非常に役立ちます」と述べている。

 

そんな同社のアピールは、今後、ボルボ・カーズ+CATL+LG化学の3社によるボルボブランド製品のみならず、中国・成都から輩出される新ブランド「ポールスター」車両のブランディングにも大いに活かされていくことになるのだろう。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。