米国の第三者安全科学機関であるULの日本法人 UL Japan(以下UL)は、2020年11月1日より、自動車業界向けサイバーセキュリティサービスの提供を国内で開始すると、10月27日発表した。
今回、ULが提供を始める自動車業界向けサイバーセキュリティサービスはWP29並びにISO/SAE 21434に則った自動車のサイバーセキュリティ型式認証取得を包括的に支援するサービス。ULの 代表取締役社長 山上英彦氏は次のように述べている。「ULは世界で500名を超えるセキュリティ分野の専門家を有しており、サイバーセキュリティ分野でこれまで蓄積してきた知識や経験を活用し、自動車業界のサプライチェーン全体におけるサイバーセキュリティ対策構築を支援します。欧州市場でのビジネスの拡張を希望される国内自動車業界向けにサイバーセキュリティサービスを訴求するとともに、グローバル規制への対応を支援できる体制の構築を進めてまいります。」
2020年6月、国連欧州経済委員会(UNECE: The United Nations Economic Commission for Europe)の作業部会である自動車基準調和世界フォーラム(WP.29: World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations)にて、車両のサイバーセキュリティおよびソフトウェアアップデートに関する法規基準が採択された。この決定により、欧州で2022年7月以降に販売される新車は、同基準に合致し、当該製品が規制、技術、安全に関わる要件に適合していることを示す型式認証の取得が必須となる。WP.29は、自動車安全・環境基準の国際調和と認証の相互承認を多国間で審議する唯一の場であり、日本も積極的に参画してる。
また、国連欧州経済委員会では、上述の新たな法規基準への適合に向け、自動車のすべてのライフサイクルステージ(設計から廃車まで、部品および組み込みシステムを含む)におけるサイバーセキュリティ対策を求める国際規格ISO/SAE 21434を参照規格としている。自動車メーカー(OEM)に限らずサプライヤーなど自動車のライフサイクルに関わる幅広いステークホルダーもセキュリティ対策の準備・導入が法的に義務化される。ULは、実践的、かつ、包括的なサイバーセキュリティ監査・評価サービスを国内自動車業界に向けて提供し、欧州向け型式認証の取得を支援するとしている。
世界的に自動車のデジタル化によるコネクテッド、自動運転が加速している中、国内においても今年4月に改正道路交通法が施行され公道上でレベル3の自動運転(条件付運転自動化)が解禁された。高速、大容量通信を可能とする5Gの商用化開始に伴い、車両の接続技術の利用はさらに加速することが見込まれる。車車間通信(V2V)、路車間通信(V2I)に加え、車歩行者間通信(V2P)および車ネットワーク間通信(V2N)の技術も進展すれば、国内自動車業界全体においてサイバーセキュリティ対策を講じることは一層不可欠なものになると思われる。