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2020年4月21日【エネルギー】

ボルボとダイムラー、燃料電池の合弁量産事業を始動

坂上 賢治

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 世界の自動車産業に於いて商用車大手の一角を占める独ダイムラートラックAGとスウェーデンのボルボ・グループは4月21日、燃料電池の量産化に向けた合弁事業設立で法的拘束力をもたない予備的合意に署名した。(坂上 賢治)

 

 

 これは〝2050年までに持続可能な輸送事業〟と〝CO2ニュートラル化を達成〟するべく、両社が属するEU政策案である「欧州グリーンディール構想(European Green Deal)」を2社が共有し、新たな合弁事業の設立に向けて動き出すもの。

 

両社は、該当事業の始動を通して、大型車両やその他に適用する燃料電池システムの開発・生産・商用化を目指す。

 

 

 ちなみにダイムラーは、いわゆる〝集中と選択〟に倣い、現在の燃料電池業務の全てを該当事業に集約。対するボルボ・グループは、同合弁に50%の借入無しの手元資金として約6億ユーロ(698億円/記事出稿時)を出資する見込みだ。

 この調印についてダイムラートラックAG取締役会長兼ダイムラーAG取締役のマーティン・ダウム氏は「輸送とロジスティクスは世界を動かし、輸送のニーズは引き続き拡大していきます。

 

真のCO2ニュートラルな輸送事業は、バッテリーまたは車載の水素を電気に変換出来る電動パワート レーンを通じてこそ達成出来ます。

 

重量物を積載して長距離走行するトラックにとって、燃料電池は、未来に向けた一つの重要な回答であり、この分野でダイムラー傘下のメルセデス・ベンツの燃料電池部 門では過去20年間、広範囲な専門知識を蓄積してきました。

 

今回のボルボ・グループとの当合弁事業は、燃料電池トラックとバスの普及を実現するマイルストーンとなるでしょう」と語った。

 

写真向かって左はダイムラートラックAG取締役会長兼ダイムラーAG取締役のマーティン・ダウム氏。右はボルボ・グルー プのマーティン・ルンドステット社長兼CEO

 一方、ボルボ・グルー プのマーティン・ルンドステット社長兼CEOは「道路輸送の電動化は、グリーンディールと呼ばれる欧州に於けるCO2ニュートラル政策は、CO2ニュートラルな世界を実現させるための重要な鍵の一つです。

 

長距離輸送に使われる電気トラックに、環境に優しい水素を利用することは、同活動に係る大切な一部であり、バッテリー式電気自動車や再生可能燃料に関わる課題解決を補完するものとなります。

 

そんな未来に向けた取り組みを加速するために、ボルボ・グループとダイムラーの経験を統合することは、お客様ばかりではなく、双方にとって、さらには社会全体に取っても有益なことです。

 

この合弁設立は、我々が共に水素燃料電池商用車の将来性を確信していることを明確に示しています。

 

但し同構想かを現実させるには、燃料インフラの構築を筆頭に、他の企業や組織も同開発に支援して下さることが不可欠です。我々はそうした未来に期待致します」とコメントした。

 

 

 さらにこれを受けて三菱ふそうトラック・バスのハートムット・シック代表取締役社長は「三菱ふそうを含む、我々の目的は世界を動かし続けることです。そのために効率的であるだけでなく、持続可能である輸送ソリューションを提供していきます。

 

既に2017年に電気小型トラック「eCanter」を発表・発売し、最近では、CO2ニュートラルな輸送に向けた我々の展望である、燃料電池小型トラックのコンセプトモデル「eCanter F-CELL」を紹介しました。

 

ダイムラートラックAG内の複数の部門及びダイムラーとボルボの新しい合弁事業と緊密に連携し、燃料電池技術を使用した商用車を2020年代末までに日本で発売することをお約束致します」と結んでいる。

 

 

 最後にこの両社の共通目標は、厳しい規制を跳ね返す量産型の大型輸送車両を2020年代後半に展開することにある。また実は大型車両以外の自動車、さらには自動車以外での用途も同合弁事業の範囲に含まれている。

 

先の通り、同合弁事業を物理的に実行可能にするため、ダイムラートラックはグループ全体の燃料電池業務の全てを、新たに自社の燃料電池部門に集約した。

 

これには様々な車両に応用させていく燃料電池と水素貯蔵システム開発で長年の経験を持つ” Mercedes-Benz Fuel Cell 社“の業務をタ移管させることも含まれている。

 

なお署名を行った暫定合意は、現段階では法的拘束力を持っておらず最終合意は第3四半期に調印する見込み。手続きそのものは年内に終了する見通しで、全ては競争当局の審査と承認が前提条件となる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。