浙江吉利控股集団傘下のボルボ・カーズは、事前の複数回に及ぶディザー広告を経た6月7日の夜、オンライン会見を介して新BEVのEX30を世界発表した。同車は発表4車種目にあたるBEVで、同ブランドの歴代SUVでは最も小型のSUVとなる。
予てよりLCA(製品に係る原料調達・製造・使用・リサイクル・廃棄に至るライフサイクル全域の環境影響を定量的に評価する手法)に拘るボルボ・カーズは、二酸化炭素(CO2)排出量低減に重点を置き、車両開発に取り組む姿勢を強く打ち出しており、今回、オンライン会見でジム・ローワンCEOは「車両購入ユーザーがクルマに求める全ての要素を小さなパッケージで纏め上げたクルマだ」車両サイズの小ささと完成度の高さを訴求した。
具体的には、生産工程を含むライフサイクル全体でCO2排出量の削減に取り組み、20万km走行時までの合計CO2排出量を30トン以下に削減させたと謳っている。
但しこれが可能となった理由は、車体が小さいためで、そもそも生産財の使用量が必然的に少なくなっていること自体が優位に働いている。なおアルミニウムは約25%、鋼材は約17%、樹脂材の約17%をリサイクル材としたこともCO2排出量の削減に効いている。
その他では、シート・ダッシュボード・ドア等に、デニム・亜麻・リサイクルポリエステルを約70%含むウール混紡素材などの再生可能素材を使う。
特にデニムは、これまでリサイクル工程で廃棄されていた短繊維を使うことで環境負荷の削減に係る試みを積極展開し始めた。結果、最終的にリサイクルできない部分に関してはエネルギーを回収するなどで全体で再利用率を95%まで高めた格好だ。
製品発表の概要は先の通りで、オンライン会見を通じて世界全域に向けて同時発表した。なかでも欧州(の一部)や米国地域では同日より予約注文の受け付けを開始(その他の地域でも順次受注が開始される見込み)。
但し、車両自体のデリバリー開始は2023年末頃からとなる見込みだ。気になる価格は3万6000ユーロ(540万円前後)から。対象者は限られるもののリース提供の他、サブスクリプションによる車両利用も可能となる。
車両のスタイリングは、前後方向が圧縮された格好のボルボ特有のスカンジナビアデザイン。車体各部のサイズは、市街に於いて立体駐車場を選ぶ手間が省ける全長4233×全幅1836×全高1549mm、ホイールベース2650mm、車両重量は1830~1943kg(装備により異なる)、これはXC40リチャージ比で200mm、40mm、100mm、50mmほど小さくなる。
蓄電池はフロア下中心部に配置。蓄電容量は大きく分けて2種。パワーユニットは3種。
蓄電池のひとつは、資源消費が削減されるリン酸鉄リチウムのLFPスタンダードレンジバッテリ搭載車で69kWh(航続距離344km/298.3マイル)。このスタンダード仕様での動力性能は、最高出力200kW(272hp)、最大トルク343N・mを発揮するシングルモーター仕様で、0-100km/h加速5.7秒、電費16.7kWh/100km。
より長い航続距離を求めるユーザーには、ふたつめのリチウム、ニッケル、マンガンを使用した高性能NMCバッテリを搭載したシングルモーター・エクステンデッドレンジ仕様がある(航続距離480km/298.3マイル)。こちらの動力性能は、電池性能の向上により0-100km/h加速は5.3秒、電費15.7kWh/100kmとなる。
加えて更に上位性能を持つモデルも用意される。こちらは最高出力315kW(428PS)、最大トルク543N・mで全輪駆動のツインモーターパフォーマンス仕様だ。
こちらは前後モーター駆動ゆえに0-100km/h加速が3.6秒、100km/hからの停止距離38m。但し航続距離は若干落ちることになり460km(285.8マイル)。電費は16.3kWh/100km。なおトップスピードに関しては全モデル共通の180km/h。
充電時間は11kWの普通充電で電池残量0%から満充電まで8時間、175kWの直流急速充電で電池残量10%から80%になるまで26分。車載センターディスプレーやスマートフォンアプリを介して充電アンペア数、最大充電レベル、充電を始める時間などが設定できる。
ラゲージスペースは、後席後方・床下の61Lを含めて318Lと。フロントにも若干ではあるが、備品の収納区画がある。インストルメントパネルはコンパクトなセンターディスプレイに、ダッシュボード中央に大型のセンターディスプレイが配される言わばテスラ的なもの。決して豪華な仕様ではないが機能的だと言える。
安全性の確保では、構造材に異なる強度の高張力鋼を使いピラーやルーフを強化。側面衝突時にドライバーと助手席乗員が衝突しないよう運転席にファーサイド・エアバッグを内蔵した。
ステアリングホイールの後ろにはセンサーによるドライバー監視システム、交差点での事故を回避する交差点自動ブレーキなども搭載。新手の安全機能では、通行中の自転車や2輪車が車両後方から走行してきた時にドアオープンを警告表示と警告音で制止する「ドア・オープニング・アラート」もある。
最後に後に公表された日本国内向け仕様は、20インチの大径ホイールに245/40R20サイズのタイヤが装着されていた。今後の日本国内への展開としては2024年に「EX30 Cross Country」の受注開始。こちらのデリバリーは同年後半になる見込みだ。