ボルボ・カーズは北欧時間の7月8日、傘下のベンチャーキャピタル投資部門であるボルボ・カーズ・テック・ファンドを通じて、ロンドンに拠点を構えるブロックチェーンのスタートアップ企業のCirculor(サーキュラー)社に資本投資したと発表した。ボルボ・カーズとCirculorはこれまで、電気自動車のリチウムイオンバッテリーで使用されているコバルトのトレーサビリティ追求のためブロックチェーン技術で協力してきた経緯がある。(坂上 賢治)
そもそもボルボ・カーズは、予てよりコバルトの確かな出所を追跡しようとしてきた。それは児童労働由来のコバルトや、人権侵害由来のコバルト、過酷過ぎる労働環境から産出されたコバルトなどを自社ブランド車への搭載することを避けたいためだ。
今日、リチウムイオンバッテリーを製造する上で必要不可欠なコバルトの多くは中部アフリカの鉱山地帯から採掘されてきた。しかし手堀りされ、仲買人が取り纏めたそのコバルトのどれが、買付時に倫理的に正しい手段を介して持ち込まれたものかを見分けることは困難だった。
実は昨今、そんなコバルトのみならず、多くの貴金属の採掘で鉱物の出所を見極めることについて、ブロックチェーン技術が俄然、脚光を浴び始めている。というのはブロックチェーンを使えば、採掘から取扱・売買・最終商取引に至るまで〝差替えできない記録〟という形で全てのトランザクションデータが保存される事になるからだ。
Circulor社のブロックチェーン技術は、目下ボルボ・カーズのバッテリーサプライチェーン全体で使用され始めており、同社初の完全電気自動車である「XC40 Recharge P8」に使用されるコバルトのトレーサビリティが100%可視化できるようになるという。この結果、同モデルはベルギー・ゲント工場から送り出された時点で、最もSDGsに叶った製品として〝一帯一路〟を介した中国を筆頭に世界に向けて出荷できる様になる。
ボルボ・カーズは今後、Circulor社への投資を継続することで、先の通りコバルト以外の稀少金属を含め、その他の使用財全般へと調査・探索対象を拡大していく。例えば、電気自動車のバッテリーパックの絶縁材料として盛んに使用されている雲母などもトレーサビリティの見える化を駆使し、その出所を解き明かしていく構えだ。
さらに両社は、CO2排出量のトラッキングや削減などにもブロックチェーンを使いたい意向だ。かつて2018年に立ち上げられたボルボ・カーズ・テック・ファンド。同部門が主導的に行うCirculor社への投資は、他にもSYSTEMIQ(システミック)、Total Carbon Neutrality Ventures(トータル・カーボン・ニュートラリティ・ベンチャーズ)、Plug & Play(プラグ・アンド・プレイ)の3社も参加する。
こうした取り組みについてボルボ・カーズの調達部門責任者のマルティナ・ブーフハウザー氏は「私たちは、原材料の倫理的なサプライチェーンに力を入れており、Circulor社とのパートナーシップはその点に於いて非常に役立ちます」と述べている。
そんな同社のアピールは、今後、ボルボ・カーズ+CATL+LG化学の3社によるボルボブランド製品のみならず、中国・成都から輩出される新ブランド「ポールスター」車両のブランディングにも大いに活かされていくことになるのだろう。